アクアコンパス 3   世界の歴史、社会、文化、心、読書、旅行など。

カテゴリー「案内」に人気記事と連載の目次があります。Twitter に yamada manabuで参加中。

社会と情報 49: 戦った報道 6

2015年08月20日 | 連載中 社会と情報

< 1. 沖縄上陸戦 >


明治維新成功の影には、軍事大国の萌芽がありました。
しかし、当時の報道はその役割をついに果たせなかった。
ここで戦前の日本社会と報道の関係について考えます。


報道の役割

報道の役割を考える時、大きく二つのポイントがあります。
一つは、報道は社会の劣化防止にどのような役割を果たすべきか?
いま一つは、報道は日本固有の社会風土に対してどうあるべきか?

社会の劣化
日本の社会が劣化していたからアジア太平洋戦争に至ったとするなら、反発する方もおられるでしょう。
しかし、この戦争(1941~45)の結果を見るなら300万人の国民と全戦域で1900万人の死者が出ました。
そして当時の国民はこのような結果を招くとはつゆほども知らず、また戦争を止める手段を持っていなかった。
このような社会を正常と見なし改善の必要が無いとするなら議論は無意味です。


< 2. アジア太平洋戦争時の首相 >

戦争を推し進めた責任とは
歴史家は戦争に至る過程で日本の首脳が無責任だったと指摘することがあります。
それは、首脳の政策提言に対して天皇が同意の決裁を行うことで、首脳には失敗の責任が無く、かつ大きな権能が生まれていたことです。
天皇は希に拒否や修正を命じることもあったのですが、基本は同意です。
このような政治体制にあっては、泥沼化した戦争を首脳自ら阻止することは困難です。
彼らにとって、良く言えば皇国と英霊に恥じないようにした、悪く言えばなるようになれでした。


< 3. 満州事変と首謀者 >

それでは首脳が責任を取るとはどのようなことなのでしょうか?
よくあるように独裁者を死刑にすれば良いのでしょうか?
残念ながら当時の日本で独裁者を見つけることは困難です。
例え彼らに公職追放や賠償責任などの罰を与えても、所詮、後の祭りです。

国や組織の首脳が悪意であれ過失であれ進路を危うくすることは多々あります。
歴史から見える多くの問題は、一度間違った方向に進み始めると首脳は秘密裏に挽回を画策し、往々にして深入りしてしまうことです。
それは特に絶大な被害を生む戦争ほどその傾向が強くなります。
これは民主国家でさえ頻繁に起こっています。
ベトナム戦争もその典型例でした。

これを防止する為に人類は各種の政治機構や制約を生みだして来ました。
その一つが報道の自由であり、真実を報道することが報道の最小限度の役割です。
大事なことは、政府が適正な進路選択を行っているかを国民が適切に判断できるように、国民に必要な情報を伝えることです。
国家の上層部は往々にして都合の悪い情報を隠蔽します、それが重大であればあるほど。
そこを報道がこじ開けて、適切に適確な情報を国民に与えることが重要です。
これでこそ国の被害を最小限度に留めることが出来ます。



< 4.日本の東電や東芝のトラブル隠蔽と米国の内部告発者 > 

社会の特性を知ること
次いで重要なことは日本の社会の陥りやすい特性を知ることです。
日本の社会が陥り易い特性に報道が上手く機能してこそ、社会の劣化が防止出来ます。

例えば、その特性とは組織ぐるみの隠蔽体質や未発達な内部告発、また個人の権利や法の遵守が組織の存続よりも軽視されることなどです。
これらは社会を安定させ団結力を強固にする特性の裏返しですが、その一方、組織の腐敗と暴走が起きやすい。
これらは日本文化の顕著な特徴であり現在にも通じています。
国民はこの欠点を認識し、報道を見守るべきです。
このことが社会の劣化を防止する一助になります。

次回から、当時の新聞の活躍を紹介していきます。






最新の画像もっと見る

コメントを投稿