DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

道(26)

2015-12-21 14:11:24 | ButsuButsu


モンゴル最大の淡水湖、フブスグル湖に、ハラ・ウスという小さな川がある。

毎年6月になると、湖から大量の魚が産卵のためにこの川を遡上してくる。

フブスグル湖の春は遅い。

冬の間に厚く張った湖面の氷が溶け始めるのは、5月も中旬を過ぎてからである。

まず、暖まりやすい湖岸の氷が溶け出し、やがて湖心まで広がる。

そして一気に春から夏へと向かうのだ。

すべての動植物が生き生きと覚醒し、子孫を残そうと懸命に活動を開始する。

モンゴルではハリウスと呼ばれる魚が、ハラ・ウス河口にある内湖に殺到するのもこの時期である。

そこにはおびただしいほどの魚影が確認される。

学名はThymallus arcticus baicalensisといい、マス科の魚である。

13種類の魚が確認されているフブスグル湖で、ハラ・ウス河口に集まるのはハリウスだけだそうだ。

標高2000m近くの水温が低い河川に生息している。

河床の石に付着した昆虫などを食べる。

大きなハリウスは、小魚や水辺に近づくリスなどの小動物を襲って食べることもある。

皆が空腹を満たそうとして狂気と化す春先には、思いもかけないことが起こる。

モンゴルの厳しい冬、十分な餌に恵まれなかった牛が、ハリウスを食べることがあるのだそうだ。

魚を食べる牛。

ミネラルが乏しいと言われるモンゴルの大地で、魚を食することによって、したたかに生き抜こうとする家畜たちの生存戦略を見る気がする。

地球温暖化の影響で、フブスグル湖の環境も大きく変わろうとしている。

凍土が溶けだし、多くの溶存有機物が湖に供給される。

そのことが湖の生産を高めている。

餌を求めて河口や地下水の噴出口に群がる魚。

こうして過剰に増えたハリウスが、競うようにハラ・ウスの川を遡上する。

自然の摂理が狂いだした瞬間。

琵琶湖の4倍の面積と、14倍の容積を持つ神秘な湖フブスグル湖で、何かが少しずつ変わりつつある。


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