820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

ベッドタウンの威容。

2008-01-21 | 生活の周辺。
写真は820製作所の画伯、加藤好昭の作品群。

『izumi 場所と思い出Ⅰ』の宣伝美術を担当してくださる高橋勇太さんのお宅に初めてお邪魔したのだけど、気持ちのいいくらいの、典型的なベッドタウンだった。

フライヤーをガガッと作り終え、深夜、腹を満たそうと一人で家を出る。

近くの通りにあるファミレスは全滅で、駅前には居酒屋しか無く、線路の反対の方角へ向うと、夜とはいえ車通りの極端に少ない広い道路の両脇に、背の高いマンションが視線のはるか先まで建ち並んでいた。全景にオレンジの淡い光が降っている。
ベッドタウン? それはむしろ大手町や横浜西口にあるオフィス街や、東京湾沿いに並ぶ大きな倉庫の群れ、たとえばそのような場所がまとう空気と、同質のもの。途方のくれるあの感じ。

果てしのない光景にめまいがしたので駅へ戻って、また違う方向に俺は今、一人で線路沿いを歩いているのだけど、残念ながらとても恐ろしい。
俺の地元もさ、相当に田舎で、それこそ取り残されたような郊外にあるんだけど、この町のほうが何というか、東京のくせに闇が残りすぎではないかい。
もともとね、幽霊とか妖怪とか、それ系が心の底から苦手でね、あと蜘蛛も駄目、臆病な性格なんだけどね、町を歩くだけでこんな怖い思いをしてるのは久しぶりだよ。とか思ってたら、そこ、墓場だし。斎場だし。
足音と水路の音以外、ほんと何にも聞こえないのさ。あと風。遠くで寂しく吹いててさ。腹もペコペコだしさ。今はね、書くことで紛らわせてるんだ。でもね、書き終わっちゃいそうだ。お、国分寺のホームの灯りが見えてきた。助かった。無駄に歩いた。


テロル。

2008-01-20 | 生活の周辺。
昨夜は日付が変わる前にバタンキュー。久しぶりに心ゆくまで眠ったら、変な夢を見たよ。
螺旋状の山の頂上に、世界中のありとあらゆるお守りを発行するゲイのファッションスターがいるんだけど、年に一度彼が姿を現す祭りの日に、俺たちは懐に短銃を忍ばせて、彼のファンや取り巻き連中に混じって、出現を息を潜めて待っているという夢。
なにがなんだか。

このあいだBSで、坂手洋二が演出した『マッチ売りの少女』が放映されていて、手塚とおるが現れた瞬間にそれまでの「お勉強」のようなムードが壊れて(それはもちろん緊密で美しい場面の連続だったのだけど)、劇に血が流れ出したように思えたのです。厳かに物語が狂う。何という存在だろう。不意に冒された暴力のようにその場所に立つことのできる人になりたい/会いたい。

で、ずっと読みたかったヤスミナ・カドラの『テロル』を古本屋で見つけて購入。

『世界でいちばん俺が好き!』閉幕しました。

2008-01-15 | ごあいさつ。
怒濤の土日公演を乗り越え、千秋楽も無事に終了し、バラシもひゅんひゅん、おいしく打ち上げ、『世界でいちばん俺が好き!』閉幕しました。
ご来場いただいたみなさま、応援してくださったみなさま、ありがとうございました。心より感謝。

開幕主宰の村井雄さん、メンバーの皆さん、ダムダム弾団の添野豪さん、スタッフの皆様方、凛と背筋の張った方々と、舞台を通して関わり合うことができたのは、本当に幸せでした。役者の技術から集団のあり方まで、考え、学ばせていただき、とても貴重な時間でした。

得たものを皆、整理して、820製作所に還元して、活かしていきたいと思います。

開幕ペナントレース、次回は五月に王子小劇場にて公演予定です。更に広く高く膨らんだ空間で、更に力強く漲るパフォーマンスが繰り広げられると思います。ぜひぜひチェックをお忘れなきよう。

