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心の起源

2012年04月21日 | 


紹介 : 私達に備わっている友愛、社会性、文化などはどのようにして生まれ育ったのだろうか? 科学的な知見を集め、心の誕生と成長の過程を要約しました。

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 人には動物には見られない素晴らしい精神や感情を有している反面、激烈な暴力や差別などを持ち合わせています。なかなか染みついた価値観を捨て、科学的事実に立脚して冷静に見立てるのは困難でしょうが、話を以下に進めます。


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 ここでは、本来人間だけに見られる高尚な精神活動の一端が霊長類から化石人類にもあることを例示しました。

 

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図の説明 :上部中央図より右回り。テオティワカン 後3~7世紀 /三星堆遺跡  前3~前1千年紀   /遮光器土偶  前2~前1千年紀/インダスの神官王  前2千年紀/とうてつ文 殷周、前2千年紀後半 /日本のイケメン 現代/ウルク 前3500~前3000年前 /エジプト ホルスの目/ツタンカーメンのマスク  前14世紀  

 例えば「目」を例にとり、目に対する意識が古代の美術にどのように影響したかを見てみましょう。日本青年の顔はコンピューターによる平均的な合成写真です。明らかに総べての図像の目は実際よりも大きくデフォルメされています。特にこれらの像は神や王を表していますので、威厳や神秘性を強調していることになります。つまり人々は「目」を対人的な意味で重要視していることが分かります。


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 35億年前、バクテリアが生まれ、30億年前から20億年前に細胞が複雑になり。5億年前、脊椎動物が始めて誕生した。2億年前からは哺乳類、1億年前に霊長類がそこから分岐した。2200万年前には我々に非常に似た類人猿が活躍始め、700万年前、チンパンジーとヒトが分岐した。300万年前ボノボがチンパンジーから分岐した。

 ここに生命の不思議を物語る一つの現象がある。例えば人間の遺伝子の3万個ある命令の切り替わる時間が1秒として、総ての組合せに要する時間は10の9000乗秒となるが、これは宇宙誕生以来の時間4X10の17乗となる。つまり途方もない組合せの中から人体の中で最適に行っていることに他ならない。「カウフマン 生命と宇宙を語る」p276より。

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 進化の過程を概括した。

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 遺伝子の化学構造、体内でのコピーの様子を示した。この遺伝子に放射線があたると電子がかってに動き回り、化学構造が変わってしまう。そうすると内分泌物質のコピーが不正になり、体内に異常が発生する。しかし有る程度までのエラーは自動的に無視するように生体は制御されている。しかし度を超すと異常が発現する。ハエに放射線照射すると突然変異はいくらでも発現する。


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 2頁にかけて、遺伝が行動に影響する例を挙げた。一般には複雑で高度な行動と見られるものを例とした。


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 遺伝子に変異が生じて少し能力が向上した動物が、群れの中でどのようにして進化を遂げるのかを示した。それは生存率と繁殖率で規定される適応度如何によることが分かる。


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 霊長類の進化を示す。


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 人間にもっとも近い大型類人猿の社会性を一覧した。
生態=生息地:食性:生活空間:年間の最大遊動域:隣接集団との関係。
社会=集団の大きさ:集団構成:移籍個体:宥和行動:雄間関係。
生殖=性的2形:発情徴候:周期内交尾日数:交尾様式。


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 チンパンジーの暮らしぶりを2頁にわたって見せる。


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 ここでは適応度の高い行動パターンが、何百万年もかけて生物に受け継がれていく様子を理論的に推測したものです。直接この因果関係を観測することは出来ませんが、動物界によく見られる儀礼的闘争(鮎やライオンなどの同種による縄張り争い)は事実存在しています。例えば暴力に訴えるタカ派が群れの大勢を占めている場合、融和的である者は生き残れるのでしょうか? この答えは次の頁にあります。これらの問題を解くのがゲーム理論です。

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 ここでは利他行動の起源を説明しています。利他行動にも種類があるのですが、互恵的利他行動が成功するには、「しっぺ返し戦略」、「協力による利益/損失>1」が存在することが条件となります。このように見ていくと、何だか人間の高尚な行為が、単純な動物的な利益交換の結果に見えてしまいます。孔子、イエス、釈迦の出る幕はないように見えますが、そう簡単ではないと言えます。基本は遺伝と社会文化に依って高尚な行為が継承されていることが後に分かります。


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 これは利他行動でも、血縁によるものがどのような理由で生じているかを示したものです。雌蜂はなぜ自分の子を育てないのか、自然の摂理に反するはずだ。その理由は、女王蜂はいるのに雄がいないのかがその答えです。自然界の雄と雌の数が等しいこともゲーム理論から説明されています。


