Ashe店長のテニスショップ業務連絡

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勝利至上主義はスポーツの価値を貶める。ルールは何のためにあるのか?(チチパスのトイレットブレーク問題)

2021年09月07日 | ひとりごと

開催中のUS OPEN男子シングルス1回戦でフルセットの末に敗れたマレーによる、対戦相手のチチパスが第4セット終了後8分以上に及ぶ長いトイレットブレークをとったことに対する批判が話題になっています。

「彼に対する敬意をなくした」
「ナンセンスだ。彼自身そのことをわかっているはずだ」
「試合後にマレーが不快感を抱いていることを伝えられた23歳のチチパスは、「もし彼が僕に言いたいことがあるなら、2人で話して何がよくなかったのか理解する必要がある。僕は自分がルールに違反したとは思わない」と答えた。」
「マレーがチチパスの長いトイレットブレークによる遅延行為を批判「ナンセンスだ」( テニスマガジンONLINE)

「僕はルール通りにやっただけで、破っていない。ルールの中にトイレブレークでトイレで過ごす時間について何も書かれていない。あの時間は重要なんだ。何よりも汗で重たくなったウェアを着替えて軽くなる。フレッシュになり、汗が体中から滴り落ちることがなくなる。気分がよくなるんだ。僕にとっては重要な時間だけど、必要ない選手もいるだろう。どの選手にも自分の時間を取ることができる。僕はできるだけ急いで戻るようにしている。たまにちょっと時間が必要になることがある。それだけさ」
「もし僕がルールを破ったら、自分が悪い。自分の過ちを認めるしかない。でも、ルールを守っているなら何が問題なんだ?」
「僕はこれまですべてをルール通りにやってきた。もししていなかったら、罰せられるはずだ。それには完全に同意する。自分が間違いを犯したのなら、罰金なりが課せられてしかるべきだ。でも、僕がやっているのは必要なことで、試合中に必要なこと」
「「僕にはトイレブレークが必要。ルールを守っているのに何が悪い?」2回戦後、記者に反論するチチパス」( テニスマガジンONLINE)


マレーはルール違反を指摘しているのではなく、「リスペクトがなくなった」と発言しています。
自分が負けた腹いせも混ざっているとはいえ、世界3位がセコいことするなよと言いたいのでしょう。
一方チチパスはルールの範囲で勝つために最善の戦略をとって何が悪いという考えなので、議論がかみ合わないのだと思います。

グランドスラムタイトルも取っていないチチパスにしてみれば自分はまだチャレンジャーで、何が何でも勝つことが大事な立場でしかないと考えているのかもしれませんが、マレーに言わせれば、彼がフェデラーやナダル、ジョコビッチのようなレジェンドを目指しているのなら志が低すぎて話にならないということなのでしょう。

チチパスがもう少し経験を積み、タイトルを重ねてマレーも含めたBIG4クラスの選手に近づけば、自分が批判されていることの意味がわかるようになるかもしれませんし、そこまで偉大な選手になれず、その意味がわからないまま選手寿命を終えるかもしれません。
それも今後の彼の成長次第でしょう。

確かにトイレットブレークの厳密な時間は規則では定められていません
だからといってそれを逆手に取り、戦略的に使うことがあからさまな事例が増えているとすれば、対応策として時間をルールに明記するしかなくなってしまいます。
そもそも性善説に基づいて作られた規則が選手達自身の振る舞いによってないがしろにされ、結局規則そのものを変更するはめになってしまう。
自分達でルールにがんじがらめにされる状況を招いてしまうのは残念なことです。

