ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

生臭くない魚料理を作る方法

2014-10-23 13:13:35 | 唐桑日記
「この魚、全く生臭くないね!」
魚料理を褒められる時に
だいたいそう言われます。

それくらい
「魚って生臭いもんなんだ」
っていうのが一般的な認識なんだと
思います。

最近「魚って生臭いんだけど、
どうやって料理したらいいの?」
って続けて聞かれたので、
僕なりの答えを書いておきます。

だいたい料理をしている時に聞かれるので
「愛情!」ってごまかしていましたが
整理しようと思いました,なんとなく。

長いので気をつけてください笑。



「生臭くない魚料理をつくる方法。」

まず、一番大切な事は
海をきれいにすることです。
でっかいことを言っているようですが
海が汚れたらラブイズオーバー。
悲しいけれど終わりにしよう。
きりがないからー。って感じです。

基本的に生臭さくなった
魚の匂いはとれません。
臭みを取り除くっていうことは
腐ったりんごを腐る前に戻すみたいなことです。


料理は女性のお化粧みたいなものです。
スパイスや薬味をつけたり、
塩付けにして水分とともに
臭みを抜いたりして、
ごまかしは効きますが、
素材の良さを超えることはないです。

素材の良さが料理で超えられるならば、
マグロだけに初競りで何百万円も
払うことはしないはずです。

女性が美しくなるためには
化粧を覚えるよりも、
好きな人と一緒にいたり、
美味しいものを食べたり,
奇麗な景色を見て笑ったり、
呼吸を整えたり運動したり。
愛されたりすることの方が
大切だと思います。

魚も同じで、
どんな風に料理するのかよりも
どんな海で泳いで、
何を食べているか、
誰かに愛されているのか、
って言う事の方が重要です。

鮮度がばりばり良くても、
食べているものの匂いや、
(養殖のカンパチなどは
エサの匂いでわかります。
鯛の養殖はそれを防ぐために
お茶の葉をエサで与えている
ところもあります。)
海に浮いている油の匂い、
それが魚に染み込んでしまうと
もうどうしようもありません。

タバコを吸わない人が
吸っている人とキスをすると
匂いがわかるみたいな感じです。
身体の内部に染み付いた匂いは
なかなかとれません。


だから魚の生臭さを取り除くには
海をきれいにするのが結局は
近道なんだと思います。


そしてふたつめは、釣った後
その魚がどれだけ愛されたか。
で生臭さは変って来ます。


港に届くまでの管理、
届いてからの競りまでの環境、
市場に並んでいるときの状態。
買ってからスーパーなどに
届くまでの輸送方法。

漁,輸送,競り,市場,輸送,小売り
または加工(さばく、冷凍など)、
大きくわけても魚を釣ってから
食べるまでに6工程もあって、
それぞれのプロが
「どうしたらうまい魚を届けられるか」
っていう魚への愛がないと
魚はすぐに臭みが出てしまいます。

弟にかかりっきりなママに
わがまま言いたくなる
お姉ちゃんくらい魚は繊細です。

例えば鯵を50本,発泡スチロールに
つめたとして,下の魚は
上の魚の重みで鮮度が落ちること
もあります。
市場では魚を並べる時に
お腹を手前に、頭を左向きに置きます。
下になってるほうを下身、
上を上身と呼びます。
大きい魚だと、発泡スチロールにつめた
鯵と同じで,上身と下身の状態が
変わることもあります。


鰹も鮮度が落ちやすい魚です。
そのため,手間とお金はかかりますが
一本一本別の発泡スチロールに入れて
運んだりします。


頑張って生きて来たのに、
海の油の匂いで嫌われたり、
ないがしろにされたら
すぐに生臭くなって
「くせっ!」って思われたり、
さかなって悲しい生き物です。
「え?俺だって
最初から臭いわけじゃねーし!」
魚の声が聞こえてくるとかこないとか。
(ほんとにいろんな人の協力がないと
美味しい魚って食べられないんです。)


生臭くない魚料理をつくるためには、
そういう愛がこもった魚を仕入れている
魚屋さんを見つけることも大切です。


それで、生臭くない魚を仕入れても
鮮魚の場合は管理の仕方で1〜2時間で
臭みがまわってしまいますし、
料理の仕方では一瞬で
使えなくなったりしてしまうので,
ここもまた大変です。

