820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

『urashima』客演紹介①

2007-08-10 | 芝居の前に。
センチメンタルなアウトローというのが820製作所の入団資格の内の一つだが、加藤好昭氏はその資質を兼ね備えている。
町を歩けばお巡りさんに呼び止められる。
自転車に乗っていれば防犯登録を確認されるし、鞄を持っていれば中身をチェックされる。
はじめて出会ったのは去年の秋に都内で開かれた演技と演出についてのワークショップの会場で、自分の感覚に誠実な演技と抑制された遊び心に惹かれて声をかけたら、愛知からこの講座のためにやって来たのだと知り驚いた。
連絡先も交わさないまま、新大久保のホームで別れたのだが、その後820のホームページを覗いてくれて、3月の公演に愛知から足を運んでくださった時にはぶったまげたよ俺は。
もちろん上京先の下見のついでだとしてもこんなに嬉しいことは無かった。演技にも生き方にも誠実さがあふれる男。でもアウトロー。
彼の描いた絵を見せてもらったのだがこれがすごかった。かなしくて無防備で。描く人そのものの味が線を震わせている。構図がずれ、脱力し、線と線が結び合わずに放られても、決して不協和音は響かない。天使はこういう顔をしているのだろうと思った。
舞台に立てば鍛えぬかれた発声と、時折見せるはにかみの表情で見る者の視線をさらう。絵を描くように、何の縛りもなくハートの赴くままにからだを動かした時の彼の輝きはちょっと真似できない。
これから東京で数々の舞台を踏んでいくのだろうと思うが、何事も踏み出す一歩は重要であり、高く飛べるように今はその一歩を磨きに磨いている最中だ。
サマホリ初日まで後一週間。疾走する。どうか踏み込むその瞬間を目撃してはもらえないだろうか。