ガラパゴス通信リターンズ

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血液型は何ですか?

2006-01-16 06:12:50 | Weblog
 ある心理学者から聞いた話である。ドイツでの生活が長く、80年代の半ばに日本に帰ってきたその先生は、日本の学生たちが「君(あなた)の血液型は何ですか?」という話をあいさつがわりにしていることに驚いた。ドイツでは血液型が話題になることなどない。どうしてこんな非科学的な話題にこの国の若者は熱中するのか。不思議でならなかったと彼は言っていた。

 血液型というが、ABOは赤血球の型に過ぎない。白血球の型はHLA(ヒト白血球型抗原)というのが別にある。HLAが合致することが骨髄移植を行う条件である。ABOは不一致でもかまわない。ぼくも兄の骨髄をもらって、AB型からB型に血液型が変わった。ABOは変わることはあってもHLAは変えようがない。何故ABOの話ばかりをするのだろうか。

 HLAが合致する人は、いまは遠く離れていても、大昔に親族であった可能性が高い。日本人がアメリカの骨髄バンクに登録して見つかるドナーには、東アジア系の人が多いというのもうなずける。だが完全な白人や黒人と合致することも稀にあるという。「純粋な人種」など実は存在せず、人類の歴史がたえざる混血の過程であることを物語るエピソードだ。

 ぼくはAB型からB型に変わった。移植を境にぼくの性格は激変したのだろうか。ABO性格判断は眉唾だ。ところがHLAと性格の間には極めて強い相関がありそうだ。HLAが同じ人は、昔同じところに住んでいた。兄弟同胞だったといってもよい。HLAは兄弟の間では高い確率で合致する。兄弟の性格は似ていることが多い。血は水よりも濃いというのは、このことである。

 入院中「HLA性格占い」という本を書くことを考えた。科学的根拠があるのだ。ベストセラー間違いなしである。しかしこの野望はすぐに挫折した。HLAの表現は複雑で素人には何が何だかよく分からない。HLAのパターンはいくつあるのか。すべて網羅すれば電話帳、いや百科事典ほどのヴォリュームになるのではないか。一攫千金の夢は絶たれた。残念無念。だから、ぼくはいまもこうして教師稼業を続けている。