最前線の育児論byはやし浩司(Biglobe-Blog)

最前線で活躍するお父さん、お母さんのためのBLOG
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●子どもの盗癖

2008-07-10 07:55:16 | Weblog
●息子の盗癖(Stealing)

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兵庫県K市に住んでいる、
KNさんという母親から、
こんな相談が届いている。

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【KNさんより、はやし浩司へ】

HPを読ませていただきメールを書きました。

今日相談させていただくのは中2になる息子のことです。この2月に4年間の海外転勤から帰国し、日本の公立中学に通っています。部活動に入り頑張っているのですが、なかなか新しい生活に、溶け込めないでいるようです。

その息子が朝、試合に出かけた後、主人の財布がなくなっていたのに気がつき、部屋を探したらクローゼットから財布と共に、主人のいろいろな電化製品が出てきました。

実はこれが最初ではなく5月中旬に、やはりI・potを買うため家族の財布からお金を抜き取り購入していました。この時は本人と話をし、金額が3万円と高価なため、私がお店に出向き、親の知らぬところで買った旨を伝え、返品をさせていただきました。

そしてつい先週、やはり隠していた主人の財布からお金を抜き取り、サッカーシューズを、黙って購入したのが発覚したばかりです。

そして今日、これを見つけ本当にどうしたらよいのか、このまま家族の中だけで済まなくなり、お店のものを盗むようになったらどうしようか不安でなりません。

本人に注意をした時はもうしないというのですが、サッカーシューズの件以来、またやるのではないかと私は感じていました。

なぜなら本人は悪いことをしていると意識があまりないように感じたからです。貯金からかえせばいい、家族のお金、はっきりは言いませんがそのような受け取り方をしているようです。

子供には買うことを禁止しているわけではありません。ほしいと言った時には意見を聞いていますが、高いものを欲しがるので、相応なものを提案しています。でも多分それでは不満なのでこういう行動にでてしまったのでしょう。

そのつどどうしたらわかってもらえるかときつく叱ったり、じっくり話しあったりしてみましたが効果はありません。いま試合に行っていますが帰ってきたらどう話を切り出したらよいか……。自分が何を言い出してしまうかわからないのです。

突然メールをだし、ずうずうしいことは承知です。
ですがどうかお返事をいただけますようお願いいたします。

【はやし浩司よりKNさんへ】

かなり物欲の強い子どもですね。

最近の研究によれば、(「サイエンス」誌、Kロートワイラー・オゼッリほか)、物欲の「根」は、私たちが考えているより、はるかに深いことがわかってきました。

たとえばそこに(新しいモノ)があると、最初の信号は、脳の中心部にある視床下部というところに送られます。その信号を受けた視床下部は、ドーパミンという、快楽追求行動を調整している神経伝達物質を放出します。これが脳の中の線条体を刺激します。

この反応メカニズムは、アルコール中毒患者が、酒の臭いをかいだり、酒のコマーシャルを見たときと同じと考えられています。喫煙者が、タバコをやめられないのも、そのひとつです。

つまり本人でも、どうにもならない問題と、まず考えてください。もし説教でなおるような問題であれば、この世界には、アルコール中毒患者も、喫煙者もいないということになります。KNさんのお子さんについていえば、(そのモノ)を見たとたん、猛烈な物欲が働き、自分でもコントロールできない状態になると考えてください。

(そもそもそうした物欲を高めてしまったのは、家庭教育の失敗とみます。幼いころ、物欲をうまく利用しながら、子どもをしつけてきたという経緯があるはずです。「これを買ってあげるから、勉強しようね」とか、など。)

その猛烈な物欲が、KNさんのお子さんを裏から操っている……。それが盗癖とつながっています。(ふつうの盗癖とちがうところは、盗むこと自体には、快感を覚えていないということです。)

性格的にもかなりわがままで、自分勝手かもしれません。俗にいう、「ドラ息子症候群」がほかにあれば、それも疑ってみてください。

ではどうするか?

