一一 さて、覚者はナーディカに心ゆくまでとどまられた後、長老アーナンダにこうお告げになった。
「さあ、アーナンダよ、ヴェーサーリーを訪れよう。」
「かしこまりました、尊師よ。」
と、長老アーナンダは覚者にお応え申し上げた。そして、覚者は大きな向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、ヴェーサーリーに入られた。そこで、覚者はヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまられたのである。
一二 そのとき、覚者は向煩悩滅尽多学男たちに、次のようにお説きになった。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男は記憶修習【きおくしゅじゅう】し正智してとどまりなさい。これは、君たちに対するわたしたちの教戒である。
向煩悩滅尽多学男たちよ、それではどのようにして、向煩悩滅尽多学男は記憶修習するのであろうか。
向煩悩滅尽多学男たちよ、ここで向煩悩滅尽多学男は、身において身を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏【ちょうぶく】しなさい。
感覚において感覚を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
心において心を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
観念において観念を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
向煩悩滅尽多学男たちよ、このようにして、向煩悩滅尽多学男は記憶修習するのである。
一三 向煩悩滅尽多学男たちよ、それではどのようにして、向煩悩滅尽多学男は正智するのであろうか。
向煩悩滅尽多学男たちよ、ここで向煩悩滅尽多学男は、進むにも退くにも正智してなし、前を見るにも後を見るにも正智してなし、曲げるにも伸ばすにも正智してなし、正装衣や衣鉢【いはつ】を身に着けるにも正智してなし、食べるにも飲むにもかむにも味わうにも正智してなし、大便や小便をするにも正智してなし、行くにもとどまるにも座るにも眠るにも起きるにも話すにも黙っているにも正智してなす。
向煩悩滅尽多学男たちよ、このようにして、向煩悩滅尽多学男は正智するのである。
向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男は記憶修習し正智してとどまりなさい。これは、君たちに対するわたしたちの教戒である。」
一四 そのとき、娼婦【しょうふ】アンバパーリーは、「覚者がヴェーサーリーに到着し、ヴェーサーリーのわたしのマンゴー林にとどまられたそうだ」と伝え聞いた。そこで、娼婦アンバパーリーは、多くの威風堂々とした車を用意させ、自らも威風堂々とした車の一つに乗り、多くの威風堂々とした車を伴い、自らの園を目指して、ヴェーサーリーへと出発した。
そして、車が通れる所までは車で進み、その後、車から降りて徒歩で進み、覚者がいらっしゃる所を訪れた。訪れると、覚者を礼拝して傍らに座った。傍らに座った娼婦アンバパーリーに、覚者は説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせられた。
そのとき、娼婦アンバパーリーは、覚者の説法によって、教え示され、鼓舞され、感動させられ、喜ばせられて、覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、どうか明日、覚者は向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、わたしの食事をお受けください。」
そこで、覚者は黙ってそれに同意なさった。そして、娼婦アンバパーリーは、覚者が同意なさったのを知って、座を立って、覚者を礼拝し、右回りの礼をして去ったのである。
一五 また、ヴェーサーリーのリッチャヴィ族も、「覚者がヴェーサーリーに到着し、ヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまられたそうだ」と伝え聞いた。そこで、リッチャヴィ族は、多くの威風堂々とした車を用意させ、自らも威風堂々とした車の一つに乗り、多くの威風堂々とした車を伴い、ヴェーサーリーへと出発した。
あるリッチャヴィ族は、青く、青い色彩で、青い衣服で、青い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は、黄色く、黄色い色彩で、黄色い衣服で、黄色い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は、赤く、赤い色彩で、赤い衣服で、赤い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は白く、白い色彩で、白い衣服で、白い装飾品である。
