ブルックリン横丁

ブルックリン在住17年の音楽ライター/歌詞対訳者=渡辺深雪の駄ブログ。 そろそろきちんと再開しますよ。

022:「MA$Eを取り逃す」の巻

2004-09-10 | ブルックリン横丁
今日は取材3連発。MASTA ACE→BEATNUTS→MA$Eという取り合わせ。MASTA ACEはブルックリンはブラウンズヴィル出身、マーリー・マール率いるジュース・クルーの一員として知られるNYヒップホップの15年選手、生き証人ですな。未だにブルックリン在住、アンダーグラウンドMCである義弟の部屋の一部を改造した仮設スタジオ(と言えば聞こえは良いが)に”レコーディング”しに来ていたという話を聞いてビックリしていた矢先、blastから「MASTA ACEの新作が非常に素晴らしいので取材をセットアップ出来ないか」というタイムリーな連絡が。いや、今なら上にいますけど、ってカンジで。で日を改めて近所のレストランでインタビュー。淡々と、的確な言葉で質問に応じるMASTA ACE。意外なことに日本には行ったことが無いそうな。2月にオーストラリアにツアーするのに合わせて日本でも是非公演したいそうなので、興味のある呼び屋の方は是非ご一報を。これまた意外なことに、本邦初となったMASTA ACEの素敵なインタビューは次々号のblastで。

大雨の影響で地下鉄の線路が水浸しになり、のろのろ運転にイライラしながらユニオン・スクエアに向かう。一時閉鎖していたがまたビジネス再開したペナルティのオフィスでBEATNUTSと対面。新作『MILK ME』はビートメイカーの良心を感じる好盤。JUJUの二の腕に鼻の穴が膨らみっぱなし。グレッグ・ナイス、フリーウェイ、Akonなんかが参加してます。これは10月末に発売のblowにて。同号ではアーティストの愛車拝見ページを拡大するようなので、現在そのセットアップに奔走中。BEATNUTSのサイコ・レスも愛車のキャデラックと共に登場してくれるそうなので乞うご期待。

そして今日の目玉、MA$Eの対面取材に向かいタクシーを走らせ57丁目のユニバーサルへ。担当女史には「時間通りに進んでいるので一刻も早く来い」と急かされ、雨の中頑張って来たというのにフタを開けてみりゃ1時間押し。ふざけんな!しかも電話取材中のUKのジャーナリストがかなりの愚問揃いだったらしく、MA$Eがかなりご立腹だとか。その時点で既に嫌な予感はしていたのだが、結局それから1時間以上も待たされた挙げ句「今日はもうMA$Eも疲れているし、良いインタビューにはならないと思うので仕切り直しさせてくれ」だって。ま、それならそれでも良いが、せめて顔合わせくらいは、ということでそこからまた30分くらい待たされてようやくご対面。あれ、牧師だからスーツとか着てんのかと思ったらバギーなジーンズにカラフルなシャツ、白のAFワンというカジュアルな出で立ち。レイバン風のサングラスを手にやたらスローモーに握手するMA$E。それにしてもボディガードの数多し。やっぱり元盟友のキャムロンとのビーフ云々…と邪推が止まらない。しかしMA$Eは例のニコニコ/ニヤニヤ顔で「もっとコンディションの良い時にきちんと取材がしたいんだ」と説明/言い訳。果たして次はあるのか?