仕込みの時のポイントとしては

1「温度を上げない」
魚を捌く時にしっぽと頭以外、
刺身で使える部分は
魚を素手で触らない、
もしくは氷水で手を冷やしてから
触ったりすることもあります。
「手の温度でやけどをする」と
言われているくらいです。

2「うろこ、ぬめり、内蔵、血、
「身」以外の汚れをきっちり取り除く」
魚の鮮度が良くて身にも余計な匂いが
ついていない魚を準備できましたとして。
(水槽で泳いでいる魚は、水槽のカビ臭さが
うつってしまうこともあります。)
それでも生臭くなるとしたら、それは
ほぼ「ぬめり、血,内蔵、血合い」の
部分の匂いです。魚をさばく前には
うろこと、ぬめりをよーく取りのぞき、
作業した場所もよく洗います。


例えばぬめりが残っているまな板の上に
切り身を置いたらアウトです。

そして、うろこがとれたら魚の
頭を落とし、内蔵をとります。
この時にだいたいの魚は
背骨にそって血が流れているので、
可能な限りピンセットや、
たわし、はぶらし等をつかって
血を取り除きます。

そこまでしたら、
またまな板や包丁をよく洗って、
よく拭いて水分をきっちり取ります。

3「魚をおろしたら,使い道によって
適切な温度管理をしてしまう。」
三枚におろした魚は、種類に
よって皮に臭みがある魚もあるので、
その時は皮をひきます。
ただ空気に触れる部分は
極力減らしたいので,臭みがない魚は
皮を残しておいたり、リードで
くるんだり、くるまなかったり。
いろんな方法で保存します。

だから、生臭くない魚料理を作るには
この魚はこういう管理が必要だって
ことを経験で学んでいく事も必要です。


管理の工夫として「切り身にしたら
水分を嫌う」ということは魚全般に
共通することなので、
覚えておいたらいいと思います。

鯛のかぶと焼きを作るとして、
鯛の頭を割ってから、エラをとって血を
洗い流すのですが、洗ったあとに
きっちり水分を取り除かないと、
魚はすぐに水を吸ってしまいます。

水を吸ったさかなは
色も変わりやすいですし,
魚に魚以外の成分が
含まれるということなので
味もぼけてしまいます。


逆にその性質を利用して
味を含めるパターンもあります。
塩水につけて干したり、
ゆずとお醤油で柚庵漬けを
つくったりします。



貝も一緒で、
牡蠣も水分を吸っていきます。
東京で知り合った料理人で
大きく見せるために水道水につけて
膨らませる人がいました。
その人にとってはそれも料理です。
「水吸わせても味かわらないっしょ?
大きくなってお客さんが喜ぶなら
そのほうがいいでしょ。」
色んな価値観の人がいます。
たしかに違いがわからないお客さんなら
大きいほうが満足できていいですよね。

それずるくねー?って思うかも
しれませんが、よく見せるために水を
吸わせることも料理の一部です。
彼女のスッピン初めて見たら
がっかりしたみたいな。
料理ってそんな感じです。



素直に素材で勝負する時もあるし、
がっちがちにメイクをしたり、
時には身体にメスを入れてみたり。
「これが正解」っていうのはなくて。
人によって全然ちがう味になるから
面白いし、家庭でつくる楽しさも
あるんだと思います。

鮨屋で食べる生ガキのポン酢がけ。
ただ剥いて皿に乗せるだけに思えますが
「どうしたら美味しく、
楽しく食事ができるのかな」
そういう気持ちがこもった牡蠣を
市場で探して自分で仕入れて,
気持ちをこめてつくった作品だから
美味しくなるんです。
じゃないとね、そのひとさらに
お金を払う価値がないと思います。


ということで長くなりましたが,
生臭くない魚料理をつくるポイントを
まとめると、

1海を奇麗にする。
2信用できる魚屋さんを見つけて
生臭くない魚を買う。
3魚の性質、臭みが出る部分を知り、
これ以上臭みがまわらない工夫をする。
4自分の許せる範囲の臭みがある時は
ごまかす化粧を覚える。


ということです。
それで僕は3と4に
ついてはちょっとはわかります。
でも魚の種類、使い道によっても
変ってくるので、具体的に例えば、

「サンマを刺身で美味しく食べる方法」
「牡蠣を焼いて美味しく食べる方法」

素材と用途がわかれば伝えやすいです。
漠然と魚の生臭さを取る方法ですと、
このくらい長くなるか
「愛情!」と一言でまとめるか
どちらかになってしまいます笑。

ということで
読んで頂きありがとうございました。


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