「あまりにも曖昧よ。テニスのはっきりしないルールのひとつだわ。アンディが不平を述べているのはそのことについてなのよ」
「全米テニス協会(USTA)はプレーのリズムは「我々のスポーツでは重要な問題」であるとし、トイレ休憩や着替え休憩などゲームの公平性と完全性を確保できるルールの調整を引き続き検討すると表明した。」
「ATP(男子プロテニス協会)が運営する男子ツアーではトイレ休憩とメディカルタイムアウトを管理するルールに関する見直しがここ何ヵ月に集中して取り組んでいる分野であると述べ、それを現在進行中の仕事だと呼んだ。WTA(女子テニス協会)が運営する女子ツアーは試合中のトイレ休憩を2回から1回に変えたことに言及し、「他のルールと同じように、WTAは常にオープンな会話の機会を持って変更が必要なときには規則を改訂しています」と説明した。」
「フラッシングメドウで論争を巻き起こしたテニスのトイレ休憩問題、暗黙のルールは存在するのか? 」( テニスマガジンONLINE)

ただし別の問題として、チチパスに関してはブレーク中にメールでコーチングを受けていたのではないかという疑惑もあります。

「選手は皆、気付いている。彼は世界ナンバー3の選手だ。テニス界のトップ選手なんだ。その力があるのだから、そういうことをする必要がない。このような問題はジュニア、フューチャーズ、チャレンジャーなどの大会で起こるもの。世界トップ3の選手に起きてはいけない問題だ」
「あの試合でステファノスは10分以上コートを離れた。彼の父は彼の携帯にメッセージを送っていた。それから完全に彼の戦術は変わった。僕だけじゃなく、皆が目撃した。ゲームが完全に変わったんだ。何か魔法がかかった場所に行っているのか、そこでコミュニケーションを取っている」
「チチパスはシンシナティのトイレブレークで父からのメールを見ていた」1回戦突破のズベレフ」( テニスマガジンONLINE)

ズベレフの発言が事実なら、これについては現状でも完全なルール違反である以上明らかにされるべきですし、チチパスも濡れ衣だと主張するなら、自身の名誉のためにも潔白を証明した方がよいでしょう。
スマホを持っていくこと自体が怪しまれる行為なのですから、コートに置いていけばいいだけのことで、そこをチェックしない審判にも責任があります。
そんなことまでいちいち調べないといけないのはプロとして情けない限りではありますが…。

私自身、ルールの範囲なら何をやっても勝てばいいというような考えに辟易するようになったのは自身が現役を離れてからでした。
勝つことで報酬を得られるプロスポーツの世界では尚更そうなるのは理解しますが、勝ち負けだけに価値を求めるのはいい加減やめにしないと、競技スポーツの意義そのものがこれ以上高まることもなくなってしまうように思います。
勝利至上主義はメリットよりも弊害の方が大きくなっている現状をスポーツ関係者自身が真剣に考える時期にきているのではないでしょうか。

※9/7追記
「 女子テニスでも同じようなことがたくさん起きている。ゲームスマンシップの問題かな。間違いなくルールの改正が必要だと思う。小さな変更は結構頻繁に行っている。例えば、ウォームアップの時間が1分短くなった。でも、誰かがトイレに9分間籠っても何も言われない。細かいところで改善すべき点はたくさんある。今は大きな話題となり、さらに人々に注目されると思う。これをきっかけにゲームスマンシップが少し変わるかもしれない」 「試合中にコートから7、8分も離れるべきじゃないと思う。その行為は試合の流れを完全に変えてしまう。着替えるだけなのに、何を変えているの? 何をしているの? 数年前、女子はトイレブレークが3分以内と定められていたと思う。汗で濡れたスポーツブラを交換するのは、凄く大変なの。あなたは変えたことがないと思うけど、5分は必要だと思う。でも6~9分もかけていたら、そこで何をしているの?となる。助けが必要なの? 私が助けてあげようか? 何をしているの? そこが論点だと思う、ゲームスマンシップの問題だから」
「「8分もトイレで何をしているの?」トイレブレークに時間制限を設けるべきというスティーブンス」 ( テニスマガジンONLINE)

「彼は別に悪いことはやっていない。規則が間違っているんだ」