まず理解すべきは、このシーンの登場人物の関係性ですね。
寺島しのぶが演じているのは天間荘の大女将で、大島優子演じるのぞみと、門脇麦演じるかなえはその娘。
で、のんちゃん演じるたまえは、父親(永瀬正敏)は一緒だけど母親が違う異母姉妹という設定。
このシーンのなにが奇跡かというと、オムレツを食べるとき、大女将とのぞみとかなえは、オムレツの左側に箸をつけるんだけど、たまえはオムレツの真ん中に箸をつける、ということなんです。
つまり、大女将、のぞみ、かなえは同じ環境で育ってきたので食べ方がそっくりなわけなんだけど、たまえはまったく違う環境で育ってきたから食べ方が違うわけです。
これ、打ち合わせは一切していないそうです。打ち合わせしてないのに、このように食べ方が綺麗に分かれた。これが奇跡だと
いうわけですよ。
偶然?いやいや、そう言ってしまっては身も蓋もない。こういうところに何かしらの意味を見出す精神性って
ものづくりには大事なんですよ。
このシーンはカメラを3台くらい使っての長回しですね。演技を途中で切らずに、ずっと演じ続けてる。
のんちゃんはじめ、みなさんセリフとか表情が自然ですよね。3人が突然謝り合いはじめて、のんちゃんだけ意味がわからずキョトンとしている。この表情がめちゃめちゃ良い!
何気ないけど、この時点でのそれぞれの関係性を、食事を通して表現したとても重要なシーン。だからこそ
オムレツの食べ方が綺麗に分かれたというのは、物凄く意味があるのですよ。
これが打ち合わせもなしに自然にできてしまった、ここに何某かの「神秘」を感じない方がどうかしている。
この映画は何か「持ってる」。
なるほど、そう考えたなら
間違いなく、奇跡
だよねえ。
いや不思議ですよね〜。きてますよね〜〜この映画!!
よかった~。ほんとによかった~。