一六 そして、娼婦アンバパーリーは、リッチャヴィ族の若者たちに、車軸と車軸、車輪と車輪、くびきとくびきを衝突させた。リッチャヴィ族は、娼婦アンバパーリーにこう言った。
「おい、アンバパーリー。なんで、リッチャヴィ族の若者たちに、車軸と車軸、車輪と車輪、くびきとくびきを衝突させたんだ。」
「お坊ちゃま方、それは、わたしが明日、覚者を向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、食事にご招待したからです。」
「おい、アンバパーリー。それなら、その食事を十万で譲ってくれ。」
「お坊ちゃま方、たとえヴェーサーリーに領土を付けてくださっても、このような偉大な食事は譲れません。」
そこで、彼らリッチャヴィ族は、指をパチンと鳴らした。
「ああ、友よ、我々はつまらん女【あま】に負けちまった。ああ、友よ、我々はつまらん女に一杯食わされちまった。」
そして、彼らリッチャヴィ族は、アンバパーリーの林へと出発したのである。
一七 そのとき、覚者は彼らリッチャヴィ族が遠くから来るのをご覧になった。ご覧になると、向煩悩滅尽多学男たちにこう告げた。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男たちで三十三天を見ていない者は、向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を見なさい。向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を何度も見なさい。向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を三十三天の集団であると把握しなさい。」
一八 そして、彼らリッチャヴィ族は、車が通れる所までは車で進み、その後、車から降りて徒歩で進み、覚者がいらっしゃる所を訪れた。訪れると、覚者を礼拝して傍らに座った。傍らに座った彼らリッチャヴィ族に、覚者は説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせられた。
そのとき、彼らリッチャヴィ族は、覚者の説法によって、教え示され、鼓舞され、感動させられ、喜ばせられて、覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、どうか明日、覚者は向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、わたしの食事をお受けください。」
「リッチャヴィ族よ、わたしは明日、娼婦アンバパーリーの食事で過ごすのです。」
そこで、彼らリッチャヴィ族は、指をパチンと鳴らした。
「ああ、友よ、我々はつまらん女【あま】に負けちまった。ああ、友よ、我々はつまらん女に一杯食わされちまった。」
こうして、彼らリッチャヴィ族は、覚者の説かれた教えに歓喜し、感謝して、座を立って、覚者を礼拝し、右回りの礼をして去ったのである。
一九 さて、娼婦アンバパーリーは、その夜が過ぎてから、極妙な硬い食べ物と軟らかい食べ物を、自らの園に用意させて、覚者に食事の用意ができたことをお告げした。
「尊師よ、お食事の時間です。用意が調いました。」
そこで、覚者は朝方、内衣を着け、衣鉢を持って、向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、その娼婦アンバパーリーの家に赴かれた。赴くと、設けられた座にお座りになった。そして、娼婦アンバパーリーは、覚者をはじめとする向煩悩滅尽多学男出家教団に、極妙な硬い食べ物と軟らかい食べ物を、自らの手で満足するまでおもてなし申し上げた。
さて、娼婦アンバパーリーは、覚者が食事を終えて、鉢から手を離されたとき、ある低い座を取って、傍らに座った。傍らに座って、娼婦アンバパーリーは覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、わたしはこの園を、覚者をはじめとする向煩悩滅尽多学男出家教団に施すつもりです。」
覚者はその園を受けられた。そこで、覚者は娼婦アンバパーリーに説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせて、座を立ってお帰りになったのである。
二〇 またここで、覚者はヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまり、向煩悩滅尽多学男たちに対して、この数々の法話をなさったのだ。
