「地下道の少女」(原題:FLICKAN UNDER GATAN)アンデシュ・ルースルンド/ヘルストレム・ベリア(スウェーデン)2019/2 読了 ☆☆☆☆☆
ストックホルムの中心部にゴミのように捨てられた四十三人の外国人の子供と、病院の地下通路で発見された顔を損壊された女性の死体。ふたつの難事件の幕開けから終盤まで細切れに読みながらも、時制と場面の小気味よい展開が緊張感をラストまで持続させてくれた。ルーマニアから送られてきたストリートチルドレン、ストックホルムの地下道で暮らすストレートチルドレン。豊かな高福祉社会というイメージを保っているスウェーデンはストリートチルドレンに関する統計はない。保護者がホームレスでないかぎり、その子どもはホームレスとみなされないからだ。
主人公の57歳の警部や部下たちの人物造形も魅力的、また元同僚で27年介護生活して重体の警部の妻とのエピソードも泣かせる。いずれにしても社会的弱者を描いた物語として今年NO1候補の面白さ。
「次の人、どうぞ!」酒井順子 2019/1読む