こうしたケースでは、子どもを叱っても、あるいは説教しても、あまり(=ほとんど)意味はありません。先にも書いたように、子ども自身も、自分でどうしたらよいか、わかっていないからです。

そこで親がとるべき方法は、ただひとつ。
管理を強化するということです。徹底した管理をします。

(1) 子どもの目の届くところに、お金を置かない。
(2) サイフ、バッグの置き場所に注意する。
(3) 大金を持ち歩かない。

夜の睡眠中も、お金の入ったバッグ類は、手元に置きます。またそういう習慣を確立します。夫の協力も、不可欠です。メールを読ませていただいた範囲では、KNさんの家庭は、裕福ということもあり、お金の管理が、かなりルーズな感じがします。サイフのお金は、特別なことがないかぎり、3000円までとか、あるいは、それ以下にします。

またもうひとつ気になるのは、「私がお店に出向き、親の知らぬところで買った旨を伝え、返品をさせていただきました」という部分です。

子どもの名誉、プライドをどのように考えていますか?
店の人が受ける迷惑を、どのように考えていますか?

あなた自身が、甘いというか、依存性が強いというか、あるいはあなたの子ども自身を、私物化している(ゴメン!)。自分が盗まれるかもしれないようなところに、3万円もの大金を置いておきながら、それが盗まれたからといって、大騒ぎする。

では、どうするか?

まず、あなた自身が、おとなになることです。同時に、あなたの子どもを、(子ども)ではなく、(1人の人間)として認めることです。そして友として、あなたの子どものした行為については、あなたも共同責任を負います。あなた自身が、子どもと同じレベルになってしまっているのが、たいへん気になります。

店に行って、3万円を取り返した段階で、すでにKNさんと、子どもの信頼関係は、崩壊しているとみます。はっきり言えば、あなたはしてはいけないことを、してしまった。相手が幼児ならともかくも、中学生ですよ! (あるいはそれ以前から、破壊されていると考えてもよいでしょう。)で、こういうときは、(子どもを責める)のではなく、(そういうスキを与えた自分)、さらには、(そういう子どもにした自分)を、もっと反省してください。一方的に子どもだけを責めるのは、あなたの身勝手というものです。

あなたにはつらいことかもしれませんが、あなたがすべきことは、ただひとつ。『許して、忘れる』です。

これについては原稿を書いてきましたので、「はやし浩司 許して忘れる」で、検索してみてください。いくつかの原稿がヒットできるはずです。

今からでも遅くないなどという気休めは言いたくありません。むしろ、私が言いたいのは、その逆です。

こうした問題には、かならず二番底、三番底があります。「今が最悪」などと思ってはいけません。すでにあなたの子どもは、常習的に万引きをしていると考えてください。今の状態をこじらせば、さらにそれがエスカレートする可能性があります。非行、夜遊び、家出、不登校……、さらには家庭内暴力と、それが進んでしまう可能性もあります。

ですから、何としても、今の状況を、これ以上悪くしないことだけを考えて、対処してください。はげしく叱ったり、説教すればするほど、逆効果ということです。先にも書いたように、病的な(?)盗癖であれば、なおさらです。

とくに現在、あなたの子どもは、思春期の真っ最中。そうでなくても、心の中では、もろもろの欲望がウズを巻いています。そのウズは、あなた自身の力では、どうにもならないものです。もちろん子ども自身も、それをもてあましている。

盗癖は、あくまでも症状のひとつです。インフルエンザにかかった子どもの、「熱」のようなものです。熱だけをおさえたところで、インフルエンザが治るということではありません。

きびしいことを書きましたが、メールを読んだ範囲では、「今が序の口」と感じました。へたをすれば悪循環が悪循環を呼び、さらにKNさんのお子さんは、深くて暗い袋小路に入ってしまうでしょう。

親のサイフからお金を盗んだことを叱るのではなく、(というのも、そんなことはだれでもしていることですから……。私も中学生のとき、しましたよ!)、まだまじめに(?)学校へ行き、試合に出ている息子さんを、喜びなさい。感謝しなさい。

