820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

町民。

2006-01-27 | 生活の周辺。
生徒の自転車が「セッチャ」されてた。
いや、され損ねた。
塾の帰りのこと。大騒ぎをしている。見に行くと、鍵穴に何か詰まってる。
「これ、セッチャしようとしたんじゃねぇ?」
セッチャが最初なんだかわからなかった。違うな、一発でわかった。自転車泥棒のことだ。それを「セッチャ」と言うのは知らなかった。本当に? 忘れてただけだろ? 鍵穴には金属の破片のようなものが詰まっていて、どんなにカチャカチャやっても取れない。チャリをセる(=盗る?)、ってこと? いつも元気な持ち主の子はショックを受けたように押し黙っている。友だちはみんな、そうじゃねぇ、俺にやらせろ、セロテープ持ってない? と一生懸命カチャカチャしてる。その中にいると、ぷんと鼻につく、あのにおい。あれだ。14歳の。この町の。おぉ、いける、いける! コウキがうまいことつかんだ。ずるっとその金属片は引きずり出され、ケンタは元気を取り戻し、みんなでうるさく帰っていった。僕もその中にいたなぁ、と見送る。なんか寂しい。ちょっと恥ずかしい。


むかし。

2006-01-26 | 生活の周辺。
朝、新宿で『るにん』を観た。
涙が止まらなかった。言葉を無くす。
8月にやろうと考えている作品に、ほんの少しだけど、言うのもおこがましいけど、設定が似ていて、これを観てしまったからには半端なものはもう作れない。観てよかった。

その後、だっちと合流、インドカレーを食べる。最近インドカレーばっかだよ。インド人のつくる本格インドカリーと銘打たれたものを食ったのは今月だけで三度目だ。ここのナンが一番大きかった。あと安かった。東口、線路脇。
場所を替え、おいしいコーヒーを出す喫茶店で、うだうだと話す。彼の人脈の広さに驚く。ありがとう。
だっちと別れ、中野に。吉増剛造の散文を一冊。
腹が減ったと家に帰ったら祖母が転んで骨折したとの報。でも元気らしい。三週間の入院。でも元気。元気で良かった。本当に良かった。

お姫様、帰ろう。

2006-01-23 | 胸に旅人のバッヂ。
起きたらもうご両親はお仕事に出かけた後だった。ちゃんとご挨拶できなかった。
今日は念願の道後温泉へ! 千と千尋の神隠しの油屋のモデルとなったところ。3000年前から涌いていたとのこと。聖徳太子が入ったってんだからなぁ。男湯ののれんをくぐったら「あらあら!」と強い声が聞こえる。気になりつつ満をじして入る。熱い。熱いのに気にならない。気持ちいい。日本最古のお湯は伊達じゃない。タコになる。三日連続で温泉だ。湯上がり、和木さんとぽてぽて日光浴を楽しんでると、女湯から戻った二人が、あのとき仲居さんが俺を女の子と勘違いして慌ててた事実を教えてくれた。三日連続でおかま扱いだ。松山の人は鋭いな。
お土産を買い、てくてく歩き近所の石手寺へ。ここも八十八ヶ所の一つ。お遍路さんの団体がいた。団体? バスツアーらしい。お遍路で団体って……。お詣りをし、裏手側にある洞窟に入る。中はお地蔵さんがひしめき、雑な絵巻がかかり、無駄に点滅する照明、だめ押しのありがたいお言葉。俗っぽい。出口で見たらマントラ洞窟・平成元年施工と書いてあった。そこはお墓が広がっていて塀に腰かけた千手観音がギターを弾いてる。あやしい。岩屋寺と大違いだ。いろんなお寺を見て学べというんですね。外国人のお遍路さんのマネキンがあった。ビルマの建物が併設されてた。アジアンな寺だった。雑多な感じ。
いい時間になってしまいあわてて空港へ。さよなら松山。濃くて楽しかった。贅沢させてもらってかたじけない。でも僕は旅人にはなれなかったよ。こんどは一人か二人で来るね。バイバイ。
家の近くの駅ではじめて雪が残ってるのをみる。良い旅行だったな。お土産の姫だるまを渡しに行く。深夜帰宅。

