前回、特許権の重要性と日本の後進的状況を見ました。
今回は、一人の開発者の行動を通して日本に何が必要かを考えます。
特許の対価を求めて訴訟を起こした開発者。
青色LEDの実用化の道を切り開いた開発者中村氏は、退社後の2001年、企業を訴えました。
一審は、特許の対価として200億円の支払いを企業に命じました。
後に、彼は8億円で企業側と和解しました。
彼の発明後、その企業の利益は毎年10億から100億を越えるようになったのですから、その成果は推して知るべし。
彼の在職中、特許取得による報奨金は1件2万円でした。
日本の職務発明への対価は、おしなべてこのようなものです。
この裁判以降、全国で若干の発明者が企業相手に裁判を起こし、見合う報酬獲得に動き出しました。
画期的な発明であっても、従業員なら日本では報われることがないのです。
この状況で、この時期、なぜ政府は特許権をさらに企業に移そうとするのでしょうか。
一つは、経済界の意向です。
企業側にすれば、従業員からの特許訴訟は巨額出費を招くリスクにしか映りません。
従来通りの些少な報奨金で、発明が手に入るに越したことは無いのです。
日本の職場では、従業員は時間外手当無しで改善活動も厭わないのです。
このような労使一体の希に見る風土は、日本の高度経済を支えて来たとも言えます。
しかし、その体制は崩れつつあります。
忠誠心の源であった永年勤続を支えるものは無くなりつつあります、年功序列廃止、非正規雇用の拡大、賃金・退職金制度改変などです。
つまり旧来の労使慣行は、一方的に経済界と政府の意向によってここ30年程崩されてきたのです。
特許権もその一例に過ぎないのです。
この状況は、確かに労働者から見れば苦渋でしかありませんが、企業側も零成長経済、内需不振にあって、減量しか無いと言うのも頷けます。
これでは悪循環です。
大事なことは、日本経済復活には何が不可欠かと言うことです。
次回は、この点を見ます。
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