株式相場が大きく値下がりしているようだ。日経平均株価を見ると、今日(2月28日)昼すぎの時点で、1月31日から約3100円、2月20日から約2800円の値下がりになっている。株価が下がった最大の要因は新型コロナウイルスの感染拡大なのだろう。
このウイルスに感染している人が最初に見つかったのは中国の武漢だと言われているが、ここは生産活動の重要な拠点のひとつで、中国経済に対する影響は小さくない。
中国に経済的な攻撃を仕掛けていたアメリカ政府やそうした政策の支持者の中には武漢での病気蔓延を見て喜ぶ人もいたようだが、グローバル化が推進される中、中国での生産麻痺は世界へ波及する。ジャーナリストのF. ウイリアム・イングダールによると、アメリカで使われている医薬品の約80%は中国で製造されているのだという。中国の生産活動が麻痺するとアメリカは自国の病気に対処できないことになる。
本ブログでは何度も書いたことだが、アメリカは1970年代から製造業が国外へ出はじめた。そのひとつの結果が自動車産業の象徴的な存在だったデトロイトの衰退である。
バラク・オバマはアメリカ大統領だった2011年2月、アップルのCEOを務めていたスティーブン・ジョブスに対し、同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけている。が、ジョブスはアメリカへ戻ることはないと断っている。
ジョブスによると、中国では必要な組立工やエンジニアを集めることが容易。しかも生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実しているうえ、労働者の技術水準が高いからだという。アメリカでは公教育が破壊され、生産の現場で働く人びとの水準が低下しているという。日本も似たような情況だと言われている。
こうした経済構造ができあがっているにもかかわらず中国に経済戦争を仕掛けているのがアメリカ。1991年12月にソ連が消滅するとネオコンは国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇プランを作成している。その中心になったのが国防次官だったポール・ウォルフォウィッツ。
ソ連消滅後の潜在的なライバルである西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアを押さえ込み、力の源泉であるエネルギー資源を支配してアメリカ主導の新秩序を築き上げようというわけだ。中でも警戒していたのが中国である。「東アジア重視」とはそういうことにほかならない。
ソ連が解体されて残った核がロシアだと言えるだろう。そのロシアは西側資本の傀儡だったボリス・エリツィンが大統領として君臨、西側がロシアの富を略奪する手助けをする。クレムリンには腐敗グループが形成されたが、その中心にいたのはエリツィンの娘であるタチアナだ。当時のロシアは西側資本の属国と化していた。
21世紀に入ってそのロシアにウラジミル・プーチンが登場、不十分ながら再独立に成功するのだが、中国は新自由主義の国。新自由主義の教祖的な存在であるシカゴ大学のミルトン・フリードマンが1980年に中国を訪問して新自由主義、つまりレッセフェール流の資本主義路線を採用させた。ミルトン・フリードマンは1988年に妻のローザとともに中国を再び訪れ、趙紫陽や江沢民と会談している。また中国からは多くの若者が留学生としてアメリカへ渡り、その新自由主義的な考え方をイデオロギーをたたき込まれることになる。
こうした情況を作り上げたということもあり、アメリカは中国をコントロールできていると考えていたのだが、2014年のバラク・オバマ政権による暴力的な政策が状況を一変させた。この年の9月から12月まで香港でアメリカとイギリスは「佔領行動(雨傘運動)」を引き起こして北京を揺さぶり、オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行し、中東ではダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を売り出している。その内容は本ブログで書いてきたことなので、今回は割愛する。
ウクライナでクーデターを仕掛けて理由のひとつは、EUとロシアを結びつけつつあった天然ガスのパイプランがそこを通っているからだ。ウクライナに傀儡体制を築いてエネルギー資源の輸送をアメリカがコントロール、EUのアメリカ依存を強め、ロシアからマーケットを奪って経済破綻させようとしたのだが、ロシアは中国と手を組んだ。こうした展開はアメリカ支配層の想定外だったようだ。
ロシアと中国は戦略的な同盟関係に入ったとされているが、この事実を受け止められない西側の人びとは早晩分裂すると主張している。中露は関係を強めるため、両国をつなぐパイプライン、道路、鉄道などで結びつけ、経済交流を盛んにし、通貨のドル離れも推進、中国が進めている「一帯一路(BRIとも表記)」とロシアのプランは一体化させつつある。中国とロシアは分裂すると西側で唱えられている間に中国やロシアでは両国の関係を強めるための手を打っている。
アメリカの支配層にとって中国とロシア/ソ連の同盟は悪夢。ニキータ・フルシチョフがソ連の書記長だった時代に中国とソ連は激しく対立するようになるが、その再現を願っている人もいる。
中ソ対立の中、1972年2月にリチャード・ニクソンが中国を訪問して米中の国交回復を実現。その裏ではヘンリー・キッシンジャーは秘密裏に動いていたのだが、これは単にアメリカと中国とが関係を改善することが目的ではなく、中国をアメリカ側へ引き寄せ、中国とソ連との関係を冷やそうとしていたのだろう。こうして築いたアメリカと中国との関係をオバマ政権のネオコンは破壊したとも言える。