あるマーケティングプロデューサー日記

ビジネスを通じて出会った人々、新しい世界、成功事例などを日々綴っていきたいと思います。

アメリカ崩壊は止まらない

2008-07-13 17:17:29 | 海外事情
今週の週刊文春に、面白い記事が掲載されていました。

日本の銀行に勤務した後、ゴールドマン・サックスに転職し、今はロバーツ・ミタニという投資銀行を経営されている神谷秀樹氏による「ウォール街現地報告 危ない銀行150行 アメリカ崩壊は止まらない」というものです。

さすが業界に精通されている方だけあって、生々しい事実も交えながらリアリティに満ちたレポートになっています。その一部を、ご紹介します。(※以下、週刊文春2008年7月17日号より抜粋)


今月3月、ウォール街の知人から、こんな話を聞きました。

「ベア・スターンズの元社員が二人相次いで、ハドソン川に身を投げて自殺したそうだ」

この数日前、米国第5位の投資銀行ベア・スターンズが経営破綻、米銀大手のJPモルガン・チェースに「1株2ドル」で買収されそうだ、という話(後に1株10ドルで買収された)が出ていました。身投げしたという元社員は、自分の年金のほとんどを自社株で運用していたそうです。1年ほど前の同社の株価は170ドルでしたから、彼らの絶望は想像に難くありません。

サブプライム危機の前までは、彼ら金融マンはわが世の春を謳歌していました。最新の金融技術でバブルを生んだ米国の金融業界は、全米の企業収益の30%から40%を稼ぎ出す巨大な存在でした。私が近著『さらば、強欲資本主義』(亜紀書房)で指摘した「今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のもの」という風潮が、米国経済の「エンジン」となっていたのです。

しかし高級車を乗り回し、海辺に別荘とレジャーボートを買い、勝ち組を自負してきたウォール街の人々は、サブプライム問題で一転、窮地に追い込まれました。

フロリダでは今、ローンの返済に窮した人々が手放したレジャーボートが叩き売りされています。マンハッタンでは、二週間前でないと予約が取れなかった金融マン御用達の高級レストランが、今では当日でも簡単に予約を取れます。

それでも職があるだけまだマシ、というのが実情です。昨年米国の金融業界では約15万人が解雇され、今年はさらに約17万人がクビになると予測されているのです。

現在、破綻が懸念される「危ない銀行」の数は、全米で総計150行にのぼると言われており、中には、創業150年を越える老舗投資銀行の名前もあります。

私のもとにも、しょっちゅう知らない人からの“レジュメ(履歴書)”が舞い込みますし、他の投資銀行を買収しないかという話も二週間に一つくらいは寄せられています。

このひと月ほどで米国の金融市場、実体経済ともに悪化のスピードが加速している―これが私の実感です。(※中略)

新車販売台数は、ピークだった年間1700万台から約300万台も落ち込み、GMを筆頭とする“ビック3”でさえ、いつ“チャプター11(連邦倒産法11条。日本でいう会社更生法)”を適用してもおかしくない状況です。

燃料代の高騰が深刻な航空業界も再編は必至で、中小の会社は既に撤退し始めています。米国最大のコングロマリット企業であるGEは、創業事業として百年の歴史を誇る家電部門の売却を発表。小売業の雄として注目されたスターバックスも全米で500店舗を閉店します。

経営破綻し、更正法を経ずに精算される会社も増加の一途をたどり、製造業から小売業まで、米国の企業は、あらゆる分野で衰退しているのです。

その実態は株価に如実に反映されています。NYダウ平均は、昨年10月につけた過去最高値から20%も下がり、“ベアマーケット(相場の下落が続いている市場”に突入しました。


◆教会で実態した米国人の変化

サブプライム問題自体も、収束する気配はありません。企業や金融機関の業績が発表されるたびに、関連損失は膨らむ一方です。

08年1-3月の住宅価格は前年比で14%下落しましたが、いまだに底は見えません。米国の住宅産業は1年分以上の在庫を抱えており、これは、第二次大戦以降最悪の状況です。

サブプライム問題は、庶民の生活を直撃しています。特にひどいのが、カリフォルニア、フロリダ、アリゾナ、ラスベガス周辺です。多くの住民がサブプライムローンで住宅を購入しており、軒並み“フォークロージャー(差し押さえ)”されている。結果、空き家が林立することになりました。事実上“スラム”化し、社会問題となっている地域もあります。(※中略)

これまで米国のGDPは、実に七割が個人消費に支えられていました。その内実は、クレジットカードやホームエクイティローン、自動車ローンなどの借金です。つまり、欲しいものは借金して買えばいい、という「消費癖」とそれを可能にする過剰流動性が米国の「成長政策」のエンジンだったわけです。消費がしぼめば景気が停滞するのは自明の理なのです。(※中略)

この危機にどう対応していくのか。そこに自ずと国のビジョンが問われます。遅くに失した感はありますが、米国では強欲資本主義の総括が始まりました。

先日はベア・スターンズのファンド・マネージャー2名が、顧客に虚偽の説明をした容疑で逮捕されました。FBIは現在、サブプライムローン問題を引き起こした連中を中心に、一説によると400人もの金融犯罪者を追いかけています。(※中略)

今こそ研究開発投資を進め、知恵を絞り、汗水流して働いて、不況を克服する革新的な商品やサービスを生み出す努力をすべきです。それが危機を脱する唯一の方策です(※中略)


こういった激動の時代だからこそ、歴史から学ぶ必要があるような気がしています。先日、本田宗一郎について発表会をしました。先人から学ぶ知恵と謙虚さをもって、本質を見失わないようにすることが重要だと思います。

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