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 やっと人間行動の深層に利他行動が宿っていることを示している心理学実験に行き着きました。


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 既に動物は共感や利他行動を内包することにより社会的紐帯を身に着けて来ました。ここでは逆の見方をします。2頁にわたり何が社会(群れ)を特徴付ける要因になるかを見ます。


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 ここでは遺伝的に獲得された「性に纏わる行為(観念)」が古代社会にはどのように変容したかを示しています。ほぼ同時代の西アジアで生まれたハムラピ法典と旧約聖書の戒律の違いに、それを見ることが出来ます。ハムラピ法典「ある人の妻が他の男と寝ているところを捕らえられた場合、(二人は)縛られて河に投げ込まれなければならない。その夫が妻の除名を願い出る時は、王も自分の奴隷の命を助けることが出来る。 第129条」  ハムラピ法典では情状酌量の余地がありますが、ユダヤ教では社会全体が穢れるとして、死刑が宣告されます。人類はいつしか「穢れ」の観念を持ち込み、社会をコントロールしようとし始めたのです。


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 化石人類の進化を見ます。左図は猿人の石器、右図は原人のものです。


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 図の説明 : 最上左図、旧人の握斧/ 右図、新人の石器/中央図、ネアンデルタール人の埋葬
         /最下図、新人のバイソン像の制作風景



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 人類の家族誕生は、社会性を高めた画期と言えます。その経緯を示します。


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 これは人間の脳の構造です。


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 人間が他の動物と大きく異なるのは、脳の大きさと前頭葉の占める割合の多さです。

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 ここでは精神的なのものが、遺伝的や機能的に脳に存在することを示しています。


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 ここでは知能が先天的と言えるほど、誕生後間もなくその萌芽が見られることを示しています。


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 心の進化を概念的に捉えたもので、一学説に過ぎませんが、わかりやすいと言えます。左のチンパンジーの段階から、原人と新人へと進化していることを示しています。最初は各知能がバラバラで発展していたが、やがて統合されていったというものです。


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 人類の強さを精神的に説明しています。

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 逆に人類の悲劇の元凶を説明しています。

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 ここでは見方を変えて、象徴について見ます。蛇を取り上げました。なぜこうも蛇が特別扱いされるのでしょうか。

図の説明 : 右図、チチェン・イッツアのピラミッド:古典期マヤ文明(後900~1524年)、マヤ最高神ケツァルコアトルを祀る、秋分・春分の日に起きる。
左図二つ共、現代タイ王宮の屋根と階段。


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 図の説明 : 上左中央より図から逆時計回り。イスラエルのコイン 蛇足の神 前2~1世紀(ユダヤ教と対立する表象)/ミュンヘン ドラゴン/メソポタミアの神 ニンギスジダ 前22世紀/ギリシア 医神アスクレピオス 前3世紀 世界保険機構に継承/ メキシコ ケツァルコアトル 紀元前~後6世紀 /ヒンドゥーのナーガ神 紀元前/神話の女媧  前1千年紀以前 /キトラ古墳青龍壁画 後7世紀 

 地球上には有毒な爬虫類の99%以上が蛇で、3千種の蛇の内、毒を持つものは25%以上。トカゲから分岐したのはジュラ紀(2.05~1.35億年前)。どうやら私達には樹上で暮らしていた数千万年前からの蛇に対する反応が残っているようです。おそらく蛇の形状を記憶しているというよりは、その動きや形状の特徴だけに反応するようになっているのでしょう。


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 人間社会の複雑さを生んでいる精神的なのものの関わりを見ます。


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   日本の文化の特異性を独断で一覧にしたものです。「本音と立前、旅の恥はかき捨て」これは「内集団ひいき」が根底にある。統治の倫理(武士道、家長制)の優先から来るものとして、孔子の親子の罪の密告の禁止がある。新約の「思うだけでも姦通罪になる」は、はるか遡れば商人道(市場の倫理)から来たものだ。


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 やっと終着駅に着いたようです。まだまだ現在の科学ですべてを解き明かすことが出来ませんが、ジグソーパズルのように大方の絵には仕上がって来たように思えます。現在は遺伝子研究が進んでいるので、もっと多くのことがこれから発見されるでしょう。私達は人間の心と社会、文化を正しく理解することがこれからの進路選択に重要になります。



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最後に代表的な参考図書を例示します。


履歴 : 2011/02/14起稿し、読書会で使用。2012/04/19追記し投稿。


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