ラジオ放送の喜多流「蘆刈」を聴く。
貧困生活に耐えきれず別れた夫婦が、片や都で富裕層の乳母となり、片や難波の浦で刈った芦を浜辺の市で賣る相変はらずな貧困生活を送るうち、春の一日に二人は難波の浦で再會し、和歌のやり取り通して復縁すると、一緒に都へ向かふ──
かつて別れた夫婦が再びヨリを戻す外見的なおめでたさよりも、和歌のありがたさ云々に主眼をおいた曲に世阿彌が改作したものが、今日傳はってゐる謠のやうだ。
曲の原典となった「大和物語」などでは、女はすでに都で別の男と再婚してゐるため復縁する結末にはなってゐないようで、冷厳であっても私はこちらの展開のはうに興味がある。
なんであっても貧しくて別れるくらゐなのだから、この夫婦は初めから良縁ではなかったのだ。
──いつの世も、離婚の一番の原因は「結婚」である。