021:「フォクシーとワイクレフが来た」の巻

2004-09-10 | ブルックリン横丁
Labor Day Weekendってことで3連休。フリーランスの身には何ら関係もないのだが。毎年9月の第1月曜日に行われるカリブ系移民のフェスティバル、通称「ウェスト・インディアン・パレード」がブルックリンのイースタン・パークウェイで盛大に。つーかウチは年がら年中カリビアンだらけなので今更、ってカンジですが。各国をレペゼンするトラックというか山車(フロートと呼ぶ)に数十台のスピーカーを積み上げて、レゲエやらソカやらカリプソやらを爆音で鳴らしながら練り歩く。自分の祖国のトラックの後ろについて国旗を振り回し、笛を吹いたりホーンを鳴らしたりしながらくっついて歩くのがお約束。数あるカリブ諸国の中でどこの国が一番「イキ」が良いか、ちょっとしたバトルにもなっててオモロいです。そういえば金曜日に取材した、ケヴィン・リトル人気を脅かすソカの若手実力派、Rupeeもバルバドス代表としてトラックに乗るぜ、と言っていたな。今年は見に行かなかったので誰がどの山車に乗っていたのかは知らないが、前にフージーズがハイチ代表のトラックの上でパフォームしててものすごい人気だったことを思い出した。ローリンのお腹が大きくてね~。あれは何年前の話だ?しみじみしちゃうな。ところでハイチ代表といえばワイクリフ、お祭り好きの彼は今年もやっぱり登場してたらしい。しかもレペゼン・トリニダッドでこのフェスティバルも常連のフォクシー・ブラウンが祭りの後にワイクリフを地元のブロックに招待してたみたいで、何か外が騒がしいなと思ったら何とウチの前に二人がいた。外で遊んでいた息子の太陽はフォクシーに「パパに会わせたい人がいるから呼んどいで」と言われパシリ状態。夏風邪で寝込んでいた旦那はワケも分からず外に出るとそこにはハイチの国旗をまとったワイクリフが。別に英語で話しゃあいいのに今日はやっぱりカリブの血が騒ぐらしく、わざわざクレオール語(ハイチ語のこと)で会話するワイクリフと旦那。数ヶ月前にフォクシーがいきなりうちにやって来て、「今回クレフにプロデュースしてもらった曲で、言われた通りにクレオール語でラップしたんだけど自分が何言ってるのかわからないのも気持ちが悪いので訳してくれ」と言いながら、ずかずかとヒトのステレオでその曲を爆音でかけ旦那に訳させたこともあった。彼女はいつも前フリも無く突発的に行動するね。それから毎年のことなのだが、9/6はフォクシーの誕生日であり、うちの義姉の誕生日でもある。まぁだいたい毎年この祭りの時期と誕生日とがブチ当たり、ただでさえブロックの人通りは激しく、しかも彼女達は同じブロックで育った幼なじみ同士ということで、毎年この日は彼女達はお互いにお互いの家の前を「表敬訪問」し、デカい声でバースデー・ソングを歌っている。今年はそれにワイクリフが加わってさらに騒がしかった…。ま、ある意味豪華かもしれないが。写真でも撮っときゃ良かったね。

020:「ジャ・ルールとアシャンティ」の巻

2004-09-10 | ブルックリン横丁
引き続き天気もよく素晴らしい初秋のNY。
共和党全国大会も終焉を迎えホっとしてます。なんせ34丁目付近は歩道と車道の間がブロックされていて
タクシーなんか捕まえられなかったし。NYPD史上最多の1万人という警備を配したマンハッタンはいやにものものしかった。

そんな中行われたジャ・ルールとアシャンティのダブル取材。マーダー・インク改めインクのオフィス(と言ってもデフジャムやロカフェラと同じビルだけど)にて。
まず二人の新作から6曲ずつリスニング。アシャンティのファースト・シングル「Only U」はかなりの変化球。これが吉と出るか凶と出るかはリリース後のお楽しみ。
ジャもなかなかに気合いが入ってますよ(そりゃそうだ)。R・ケリーとアシャンティをフィーチャーした「Wonderful」は素晴らしい。あとFat JoeとJadakissと組んだ「New York」はアグレッシヴなリリック。思わず「これって特定の誰かに向けてラップしたの?」と訊いたら「50セントとああいうことがあってからは何を言ってもそういう推測をされちまうんだよな」と苦笑された。彼自身は50とのビーフよりも、現在も続くFBIの捜査の件(インクの活動資金源としてドラッグ・ディーラーとのやり取りやマネー・ロンダリングの疑いをかけられている)の方が「リアル」で大変だと言っていた。しかし概ねご機嫌、嵐が過ぎた後のようなさっぱりした顔してました。アーヴ・ゴッティと共に洋服ブランド「ervingeoffrey(アーヴィンジェフリー)」も始動させたそう。デニムやキャップ、Tシャツなどの基本アイテムはシンプルなロゴと絶妙のカラーリングでなかなかのセンス。本人が穿いていたデニムの色落ち加減も「わかってらっしゃる」感じよ。レディーズものも今後展開するみたい。我々取材陣にもお土産として自らサンプルを配る心意気。きちっとテーブルの上にうやうやしくディスプレイなんかするあたり、意外に仕事に細かいジャ・ルール。日本のディストリビューターも既に決まっているとかでもうすぐ日本でも購入可能になるでしょう。

そしてアシャンティ、オレンジ・ブラウンのウェーブ・ヘアにイメチェン。このヒトは会う度にキレイになっていくね。シャインのファースト・シングル「Jimmy Choo」にフィーチャーされている彼女はビデオ撮影の時も主役のシャインが不在ながら一人で良い仕事してます。あの曲をやった後、塀の中のシャインからJimmy Chooの靴がプレゼントとして贈られてきたという目頭の熱くなるようなエピソードも。アルバムのことはここでは多くを語らないことにしよう。コンセプトは「ニュー・ルック」、だそうです。乞うご期待~!