山深く、鈴。

2006-01-22 | 胸に旅人のバッヂ。
早くに起きる。晴れ。あたたかい。
旅館なみのおいしい朝ご飯をいただき(卵が本当に美味! ミルキー何とかって銘柄のお米と上半期ベストカップル賞。ここはお水もおいしい。卵ご飯でまろまろしたお口に広がるコーヒーの苦味ときたら)、ご両親に見送られ児童館へ。今日は昨日のロボットダンスの仕上げをして各班発表。ペース早し。ここでも中高生にカバちゃんに似てると囃される。ぷわ。
その後、二画面分割等、マイムの技術を使い、バレーボールの場面を各班つくるという作業。僕の担当した男組は島田さんもいて、濃くて熱い。いきなり野球がはじまったり恋が芽生えたりのサドンデスバレー。ほかの班もみんな、ここは舞☆夢☆踏かと思うような、楽しいでたらめ加減。
午前中でワークショップは終了し、ハッピィさんは帰宅、空港へ。モネちゃんが全身で寂しさを表現してる。伝染する。きゅんとする。
和木さんのお父様が迎えにきてくれるまで時間が空き、児童館のまわりをぷらぷら散歩。迷う。走って滑り込みセーフ。
車に乗せていただき、耕庵といううどん屋へ。じゃこ天という名物を食べた。さつま揚げみたいなんだけどじゃりっとしてておいしい。
満腹でドライブ。お父様の話によると、愛媛じゃ道ばたにみかんが転がってるらしい。トラックからポロポロリ。すずめも太るわけだ。
山道をぐいぐい、峠を越え岩屋寺へ。八十八ヶ所の一つ。今度は徒歩で、山道に入ってく。なんて大きな木! 原生林なのかしら? ここは素晴らしい場所だった。登るときはなんでわざわざこんな場所に、と思うけども、あの岩を見れば納得だ。頂上に大きな岩が切り立っている。あれ見りゃ寺を作りたくなる。絶景。お遍路さんの鈴の音が澄んで、二つ。
和木さんのお家に戻り、お父様が朝用意してくださっていたお刺身をいただく。これがやばい。新っ鮮。こんなにもてなしていただいておろおろする。多謝。
島田さんが迎えに来てくださり、お好み焼き屋でまた食いつつ、夜景を見に行った。道ばたのみかん畑から失敬、さわやかな酸味。「湯ーとぴあ」で温泉、島田さんとお別れをして、お部屋で写真をぱらぱら、和木さんの歴史をめくりつつ、池田さんが壊れていくのを横目で見つつ、寝る。

