最前線の育児論byはやし浩司(Biglobe-Blog)

最前線で活躍するお父さん、お母さんのためのBLOG
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●住環境と子供(2)

2009-02-02 08:27:20 | Weblog


●すさまじい反響

 月※日、「子どもの世界」で、「疑わしきは罰する」を書いた。その中で、私は東海大学
地域保健学の逢坂文夫氏の論文を引用して、「妊婦の流産率は、六階以上では二四%。一〇
階以上では、三九%(一~五階では、五~七%)。流・死産率は、六階以上では、二一%(全
体では八%)」などと書いた。わかりやすく言うと、高層住宅の六階以上に住む妊婦のうち、
四人に一人が流産し、五人に一人が流・死産しているということになる。

さらに一〇階以上では、約二人に一人が、流産していることになる。驚くべき調査結果と
いってよい。これについて、それまで経験したことがないほど、読者からすさまじい反響
があった。「事実か?」という問い合わせが多かったが、中には「いいかげんなことを書い
てもらっては困る」というのもあった。私の記事が、かえって高層住宅、日本でいう高層
マンションに住む人たちの不安をかきたてるというのだ。

原稿を書いた経緯

 そこで今回、「疑わしきを罰する」を書くに至った、経緯をここに説明する。まず高層住
宅のもつ危険性については、すでに三〇年以上も前から、欧米では広く議論されているこ
とである。私がメルボルンにいたときすでに、メルボルンでは高層住宅が問題になってい
た。これはあいまいな記憶によるものだが、高層住宅の住人ほど自殺者が多いというのも
あった。一方、この日本でも散発的にではあるが、そのつど指摘されている。そこで私は
インターネットを使って、「高層住宅→心理的影響」という名目で検索してみた。

結果、無数の情報を手に入れることができた。その中でも特に目を引いたのは、A社の情
報コーナーであった。しかしこのA社は、どこか宗教団体的な雰囲気がしたので、私はそ
の中に出ている「事実」と「出典先」だけを取りだし、独自の立場で調べた。結果、今回、
その原稿を書くにあたって、次の四人の研究者、教授、元教授と連絡を直接とることに成
功した。連絡は手紙によるものであり、うち三人(北村、逢坂、中尾氏)は直接、手紙で
返事をくれた。それには元となる論文も同封されていた。一人(水野氏)は、電話で連絡
をとった。

 国立精神神経センター、北村俊則氏
 東海大学医学部地域保健学、逢坂文夫氏
 鳥取大学総合理工学部教授、中尾哲也
 静岡大学名誉教授、水野秀夫氏の四氏である。

 私はこの「子どもの世界」を書くにあたって、実名を使うときは、その人物と事前に連
絡をとり、実名の使用について許可を得るようにしている。そして許可を得たときだけ、
実名を使い、そうでないときは、必要に応じて、アルファベットによるイニシャルを使う
ようにしている。こうした研究者から論文を直接手に入れた後、数値を自分で確認し、な
おかつ、私の元原稿のコピーをこれらの研究者に送った。そのあと、「疑わしきは罰する」
を新聞紙上で発表した。

危険な高層住宅?

 逢坂文夫氏は、横浜市の三保健所管内における四か月健診を受けた母親(第一子のみを
出生した母親)、1615人(回収率、54%)について調査した。結果は次のようなもの
であったという。

 流産割合(全体) …… 7.7%
     一戸建て …… 8.2%
     集合住宅(1~2階) …… 6.9%
     集合住宅(3~5階) …… 5.6%
     集合住宅(6~9階) ……18.8% 
     集合住宅(10階以上)……38.9%

 これらの調査結果でわかることは、集合住宅といっても、1~5階では、一戸建てに住
む妊婦よりも、流産率は低いことがわかる。しかし6階以上になると、流産率は極端に高
くなる。また帝王切開術を必要とするような異常分娩についても、ほぼ同じような結果が
出ている。一戸建て、14.9%に対して、六階以上では、27%など。

これについて、逢坂氏は次のようにコメントしている。「(高層階に住む妊婦ほど)妊婦の
運動不足に伴い、出生体重値の増加がみられ、その結果が異常分娩に関与するものと推察
される」と。ただし「流産」といっても、その内容はさまざまであり、また高層住宅の住
人といっても、居住年数、妊娠経験(初産か否か)、居住空間の広さなど、その居住形態は
さまざまである。その居住形態によっても、影響は違う。逢坂氏はこの点についても、詳
細な調査を行っているが、ここでは割愛する。興味のある方は、「保健の科学」第36巻1
994別冊781頁以下をご覧になってほしい。

子どもの心理との関連性

 「子どもの世界」の中で、私は、「母親ですらこれだけの影響を受けるのだから、いわん
や子どもをや」と書いた。もちろん集合住宅であることから子どもが直接影響を受けるこ
とも考えられるが、母親が影響を受け、その副次的影響として、子どもが影響を受けるこ
とも考えられる。どちらにせよ、あくまでも「考えられる」という範囲で、私は「疑わし
きは罰する」と書いた。逢坂氏の論文で、私が着目したのはこの点である。逢坂氏は、流・
死産の原因の一つとして、「母親の神経症的傾向割合」をあげ、それについても調査してい
る。

 神経症的傾向割合 全体     …… 7.5%
     一戸建て        …… 5.3%
     集合住宅(1~2階) …… 10.2%
     集合住宅(3~5階) ……  8.8%
     集合住宅(6階以上) …… 13.2%

 この結果から、神経症による症状が、高層住宅の6階以上では、一戸建て住宅に住む母
親より、約2.6倍。平均より約2倍多いことがわかる。この事実を補足する調査結果と
して、逢坂氏は、喫煙率も同じような割合で、高層階ほどふえていることを指摘している。
たとえば一戸建て女性の喫煙率、9.0%。集合住宅の1~2階、11.4%。3~5階、
10.9%。6階以上、17.6%。

 つまりこれらの調査結果を総合すると、高層住宅の高層階(特に6階以上)に住む母親
は、より神経症による症状を訴え、その症状をまぎらわすため、より喫煙に頼る傾向が強
いということになる。母親ですらそうなのだから、「いわんや子どもをや」ということにな
る。

好ましい木造住宅?

 住環境と人間の心理の関係については、多くの研究者が、その調査結果を発表している。
コンクリート住宅と木造住宅について、静岡大学の水野名誉教授は、マウスを使って興味
深い実験をしている。水野氏の調査によれば、木製ゲージ(かご)でマウスを育てたばあ
い、生後二〇日の生存率は、85.1%。しかしコンクリートゲージで育てたばあいは、
たったの6.9%ということだそうだ。水野氏は、気温条件など、さまざまな環境下で実
験を繰り返したということだが、「あいにくとその論文は手元にはない」とのことだった。

 ただこの調査結果をもって、コンクリート住宅が、人間の住環境としてふさわしくない
とは断言できない。マウスと人間とでは、生活習慣そのものが違う。電話で私が、「マウス
はものをかじるという習性があるが、ものをかじれないという強度のストレスが、生存率
に影響しているのではないか」と言うと、水野氏は、「それについては知らない」と言った。
また私の原稿について、水野氏は、「私はコンクリート住宅と木造住宅の住環境については
調査はしたが、だからといって高層住宅が危険だとまでは言っていない」と言った。水野
氏の言うとおりである。

中尾哲也氏の研究から

 住環境について、鳥取大学の中尾哲也教授は詳しい調査をしている。 

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