「戒とはこうである。サマディとはこうである。智慧とはこうである。戒に熟達させられたサマディには、大いなる果報と大いなる功徳がある。サマディに熟達させられた智慧には、大いなる果報と大いなる功徳がある。智慧に熟達させられた心は、諸々の漏から完全に離解脱する。すなわちそれは、欲漏・生存漏・見解漏・非神秘力漏からである」と。
「さあ、アーナンダよ、ヴェーサーリーを訪れよう。」
「かしこまりました、尊師よ。」
と、長老アーナンダは覚者にお応え申し上げた。そして、覚者は大きな向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、ヴェーサーリーに入られた。そこで、覚者はヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまられたのである。
一二 そのとき、覚者は向煩悩滅尽多学男たちに、次のようにお説きになった。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男は記憶修習【きおくしゅじゅう】し正智してとどまりなさい。これは、君たちに対するわたしたちの教戒である。
向煩悩滅尽多学男たちよ、それではどのようにして、向煩悩滅尽多学男は記憶修習するのであろうか。
向煩悩滅尽多学男たちよ、ここで向煩悩滅尽多学男は、身において身を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏【ちょうぶく】しなさい。
感覚において感覚を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
心において心を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
観念において観念を観察してとどまり、熱心に正智し記憶修習して、この世における渇望と憂いを調伏しなさい。
向煩悩滅尽多学男たちよ、このようにして、向煩悩滅尽多学男は記憶修習するのである。
一三 向煩悩滅尽多学男たちよ、それではどのようにして、向煩悩滅尽多学男は正智するのであろうか。
向煩悩滅尽多学男たちよ、ここで向煩悩滅尽多学男は、進むにも退くにも正智してなし、前を見るにも後を見るにも正智してなし、曲げるにも伸ばすにも正智してなし、正装衣や衣鉢【いはつ】を身に着けるにも正智してなし、食べるにも飲むにもかむにも味わうにも正智してなし、大便や小便をするにも正智してなし、行くにもとどまるにも座るにも眠るにも起きるにも話すにも黙っているにも正智してなす。
向煩悩滅尽多学男たちよ、このようにして、向煩悩滅尽多学男は正智するのである。
向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男は記憶修習し正智してとどまりなさい。これは、君たちに対するわたしたちの教戒である。」
一四 そのとき、娼婦【しょうふ】アンバパーリーは、「覚者がヴェーサーリーに到着し、ヴェーサーリーのわたしのマンゴー林にとどまられたそうだ」と伝え聞いた。そこで、娼婦アンバパーリーは、多くの威風堂々とした車を用意させ、自らも威風堂々とした車の一つに乗り、多くの威風堂々とした車を伴い、自らの園を目指して、ヴェーサーリーへと出発した。
そして、車が通れる所までは車で進み、その後、車から降りて徒歩で進み、覚者がいらっしゃる所を訪れた。訪れると、覚者を礼拝して傍らに座った。傍らに座った娼婦アンバパーリーに、覚者は説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせられた。
そのとき、娼婦アンバパーリーは、覚者の説法によって、教え示され、鼓舞され、感動させられ、喜ばせられて、覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、どうか明日、覚者は向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、わたしの食事をお受けください。」
そこで、覚者は黙ってそれに同意なさった。そして、娼婦アンバパーリーは、覚者が同意なさったのを知って、座を立って、覚者を礼拝し、右回りの礼をして去ったのである。
一五 また、ヴェーサーリーのリッチャヴィ族も、「覚者がヴェーサーリーに到着し、ヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまられたそうだ」と伝え聞いた。そこで、リッチャヴィ族は、多くの威風堂々とした車を用意させ、自らも威風堂々とした車の一つに乗り、多くの威風堂々とした車を伴い、ヴェーサーリーへと出発した。
あるリッチャヴィ族は、青く、青い色彩で、青い衣服で、青い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は、黄色く、黄色い色彩で、黄色い衣服で、黄色い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は、赤く、赤い色彩で、赤い衣服で、赤い装飾品であり、また、あるリッチャヴィ族は白く、白い色彩で、白い衣服で、白い装飾品である。
