最前線の育児論byはやし浩司(Biglobe-Blog)

最前線で活躍するお父さん、お母さんのためのBLOG
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●横断歩道で

2007-08-01 09:58:40 | Weblog
●横断歩道で

 横断歩道で、立ち止まって、信号が変わるのを待つ。しかしそんな信号など、守る人は、今、ほとんどいない。みんな左右を見て、車がこないとわかると、さっさと渡っていく。

 年配の男性も女性も。そして若い人も高校生も!

 そういうのを見ていると、私は、つくづく自分のしていることが、バカらしく思えてくる。いや、実際、私は、バカだ。

 本当の私は、「バカヤロー」と叫びたい。世界中に向って、そう叫びたい。しかしそうすることもできず、毎日、悶々とした気分で、過ごしている。仮面をかぶって、善人ぶっているだけ。「私」が、どこにもいない。

 ああ、私も、みなと同じように、赤信号を無視して、横断歩道を渡りたい。めんどうなことは考えず、自分の思ったように生きたい。体を、がんじがらめにしているこのクサリを、はずしてみたい!

 ときどき、気の小さい自分が、いやになる。勇気もない。度胸もない。毎日が、欲求不満のかたまり。先日もあれこれムシャクシャしたから、パソコンでも買ってやろうと、街に出た。

 しかしいざ買うときになると、家計を心配したり、子どもの学費を心配したりして、それができなくなってしまった。そういう自分を知るたびに、いやになる。情けなくなる。

 が、希望がないわけではない。昨日のことだが、こんなことがあった(11-30)。

 仕事で、街に向うときのこと。やはり赤信号で、自転車を止めた。小さな路地だった。

 見ると、反対側に、小さな子どもを連れた母親。母親は、子どもの手をしっかりと握っている。その親子が、横断歩道の向こう側で、同じように、立って、信号が変わるのを待っていた。母親は、左右を、何度か見ていた。

 私は、いつその親子が、信号を無視して渡り始めるだろうかと、そんなことを考えていた。車はない。道路は閑散としていた。のどかな陽だまりが、道路を白く照らしていた。

 5秒、10秒……。ジリジリと時間が過ぎていくのがわかった。私は、おかしな緊張感に包まれた。「今に歩き出すぞ……」と思った。しかしその親子は、じっと、そこに立ったままだった。

 横の信号が、青から黄色になった。赤になった。が、まだその親子は、動かなかった。そしてつぎの瞬間、私たちの信号が青になった。とたん、緊張感が体から抜け、私は、自転車のペダルに力を入れた。同時に、その親子も、歩き始めた。

 親子と、横断歩道の上で、すれちがった。私はふりかえって、その親子を見た。「よかった」と思った。ついで、「いい母親だな」と思った。

 少ないが、そういう人もいる。まだいる。だからまだ希望を捨ててはいけない。……と、そのときは、そう思った。

 ……と書いたが、どうしても、このエッセーのしめくくりが書けない。「バカヤロー」と叫びたい気持ちはそのまま。体のクサリを解き放ちたい気持ちも、そのまま。私は、相変わらず、バカだと思う。その気持ちも、そのまま。

 ただその親子が、ゴミが散乱する砂浜に咲いている、一輪の花のような感じがした。それが今の私にとっては、希望なのかもしれない。今は、そう思って、自分をなぐさめている。


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