ガラパゴス通信リターンズ

3文社会学者の駄文サイト。故あってお引越しです。今後ともよろしく。

音姫

2006-01-13 07:55:17 | Weblog
 子どもの頃、学校のトイレでウンコができなかったという記憶をもつ人は多いのではないだろうか。「花子さん」をはじめトイレにまつわる「学校都市伝説」は枚挙に暇がないほどである。学校のトイレは子どもたちにとって「臭い・汚い・怖い」場所だった。そんな過去への反省から、学校のトイレを子どもたちにとって快適な場所に変えようという親や教師の取り組みがさかんである。トイレをテーマに卒論を書く学生も増えている。

 京子さんもそんな一人である。ホテルやデパートなどで驚くほどゴージャスなトイレが増えた。女性は消費者として大きな力をもっている。女性の顧客を大切にするのは当然のことだ。トイレといえどもおざなりにはできない。ここで京子さんは考える。ゴージャスなトイレの出現は、排泄という行為が市民権を得た結果だろうか。それともゴージャスにすることで、ウンコやおしっこをする場所というトイレの本質を隠蔽しているのだろうか。

 京子さんは「何故日本の女性だけが、水を流しておしっこの音を消そうとするのか」という問いをたてていた。女性たちは、自分が排泄とは無縁の存在であるとみられたいと念じている。だから汲み取り便所の時代から日本女性は、千代紙を落とすなどしておしっこの音を極力消そうとしていた。最近では、「音姫」という消音機器も普及している。しかし「いまおしっこをしています」と宣言しているようだと、「音姫」は学生たちに不評だった。

 京子さんは一生懸命に調べたが、日本女性がいつから水を流しておしっこの音を消すようになったのかをつきとめることはできなかった。ぼくは一つの仮説をもっている。その起源は日本女性の水洗便所との出会いにある。汲み取り式便所に比べて和式の水洗便所は放尿の音がものすごい。びっくりした女性が、反射的に水を流して音を消そうとしたのが始まりではなかったのか。よくできた仮説だと思ったが学生たちの賛同は得られなかった。