ブルックリン横丁

ブルックリン在住17年の音楽ライター/歌詞対訳者=渡辺深雪の駄ブログ。 そろそろきちんと再開しますよ。

025:「新学期と乞食」

2004-09-13 | ブルックリン横丁
今日から新学期スタート。去年は午後1時~6時というスケジュールで幼稚園に通っていた息子の太陽も今日からはしっかり9時登校。公立のように給食があるわけではないので8時に起きて弁当を作る。弁当箱はアバレンジャー、ランチボックスの代わりにKINOKUNIYAの手提げ。「そんなランチボックスは邪道だ」と突っ込まれる。うるせぇ。昨晩遅くまで旦那と酒盛りしていたので辛い。しかし考えてみれば毎朝そんな時間に起床するのは高校以来。大学は午後からのクラスばっかり履修してたし、会社員時代も朝は遅かった。この先やっていけるのだろうか。

そんな慌ただしい中玄関のベルが鳴った。マイメンのアミーゴかと思いきやドアの前に立っていたのは片目が潰れて歯が1本しかないのにスーツを着た変なオヤジ。どっかで見たことがある。旦那を出せ、と朝から声でかい。「シャワー浴びてるから待ってろ」と言うと「じゃあ紅茶を一杯もらおうか」とヌカす。もちろん無視。早速風呂場の旦那にチクってキッチンで弁当作りを続ける。聞けばそいつはちょっと前までベッドスタイの家の改築を手伝っていた大工のオヤジだった。しかしウチらが忙しくて現場監督に行けないあいだ、勝手に合鍵を作って近所のクラック中毒のオンナを連れ込んだり、枕を持参して昼寝したり、しまいにゃ「腹を壊した」とか言ってまだ下水溝とつながっていないトイレでうんこして地下室を人糞まみれにしたりと散々ヒトんちを荒らしやがったニクい奴だったのだ。即刻クビにして鍵を変えたのが2週間前。日雇いで払ったカネも全て使い果たしたらしく、一文無しになって今朝ウチに物乞いに来たのだ。ジャマイカからイギリスに移民してNYに流れついたというそいつはいつでも英国紳士を気取っている。(だからスーツに紅茶なわけだ。)ポケットから「これが処方箋だ」と言ってしわくちゃの紙切れを取り出し、「医者に言われたクスリも買えない。40ドルくれ」とセビる。地下室の人糞事件のショックが癒えない旦那は無論相手にしない。すると「このままじゃ家にも帰れないからせめて1ドルくれ」だって。そもそも地下鉄だって片道2ドルだし、どのみちそんな台詞はそいつの悪知恵に違いないのだが、もともと判官びいきの傾向が強い旦那は「月曜朝8時からこれかよ…」とブツブツ言いながら小銭で1ドルあげていた。そしてよしゃいいのに「これから俺に用事がある時はもうここには来るな、用があるなら電話しろ」と既に5回は渡した会社の名刺をまたあげていた。そいつは最後に「うんこのことは悪かったね」と言って立ち去っていった。はぁ。世の中には色々なヒトがいますな。