稽古の段階から、カロリーの消費が激しくて、手当たり次第にものを食べてたら3kg太っていた。失態だ。削ぎ落としていかなくちゃ。

ひとまずはご挨拶まで。あと新成人おめでとう。もう大人だぞおまえらは。ざまあみろ。ゆっくり飲み交わしましょう。

波打ち際で貝殻を探す。

2008-01-12 | 公演中。
三日目も無事終了。
場内は満員。ありがとうございます。

それで今は四日目の朝、半地下の喫茶店で友人の卒論を読み終えたところ。
同い年で、同じ大学同じ学部で、だとするなら脳味噌のどこかに似た皺の一つも織り込まれてるだろう人間の展開する論述に、包括するものの広さに、冷静に前進する文体に、とても刺激を受けて俺は今慌てている。分野を横断して学ぶ人の視点は強い。その着地点は演技の問題とも深く関わるものだった。おそるべし社会学。ビバ社会学。
美術家の「美とは ざわめきである」という一行詩、およびその補足としての美術家自身の発言をうけた後、
《境界が確定している状態よりもあいまいになっている状態、AともBともつかない中間的・過渡的な状態に魅力を、さらにいえば「美」を感じている》
と書く部分に、刺激、というより勇気をもらいました。ありがとう。自分の卒論は結局「戯曲創作」で極度にグダグダスカスカな代物だったので、人がいったいどのように血を絞って卒論に打ち込むものなのか、完成度はどんな程度なのか、見当がつかなかったのだけど、自分がダメ学生だということがこれでよくわかった。

気がつけば後一時間で本番。みんな来てね。

ふとももばくはつ。

2008-01-10 | 公演中。
二日目も無事終了。引き続き多数のお客様にご来場いただき、順調に暴れてる。
スタッフの方々の暖かさと腕の確かさに救われながら舞台に立つ。

820の仮チラに載っていた宣伝文を読んだ舞台監督さんが、こんな装置かっこいいんじゃない? と提案してくれて、それは本当にかっこよかったので奥田くんに一つ提案してみようと思う。うしし。
どやーっと小中高の友人らが観にきてくれてどやーっと飯を食う。帰りの小田急は満員で、身動きの取れない中を人名しりとりをして過ごすとか、とても幸福で安らぐ時間だった。いろいろな何かが回復。感謝。明日も頑張れます。

初日終わり。

2008-01-10 | 公演中。
9日無事に初日の幕ひらく。多数のお客様にお越しいただき、エネルギーに溢れた場が生成されました。ご来場ありがとうございました。
11日(金)以外、まだお席に若干の余裕があります。ご都合があいましたらぜひぜひお越しください!

体が悲鳴をあげているのをさっきから無視してドイツ語の論文を訳している。意訳なんてものじゃない。ほとんど俺の創作である。

「あの頃メランヒトンは、あの偉大なメランヒトンは12歳で大学に入学し膨大な知識の量を得たが、それは無知で無能力かつ愚劣であり、典型的な現代の若者であるところのツィツィが客の髪にパーマネントウェーブをかける際に交わす会話の語彙とそう大差はない」

ないわけないだろう。
明日に響くといけないので眠ります。久しぶりに夢を見るんだ。それはもうたとえようのないほど美しくて鮮烈で痛いほど心が動いてそこでは見たことのない人たちにしか会えないのだけど全編が擦り切れそうな懐かしさに満ちていて虚空に包まれた深い青を背景に添えて生じる夢なんだ。瞼がもうあかない。おやすみなさい。

本日初日。

2008-01-09 | 芝居の前に。
太股がぱんぱんだ。

8日にゲネ、本日初日。午前中は客席をつくる。
んで、これから2時間後にゲネ。7時間半後に本番。
今日は予約状況が芳しくて札止めの気配が濃厚。

しかし太股がぱんぱんだ。

それでも跳びます。ぴょんぴょんいっちゃうんだから。跳んでなんぼだから。

波田野のアフロ姿、なかなか見られるものではないです。どうか噛み締めてください。短文失礼。取り急ぎ。

小屋入りしました。

2008-01-06 | 芝居の前に。
5日に小屋入り。

下北沢って本当に良い町だなと。下北の小屋で芝居をするのは初めてで、町を歩く気分もいつもと違う。お邪魔してますぜ旦那! って顔を道行く人に振りまいてる。
北沢タウンホールでは、いとうせいこう×奥泉光の文芸漫談の告知。次回はデュラスの『愛人』をテキストにするらしい。稽古が無ければな。
休憩中にインドカレーを食べて福袋を衝動買いしてぼおっといろんなお店を見回って思うのだけど、この並びが壊されるなんてそれは理不尽もいいところだ。だって暴力の質が戦場のそれのようじゃないのかさ。戸塚の駅前が焦土になったみたいにさ。いやだいやだいやだ。

芝居は音と光がからんで更にすごい事態に。こいつぁ面白いですぜ! 見逃したら損です。今週はぜひとも下北沢へ。もうあれだ、エネルギー出しっぱなしで肉が食いたい。おやすみ。


客演情報:開幕ペナントレース第三回公演『世界でいちばん俺が好き!』

2008-01-05 | アナウンス。
820製作所の波田野淳紘が演劇アフロ集団・開幕ペナントレースに客演をいたします。

■開幕ペナントレース第三回公演
『世界でいちばん俺が好き!』
構成・演出:村井雄
■@下北沢OFF・OFFシアター(小田急線・京王井の頭線 下北沢駅南口下車すぐ左TAROビル3F)
TEL→03-3424-3755
■日程
1月9日(水)①20:00
10日(木)②19:30
11日(金)③19:30
12日(土)④14:30/⑤19:30
13日(日)⑥14:30/⑦19:30
14日(月・祝)⑧15:00
《全8stage》
受付開始は開演の60分前、開場は開演の30分前。整理番号順でのご入場となります。
■チケット
前売・当日ともに2300円(全席自由)
■HP
http://www.kaimakup.com/