またそのうち万引きも発覚するでしょうが、それも覚悟しておくことです。そのときはそのときで、友として、堂々と、相手の方と接してください。(というのも、万引きにしても、この時期の子どもにとっては、熱病のようなものですから)。子ども自身に責任を取らせればよいのです。子離れを今のうちにしっかりとしておきます。そしてそのときの自分の態度を、シミュレートしておきます。

「自分でしたことは、自分で責任を取りなさい!」「私は知りません!」と。

それが今のあなたの取るべき、態度です。(まちがっても、相手の人に許しを乞うたりしてはいけませんよ!)

以上ですが、何かの参考になればうれしいです。
メール、ありがとうございました。

なおこの原稿は、HPに収録しますが、どうかお許しください。
不都合な点があれば、至急、お知らせください。書き改めます。

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【KNさんより、はやし浩司へ】

> はやしさま
>
> お忙しい中、早急にお返事いただいていながら遅くなり申し訳ありません。
> 今後の向き合い方・不安などいろいろなものが頭を駆け巡り手つかずの状態になってしまいました。
> メールの転載の件ですがお使いください。
> お答えいただいた内容が、同じように悩んでいらっしゃる方に少しでもお役にたてればと思います。
> と書きながらも、私はまだ確固たる信念・方針は何も決まっていません。
> お返事をいただいてから昨日までどうしたらよいのか考え悩みとにかく苦しい毎日です。
>
> 夕べくらいから少し長期戦になる心構えができてきたくらいです。
> 前回のメールはとにかくどうしたらよいか気ばかり焦り、バーっと書いてしまいました。
>
> もう少し息子についてくわしく書かせてください。
>
> 小さい頃より転勤が多くだいたい1~3年おきに日本国内を住んできました。
> 小学校の中学年になると引っ越すときには嫌がっていたのを覚えています。
> また、転校先では口には出しませんがそれなりのストレスはあったようで、
> 仲間として認めてもらい自分らしく振る舞えるようになるのに4ヶ月くらいかかっていたと思います。
> 5年生の時にフランスに転勤になり、インターナショナルスクールに転校となったのですがこの頃までは物欲等がなく、
> みんながゲームを買っていても強くほしがることもなくたまに友達とするくらいでした。
>
> 私自身も必要以上のもの・年相応と思えないもは、簡単には買い与えてきませんでした。
>
> 物に対する執着はほとんどないといってもよいくらいでした。
> フランスに移ってからは、中学1年生くらいまでは海外の友達もでき楽しく学校に通っていました。
>
> ただ、生活面では中学2年のころから甘いものに執着を示しだし自分で買って食べるようになりました。

> 同時に物に対する欲の始まりだったように思えます。
> 思春期を迎え少し経った頃から変わってきたと思います。
> 今思えば1年くらい前から兆候があったのかもしれません。
> 住んでいた国も多少影響があったかもしれません。

> フランスという国は管理されていないものは自分のものされてしまいます。
> 要するにしまっていなければ自分が取っても良いという意識なのです。
> もちろんみなではないとも思いますがほとんどの人はそう思っているでしょう。
> 主人の会社でも、パソコンを持って帰るのを忘れたら次の日には無くなっていたとか、
> 学校の図書室で調べ物をしている間に電子辞書が無くなっていたり,
> 娘が学校で iPot を置き忘れ、2分後にすぐに取りに行ったけれど
> なくなって見つからなかったなど。
> そんな環境で人の物に対する常識が少しずれてきていたのかもしれません 。
> (ほかの日本人みんなが感化されるわけではありませんから個人の問題ですが。)
>
> そして、今回の帰国に関しては、今までの中で一番厳しいようです。
> 年頃のせいかなかなか仲間に認められるのが大変なようで
> 仲良くなれてきたなと思っていた友達から急に、「お前なんかフランスに帰れ」と言われたり
> 二人の時は普通に話しても何人かが集まると仲間外れされ始め、なかなか難しいようでした。
> 心の支えとしていたサッカーもコーチとそりが合わないようではずされてしまいました。
>
> 最近イライラしているのがよくわかります。
> >
> 今書いたことが今回のことの原因とは思ってはいません。
> 考慮はしながら切り離して考えていこうと思っています。
> というのはアドバイスいただいたように本人にもどうにもならない物欲でコントロールできない状態でもあるからです。