8年ぶりの大雪ってのはあのころのことだ。

2006-01-21 | 胸に旅人のバッヂ。
大雪!
真っ暗な朝。
羽田空港は大変格好良い。広い。林さん、池田さん、和木さん揃う。
この旅行はパントマイムサークル、舞☆夢☆踏の師・ハッピィ吉沢氏の出張ワークショップにお邪魔するのが目的である。和木さんの故郷、愛媛県は松山にて。観光しつつ。ふふ。
機内で30分待つ。ぐわんっと加速して飛行機が傾いた。ここ最近で一番心が騒いだ。飛んでる。窓の向こうは雪雲で真っ白。急に光、青空。翼にあたる日差し。雲の平らな線が見える。一人で興奮する。
松山空港では和木さんの妹のめぐみさんとそのダーリン島田さんが待っててくれた。曇り、あたたかい。島田さんの車で今日のワークショップの場所、児童館へ。ハッピィさんの乗る便が遅れてるとの情報。雪は増すばかり、東京。
荷物を置いて繁華街、和木さんの案内で大街道へ。素敵なマネキンを発見、和木さんの大道芸デビュースポットにお参り、古本屋で杉浦日向子、インド料理ラルキーでガツガツ食う。
児童館へ戻るとハッピィさんが無事到着してた。小1の娘さん、モネちゃんも黒い練習着を着ててご満悦。着替えてすぐワークショップ開始。地元の児童劇団無邪気の皆様。モネちゃんは早くもアイドル。
舞☆夢☆踏名物ロボットダンスを教えることになった。俺が一番苦手なやつだ。練習しとくんだった。マリオネットを担当。頭の中で猛スピードで整理しながら次々に教える。終わってぐったり。みんな精気を吸われてた。一番元気に跳ね回ってた小5のよっちゃんが近寄ってきて「おかま、おかま」と指さした。バレた。会う度に繰り返された。
夜、ハッピィさんの泊まるホテルの料亭でご飯をいただく。ありえない高級料理。ごめんなさい。かに食いました。
その後、和木さんの実家へ。これから二日間お世話になります。よろしくお願いします。お父様の車で近所の温泉、「利楽」へ。とろとろのお湯。極楽。

「自分しか中央はないんだから、そこに引っ張りこめ」

2006-01-19 | 生活の周辺。
咳が止まらず朝病院へ。今年は熱がないのに咳だけ出る型の風邪が流行ってるとのこと。治っておねがい。土曜の早朝から松山に行くのだ。そういえばそのことの詳細もまだ知らないし準備もしてない。ラフな自分が不安。そんな自分が好き。
夕方、橋本さんの話を聞きにいく。舞☆夢☆踏の面々とぞろぞろ中華街へ。久しぶりに夜にきた。どぎつい街。赤、黄、赤。
橋本さんはもう60を越えるというのに、からだ中からエネルギーがあふれだしている。若者を引き連れてさっさか歩く。ぐいぐいのむ。檄を飛ばす。
「文化の中央に居続けるためには」という質問に、
「おまえが文化なんだよっ」
と答えるのを聞いてこの人は本物だと思う。いろいろなことを聞いた。歴史や革命や民主主義の話を横断しながら繰り返し語ることは、表層ではない(ルーティーンではない)、人間がいつの時代も背負っているものに向けての表現(芸)を目指せということ。
たらふくご馳走になったあと、ジャズバーへ。
「日本のコルトレーンを聞かせてやる」
井上淑彦さんのサックス。もうとにかく貪るように聞いた。魂で感応。音楽にひたる。ぴくぴく体が動く。ピアニストの田中信正さんは踊るようにピアノを弾く。痛そうな顔をして。
橋本さんには本当に死ぬほどお世話になってしまった。
帰途、バイクの鍵を落としてて呆然。しかもハンドルロックされてなくて愕然。押して帰る。咳が出る。駅を少し離れれば僕らの町にはまだ暗がりが多い。畑に挟まれた一本道。左肩が痛い。たまらず右側に力を集め右手に寄りかかるように押せばクイッとアクセルが回り、そのままアクセル全開のままとぼとぼと押し続けているとガクンと急に臨界点をつきぬけエンジンがかかりだし、あっ、いけないと思った瞬間にはもう走り出しているバイク、倒れずによろよろ、決して速くなく、音は静か、一本道をまっすぐ進み続けてる夢を、見た36℃の小さな体。

まさるさん。

2006-01-18 | 生活の周辺。
地下鉄でまさるさんに会う。卒論はメイエルホリドについて。きっとこの先はっつんもぶつかる名前だよ、と言われたので覚えてようと口のなかで繰り返す。メイエルホリド。いかした名前。メンデルスゾーンとか。メーテルリンクとか。メメクラゲとか。3分で忘れる。その後授業。高橋源一郎をうちの学校で講師に迎えようって話があったのに「学生に手を出しそうだから」という理由で却下になったって話。だからだめなんだ。夜、咳がひどくなる。