019:「反共和党デモ行進:彼らの場合」の巻

2004-09-10 | ブルックリン横丁
台風の接近よりもNYを騒ぎのるつぼに陥れているのが共和党の全国大会@マディソン・スクエア・ガーデン。日本のメディアでもかなり報道されているのでは?言うまでもなくここNYでツイン・タワーが崩壊し、イラクで沢山の若者や子供達が犠牲になり、世界は温暖化の影響で異常気象が続いている。極論を言えばその一端を担っているとも言えるブッシュ政権。反ブッシュ派の市民は挙ってプロテストをし、ニュースではNYPDに取り押さえられたり逮捕されたりする一般市民の姿が大写し。

そんなアツいNYの週末、ウチらは呑気に庭でBBQをした。通り向かいに住む3兄弟、上からチューマ、チー、カイも遊びに来て大賑わい。彼らの母親であるアキムは黒人と中国人のハーフ。彼女が若い頃感じた民族的意識や自我の問題なんかについての体験談はまるで太陽の将来のようで興味深い。アキムの母親は中国人だから、家庭の手料理といえば中華だったそう。黒人って肌の乾燥を極度に嫌って新生児にでもべったべたにベビー・オイルを塗ったくったりしてるんだけど、もちろんワシにはそんな文化はないのでうちの太陽の肌は割とマットでたまに粉を吹いてたりするんだが、そのことをアキムに言ったら彼女も独り立ちするまでは粉を吹いてたそうだ。

ところでBBQもたけなわな頃にふと話題は共和党の全国大会に反対するデモ行進の話に移った。
ウッドストックとかベトナム反戦運動とか、60~70年代のカウンター・カルチャーに憧れたこともあったワシ、「プロテストの行進に参加してみたい気もする」と発言。(ワイングラス片手にそんなこと言っても説得力ないんだけど。)するとアキムの旦那の黒人弁護士レジーは一言こう放った。「プロテストしても逮捕されるだけですむのが白人。俺らの場合は警棒でボコボコにされてしまいに撃たれるのがオチだし。」ほほぅ。なるほどニュースを見てもヘラヘラ笑いながら逮捕されたり、セミ・ヌード姿を曝したりしてる女子大生とかってみんな白人だわな。彼らにしてみれば「理由あっての反抗」ってことでちょっとしたヒーロー/ヒロイン気分、もしくはお祭り感覚なのかもしれん。ワシも気分的にはそうかも。だけど肌の色が違うだけでこんなにも捉え方が違うとはね。TVに映るデモ参加市民がみな白人ばっかだからって、「ほらまた黒人は政治参加意欲が薄くてダメじゃん」とか思っちゃ駄目なのね。ま、そういうヤツらもいることはいるが。俗に“コンシャス”と呼ばれる黒人たちの話についてはまた今度…。色々ありますわな。

018:「ダメ主婦の告白」の巻

2004-09-10 | ブルックリン横丁
ここのところ気持ちの良い天気が続くNY、天井が抜けた居間の修復工事もほぼ完了、朝の8時きっかりに現れ黙々と仕事するアミーゴ達との奇妙な共同生活もそろそろおしまい。それはそれで寂しいものがあるな。あまりにもシーンとしながら仕事してるんでラジカセ貸してあげたら次の日からマイCD持参で一日中歌いながら活き活きと働くアミーゴ達なのであった。私も負けじと(闘ってどうする)隣の寝室からニューヨリカン・ファンクやラテン・ジャズのCDをガンガンにかけて彼らの労働意欲を刺激する。しかしワシのスペイン語はほぼ通じず。NYCに限って言えばスペイン語圏の人口が英語圏のそれを上回ったというこのご時世、太陽が大人になる頃には英語とスペイン語はフツーに話せてなきゃならんのだろうね。

それにしても8/11にNYに戻って以来ただの一度も炊事というものをしていない。キッチンが居間の一部になっているので仕方なく出前&外食ライフをエンジョイしていたのだが毎日ともなると嫌だね。それでなくとも里帰りで全く家事っちゅう家事を母親とチェロ奏者Aちゃん任せにしていたので(子育ても含め)、ほぼ2ヶ月ほど主婦休業状態。わはははは。