> 注意したそのときは理解しているし反省もしているけれどすぐ忘れて私物化してしまいます。 
> この先エスカレートしたらどうやって対処していけばよいのか、いつか治るのか、本当に不安だらけです。
> もしかしたら大したことではない はしか のようなもの。
> もしかしたら警察沙汰になるようなもの。
> 頭の中がぐるぐる回ってしまいます。

> 「許して忘れる」それで快方に向かうのでしょうか。
> 私たち夫婦もお金の管理が甘かったことを反省し今は徹底して目の届くところにはおかないようにしています。
> 物については持ち歩くことができないので見つけたつど
> 「これ、私のだよね。使いたいときには一応貸してって言おうね。使ってもいいから」
>
> となるべくさりげなく言葉をかけるようにしています。
>
> また、前回のメールで ipot を返品した件。言い訳がましいですが、
> ipot を返品したのはレシートから発覚したものでまだ買った時の袋も開けていない状態です。
> それでもお店の方に迷惑をおかけしたことには変わりはありませんが。
> 見つけた段階で、私はどういう行動をとっていたらよかったのでしょうか。
> 一緒に返品することは息子のプライドが傷つくと思い私が行きました。
> 本人が行くべきだったのでしょうか。
>
> とても恐ろしいし頑張っていけるか自信はなく今まで落ち込んできましたが、
> これからが二番底、三番底と続くのなら落ち込んではいられないので覚悟をきめなければいけないですね。
> 自分の子供なんだからしっかりしなくては。
> また、ご相談をさせていただくことがあるかもしれません。

> その折はよろしくお願いいたします。
> はやしさんにアドバイスをいただいていなければ、もっと自分を追い込んでいたと思います。
> 心より感謝をいたしております。
> ありがとうございました
>
【はやし浩司より、KNさんへ】

おはようございます。

メールありがとうございました。

「KN様」というのが、ご本名であることを知り
うれしく思いました。送信者名から、わかりました。
(ほとんどの方は、偽名で相談においでになります。)

もちろんお名前が外に漏れるということは、
ぜったいにありませんので、ご安心ください。

原稿として残すときは、内容をすべて改変します。
メールもしばらくしたあと、削除しています。

またご事情を詳しく話してくださり、感謝しています。
よい勉強になりました。

基本的には、前回、書いたとおりですが、
神経症としての盗癖と考えてください。
お子さんは、そういう形で、(親から見れば心配
ですが)、自分の心を懸命に支えようとしています。
幼児のおねしょと同じように考えてやってください。

ものを所有することで、脳内にモルヒネ様の物質
(エンドロフィン、エンケファリン)を充満させます。

それはとても心地よいものです。
対処の仕方さえ誤らなければ、一過性のもので終わります。
習慣化すると、ずっと先まで残ります。

家庭の中では、心の開放を大切に、のんびりと
させてやるのがコツです。

では、今朝はこれで失礼します。

なお「フランスの事情」は、たいへん興味深く読ませていただきました。
私も思い当たることが、いくつかあります。

また先日、アメリカで研究生活を送っている、HTさん(女性、50歳くらい)
もこう言っていました。

「研究室に新しい機械が入っても、その使い方は、だれも教えて
くれない」とです。
「使い方を知りたかったら、自分で勉強しろ」という姿勢なのですね。
「冷たい」というか、向こうでは、弱肉強食的な人間関係が固定化している
ため、そういうことが起きるのだと、話してくれました。

はやし浩司


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