男7人で、血管が切れるんじゃないかというほどエネルギーの充満した身体表現が繰り広げられています。こんな爆発的な力を持った舞台にはじめて接しました。東京でなかなかほかに見ることのできない舞台です。日々の稽古により鍛え抜かれた、やたらにキレまくった体が、無敵の笑いを生み出しています。
ご予約は、《byebye_@mail.goo.ne.jp》まで、件名を「チケット予約」にし、本文に①氏名②日時③枚数④連絡先を明記の上、お送りください。波田野からの返信を持ちまして予約完了とさせていただきます。
年の初めの忙しい日々であるとは思いますが、一発この舞台でエネルギーを充填して、2008年をお互い気持ちよく始めようではありませんか。擦り切れるほど全力全開で臨む所存です。お時間があればどうか足をお運びくださいませ!

820製作所の近況:2008年1月。

2008-01-05 | アナウンス。
あけましておめでとうございます。

2008年1月の820製作所の近況をお送りします。

波田野淳紘は1月9日(水)~14日(月・祝)まで、開幕ペナントレース『世界でいちばん俺が好き!』に客演いたします。
今もっとも熱いパフォーマンス集団です。すこぶる力強い身体が織りなす絶妙なハーモニーはほかの場所では味わえるものではありません。
詳細は820製作所HPのnews/最新情報、もしくは開幕ペナントレースHPをご覧になってください。

加藤好昭は、昨年の春から参加している映像ワークショップ内での成果発表として、映画の撮影に臨みます。聞いたところによるとアキバ系のオタクを演じることになるようです。しかも大きな役らしいんだ。また一つ幅を広げて帰ってくるはずです。ご期待ください。加藤のブログ『おいでんみりん』も絶賛更新中です。加藤の今年の抱負は三つ、
「友達を10人作る」
「警察官には強気で接する」
「知らない人にブログ(http://blog.livedoor.jp/kato_820/)見てます、と言われる」
です。
あなたが叶えてあげられる抱負もあります。どうかよろしくお願いします。

佐々木覚は第6回公演に向けて奔走中。もりもりと準備を進めております。役者としては一年ぶりに劇団公演に関わることになります。その間さまざまな現場で、日々の生活で、育み鍛えてきた彼の表現力や如何に。ご期待ください。
佐々木の今年の抱負も三つ、
「舞台上で奇跡の瞬間を紡ぐ」
「スカウトされる」
「自伝を書く」
です。
どうも迷走してるに違いない抱負を抱いているようですが暖かくお見守りいただけたら幸いです。

今月から『izumi 場所と思い出Ⅰ』のプレ稽古が開始します。
2007年の10月にワークインプログレスとしてリーディング上演した作品を、全面的に改稿した上で、完成型を提出します。
公演期間は2008年4月3日(木)~4月6日(日)まで、会場は横浜ZAIM・別館2Fホール。
3月初旬に公演予定とアナウンスしましたが、都合により日程が変更になりましたことをここにお詫びいたします。

今年はもう一つ『遊園地跡地 場所と思い出Ⅱ』を晩秋に上演予定。
内容の詳細はまだ秘密ですが、というか変わっていくことは必至なのですが、解散したロックバンド、路上の大道芸人、アダルトビデオの監督、それぞれの位置からそれぞれの声が交錯して織りなす、追憶と現在の劇になるだろうと思います。

2008年はこの二本の「悲劇」を上演したいと考えています。
しかし悲しい「できごと」を特別に描こうというのではありません。
「できごと」が生じた磁場に、足を絡めとられた人間の「存在/抗い」を描き出したいのです。
今ここにあり得べき悲劇の所在を、何ものかに対峙して立とうとする人間の姿を、必死で見定めたい。
その姿勢が歪で、弱々しくて、奇形であっても、打ちのめされ、辱められ、痛むことにすら麻痺していても、たとえ彼/女らがもうその場所を動けないとしても。
どれほど足場が悪かろうがなお立とうとする人の意志を、劇を組み立てる中で僕自身が確認したいのだし、きっとその検証の過程を僕たちは楽しみながら進めるでしょう。ぐらつく遊具の上を平衡させて歩いた幼い頃の記憶のように。

820製作所、本年も疾駆いたします。皆様におかれましてもハッピーでリアルで実り多き一年になりますように。
どうか今年も820製作所をよろしくお願いいたします。

《波田野淳紘》