一六 そして、娼婦アンバパーリーは、リッチャヴィ族の若者たちに、車軸と車軸、車輪と車輪、くびきとくびきを衝突させた。リッチャヴィ族は、娼婦アンバパーリーにこう言った。
「おい、アンバパーリー。なんで、リッチャヴィ族の若者たちに、車軸と車軸、車輪と車輪、くびきとくびきを衝突させたんだ。」
「お坊ちゃま方、それは、わたしが明日、覚者を向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、食事にご招待したからです。」
「おい、アンバパーリー。それなら、その食事を十万で譲ってくれ。」
「お坊ちゃま方、たとえヴェーサーリーに領土を付けてくださっても、このような偉大な食事は譲れません。」
そこで、彼らリッチャヴィ族は、指をパチンと鳴らした。
「ああ、友よ、我々はつまらん女【あま】に負けちまった。ああ、友よ、我々はつまらん女に一杯食わされちまった。」
そして、彼らリッチャヴィ族は、アンバパーリーの林へと出発したのである。
一七 そのとき、覚者は彼らリッチャヴィ族が遠くから来るのをご覧になった。ご覧になると、向煩悩滅尽多学男たちにこう告げた。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、向煩悩滅尽多学男たちで三十三天を見ていない者は、向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を見なさい。向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を何度も見なさい。向煩悩滅尽多学男たちよ、リッチャヴィ族の集団を三十三天の集団であると把握しなさい。」
一八 そして、彼らリッチャヴィ族は、車が通れる所までは車で進み、その後、車から降りて徒歩で進み、覚者がいらっしゃる所を訪れた。訪れると、覚者を礼拝して傍らに座った。傍らに座った彼らリッチャヴィ族に、覚者は説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせられた。
そのとき、彼らリッチャヴィ族は、覚者の説法によって、教え示され、鼓舞され、感動させられ、喜ばせられて、覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、どうか明日、覚者は向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、わたしの食事をお受けください。」
「リッチャヴィ族よ、わたしは明日、娼婦アンバパーリーの食事で過ごすのです。」
そこで、彼らリッチャヴィ族は、指をパチンと鳴らした。
「ああ、友よ、我々はつまらん女【あま】に負けちまった。ああ、友よ、我々はつまらん女に一杯食わされちまった。」
こうして、彼らリッチャヴィ族は、覚者の説かれた教えに歓喜し、感謝して、座を立って、覚者を礼拝し、右回りの礼をして去ったのである。
一九 さて、娼婦アンバパーリーは、その夜が過ぎてから、極妙な硬い食べ物と軟らかい食べ物を、自らの園に用意させて、覚者に食事の用意ができたことをお告げした。
「尊師よ、お食事の時間です。用意が調いました。」
そこで、覚者は朝方、内衣を着け、衣鉢を持って、向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、その娼婦アンバパーリーの家に赴かれた。赴くと、設けられた座にお座りになった。そして、娼婦アンバパーリーは、覚者をはじめとする向煩悩滅尽多学男出家教団に、極妙な硬い食べ物と軟らかい食べ物を、自らの手で満足するまでおもてなし申し上げた。
さて、娼婦アンバパーリーは、覚者が食事を終えて、鉢から手を離されたとき、ある低い座を取って、傍らに座った。傍らに座って、娼婦アンバパーリーは覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、わたしはこの園を、覚者をはじめとする向煩悩滅尽多学男出家教団に施すつもりです。」
覚者はその園を受けられた。そこで、覚者は娼婦アンバパーリーに説法をして、教え示し、鼓舞し、感動させ、喜ばせて、座を立ってお帰りになったのである。
二〇 またここで、覚者はヴェーサーリーのアンバパーリーの林にとどまり、向煩悩滅尽多学男たちに対して、この数々の法話をなさったのだ。
「戒とはこうである。サマディとはこうである。智慧とはこうである。戒に熟達させられたサマディには、大いなる果報と大いなる功徳がある。サマディに熟達させられた智慧には、大いなる果報と大いなる功徳がある。智慧に熟達させられた心は、諸々の漏から完全に離解脱する。すなわちそれは、欲漏・生存漏・見解漏・非神秘力漏からである」と。