紺日わん倶楽部

日々の暮らしに彩りを

口切りの茶事

2013-11-30 | milmil
炉開きが終わり11月も中旬頃から下旬にかけて口切りの茶事が催される。
今年は幸せなことに11月に二か所程口切りの茶事にお招きいただいたので
心新たな気持ちでお出かけしてきました。
口切りの茶事は茶事の中でも最も格式がありお道具もそれに見合う様なお道具組がなされます。

今回伺ったひとつのところでは古瀬戸の茶壺でお出迎えがありました。
それは大変珍しい「祖母懐」という大きな壺でした。お稽古に使う茶壺の1.5倍ほどの大きさ。
(調べていくと名の由来は祖母懐という愛知県瀬戸市地名の様ですね)
14世紀頃の壺らしく添えられているオリジナルの口覆いは真綿が抱かれた金襴緞子の裂で馴染みのある口覆いではなくもっとふくよかでぷっくりとした覆い布でした。
今は金が酸化して鈍い色の発色で生地もすっかり朽ちていましたが往時は大名やお公家様の大事な壺だったことがしのばれます。

茶壺の口を切る瞬間がこの茶事のクライマックスの一つ。
葉茶じょうごが運び出され口を切った茶壺の中にはお濃茶3種と詰茶(薄茶葉)がびっしりと詰められています。入り日記を拝見しこの中からお客様相談の上どれかを所望する。
場合によっては諸事情考慮してご亭主様にお任せに致します。

参考の写真 実物とは違います。淡交社の本より掲載


別のところで
石臼で茶葉を挽かせていただいた。
一定のリズムで早すぎず遅すぎず。ごろごろごろ~左回りで。
客数にもよるが当日全員分のお濃茶を懐石の間に用意することはできないがこの音がごちそうとなる。
今では事前に用意したり市販のものを混ぜている場合が多いと聞く。


一人分でも石臼で挽くとなると大変な時間と手間がかかります。


上の部分を取ってきれいにしたところ

余談ですが
口切りの時に茶舗(詰め)から壺と一緒に何故柿と栗が届けられるようになったのでしょうか?
炉を開く頃、茶人のもとに茶壷を届ける道中実りの秋の山にはたくさんの柿や栗が実っています。
茶壷を届けるという仕事だけではなく、一緒に山の実りを茶人さんにも届けてあげたいと思う心からだそうです。
その心に応えて口切りの茶事でありがたく使わせていただき、茶事のお客様ともども感謝するというもてなしの心がここにもつながってるんですね。


頂いたお菓子 澤田屋製
干し柿の中に栗餡が詰められていて美味しくってお取り寄せしたいくらいです。

後座になると
床には 呼子鳥と満天星つつじ。窓から差し込む夕焼けのあかりに照らされてほんとに見事な彩りでした。 
壺には時代を感じる古紫の紐で真行草に組まれ荘りつけしてあります。これからお濃茶の始まりです。
席中は松風の音とお茶を練り上げる音のみ。お任せにしていたお濃茶の銘は?
「長松の昔」柳桜園詰。 「錦上の昔」かなと予想していたのですが外しました。(残念!)
石臼で挽いた直後のお茶は機械で挽いたほどには細かくないので茶葉が残っていたり泡立ちが悪くちょっと青臭い香りがするのですがこれも醍醐味のひとつでしょう。


濃茶席 
軸  寿 瑞気満高堂 鵬雲斉家元筆
   水指 青磁(酒海壺に似た形)   
   茶入 金華山  古瀬戸茶入    
   茶碗 古萩の井戸茶碗、 替は黒樂茶碗「閑居」 弘入作 
   炉縁 聚光院本堂古材
   茶杓 銘 州浜
   香炉 振り香炉(球体)(脇床につるしてあった)
お道具(備忘録まで。違っていたらゴメンナサイ 当日帰りの電車でしたためないとすっかり忘れてますね)  


薄茶席は立礼席に移動して。
点前座も炉仕様の立礼で珍しい~ ちゃんとお炭も入っていました。
なんだかほっとしたのは私だけでしょうか?
薄茶の時間になる頃には足が痛くなってちょっとしんどい。
薄茶は「江雲の白」

軸 赤富士の扇面 画賛

世界遺産登録でおめでた倍増! 薄茶席は長板の趣向で皆具総かざり、蒔絵棗に京焼の茶碗等華やかな雰囲気のお席でした。
 
 
参考写真 実際の席とは違います

今回懐石も椅子をご用意くださりほんとにありがたかったです。
 
参考写真 実際の席とは違います
ご高齢の方、正座に不慣れな若者や足がご不自由な人でもこの様に配慮して頂けると気軽にお茶事に参加できますね。
場合によっては風情がないとかお茶事の雰囲気を損なうなどのご意見もあるかと思いますが、
今後ますます椅子を使ったおもてなしが増えていくような気がします。

幸い好天に恵まれ、正客様の話題の豊かさとお人柄で席中はおごそかにも華やぎ楽しく茶の湯の正月を祝いできました。

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