僕が小学生の頃
僕に親父の従姉妹が訪ねてきた
それまで
僕に親父方の従姉妹がいるなんて
知らなかった
あとにも先にも
あの時初めて会って
それからもう、会う事もなかった
人生一度きりの出会いであった。
うちの両親は
両方とも兄弟姉妹から離れて
この地に来ていた。
だから、天涯孤独のような感じで
親族との交流がないから
僕も周りの友達たちと比べ
親戚、従兄弟、従姉妹の存在がなく
寂しい感じだった。
その日
その人は
遥々 九州から
親父を訪ねて来た
なんの連絡も入れず
突然だ。
♫ヘヘヘイ〜
消え残る 街あかり
女は待っている
肩すぼめ 衿を立て
冷い ほら風の中
女は待っている
肩すぼめ 衿を立て
冷い ほら風の中
五木ひろしさんの
その時流行っていた
「待ってる女」が流れてきたそんな
場面に僕は
遭遇した。
買い物から帰宅した
僕と母親は
その時住んでいた僕の家
会社の社宅に夕方戻ってきた。
玄関横の物置の隅に
えんじ色のコートを着た
スラっとした女性が佇んでいた。
コートの襟をたて
うつむいて待っていた。
僕と母親はその人を見つけ
その人も僕たち親子を見るなり
「はじめまして、ご無沙汰してます。
〇〇ですお父さんの兄〇〇の子です」
そういうと
母親は
「あゝ〇〇ちゃん あらぁ〜突然一人で来たの?よくここがわかったねぇ〜」
うちの社宅の家は
結構不便なところで
最寄りの駅からも
歩いて40分以上かかるし
社宅内に乗り入れてる
バスも会社のバスのみで、
ほぼほぼ よそものが簡単に
訪ねてこれるところではないくらい
不便で優しくない場所だった。
きっとタクシーでここまで
きたのだろうと言うことは
推測できた。
今と違って
ナビなんかもないし、
検索して、探してこれる感じでもない
それこそあの頃、昔の人は
住所ひとつで
探して訪ねてくる
半ば執念みたいなものがなければ
初めて訪ねる場所なんかは
見つけられないと思う。
何の前ぶれも、連絡もなく
突然の訪問。
勿論 親父も知るよしもなく
夕方親父が仕事から帰り、
何十年ぶりかの再会を果たした。
その人は二十五歳くらいだったと思う
やけに大人の女の人だとおもった
小学生低学年だった僕からすれば
初めて身近に感じた
大人の女の人だった
綺麗な髪の長い人だった。
その時何しにきたのか?
誰だったのかは
あまり理解できてなかった僕だが
うっすら記憶にあるのは
何か親父に報告があって
きたような感じだった
遥々九州から
我が家を訪ねて来たことには
そうした理由があったのだと思う。
その夜
僕は初めて母親以外の女の人と
お風呂に入った。
その人が
お風呂に一緒に入ろうと
言ってくれて
柄にもなく、おませな僕は
変に男を意識して、
その人と入るお風呂に照れを
感じながら
お風呂に入った思い出がある
従兄弟、や、従姉妹が身近にいなかった
僕だったから
すごく嬉しかった事が
母親以外の女の人と入れたお風呂
と合わせて
二倍の嬉しさだった。
甘えられる存在、が一瞬近くに現れて
くれて、心や気持ちが
ぐにゃぐにゃに
ほぐされた感じだった。
一晩だけ泊まって
翌朝は帰っていった
その人は
後から母親から聞いたら
結婚の報告で訪ねてきたと…
五木ひろしさんの
「待ってる女」を聞くたびに思い出す
従姉妹のあの人 最初で最後の出会い。