迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ニッポン徘徊──世田谷区まむし沢

2019-11-21 10:28:21 | 浮世見聞記
かつては土がひろがる田園地帯、いまは住宅が隙間なくひろがる密集地帯の世田谷区なれど、少し奥に入ればかつてを思はせる自然風景、そして史跡ありけり。



忘月忘日、世田谷区瀬田四丁目の曲がりくねりし細い坂道を下りたる折、道端の『まむし沢』なる石標が目に留まりけり。

付近はマンションや住宅が立ち並べど竹藪や山林もわずかに残り、さもありなむと思ひつつ、由来をたずぬる。



このあたりは江戸時代、将軍家の鷹狩に餌として用ゆる蝮を、年貢として納めけり。


村人は捕獲に出かける際、蝮に噛まれぬやう、

「おいらはこの村の槍持ちだ 蛇も蝮もどっけどけ」

と、おまじないを唱へてゐた云々。


その土地の先人たちの聲、にほひ、さうした素朴な文化に耳を傾けるべし。


そこには、我が命を明日へ繋げるための術が、潤沢に寶蓄せり。



さりながら、地方の街には熊の出没が常態化せし當今なれば、ここに古へのまま蝮が現れしと云へども、もはや不思議はなしと言ふは戯れに過ぎたるか……?




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