巨大地底人からしたら、人間なんていうのは蟻🐜らしいな。
つまり人間と蟻🐜くらいの大きさの差ということだろうな。
例えば巨大地底人が地上に上がってきて歩いてたら、人間を踏んでも気づかない。
後ろの地底人から「おい、おまえ人間踏んでるぞ」と言われて初めて
「あ、ほんまや、踏んでもうたな、ま、えっか」てなもんなのだろう。
酷い話である。
地底人に罪はないが、残酷な話である。
蟻🐜から見たら人間はネフィリムである。
「おい、巨大生命体人間に気をつけろよ」
「わかっとるわ、何日俺が生きてきたと思ってるんだ、ばか」
ぐしゃ。うわっ、目の前で俺の親友が人間に踏まれた。許せない。許せないアリよ。
まあ俺たちからしたら人間だけが巨大生物ではないけれども、人間が作ったこのアスファルト?っていうの?硬い地面。これ、これが俺たちを殺す。だって考えてみてほしい。草むらに俺たちが住んでいた時代、俺たちは大きな生物に踏まれて死ぬことは滅多になかったと思ってる?って誰に訊いてるんだ俺は。俺はそうなんじゃないかってちょっと思ってる。草はだって、ふわふわしているし、土だって、でこぼこしている、ちょうどそれが隙間作りとなって、俺たちの命を守ってくれるんだ。
俺たちはさ、何が言いたいかというと、いや、俺は何が言いたいか人間は知ってる?
「人間だってネフィリムからしたら蟻んこだぜ」そんなことを俺が言いたい。いや言いたいわけじゃないアリ。
そんなことを言いたかったんじゃないアリっ。
俺はなァ、なんで自分が蟻に生まれてきたかわかんねえんだよ。
なんで俺は蟻なのかな?しかし「蟻」という漢字は最高だよね。
虫偏に義と書いて蟻。
なるほどなァ。虹って雄の竜の意味なんだなぁ。
くっそう、俺たちは画数が多いから常用漢字に入れてもらえてへんのかいな。くっそぉ。
でも俺たちは漢字にしなくとも、すごくいい意味なんだ。
「あり」なんだから、在り、有り、これが何を意味しているか人間はわかってるか?
つまり俺たちはなんらかの生物の起源に属してるな、きっとそう、たぶん。
俺たちの体が三つの繋がった玉の形でできているのもこれは三位一体を表しているな。
神かもしれない、俺たちは……たぶん……。
しかしなんで俺は蟻なんだろう。
よく人間の間で働き蟻と言われてるけれども、俺は食う、糞する、寝る、この三つで成り立っている、違う意味で三位一体だな。
俺は人間に合わせる顔がない。だから踏まれずに生き延びてきたとも言える。
こないだキリギリスに会ったけれども、何あいつ?上流社会でちやほやされて育つとああなっちゃうんだねぇ。彼は俺の目の前でスラッとした後脚を白い小石に座りながらなまめかしい動作で組み、その細くつややかな触角を前脚でかき上げたよ。
キリギリス「蟻っつったってさ、色々いるでしょ、なんで俺たちが怠け者だとか、言われなくちゃならないわけ」
言ったの俺たちじゃねえっつーの。馬鹿だね、あいつ、俺たちもキリギリスのように最後に「ス」をつけると「アリス」だね。蚊だと、「カス」、イカリモンガだと「イカリモンガス」、イッスンムカデだと「イッスンムカデス」、オオゴキブリだと「オオゴキブリス」、最後にスを付けるだけでかっこよくなる、腹立つね、キリギリス。
とにかく、ネフィリムなんかが地上にまた来たら俺たちどうなるんだ?ってね。バクテリア?いや俺たちは虫だから。ネフィリムが一足地上へ下すだけで50000万蟻が死ぬかもな。え?計算が変?五万万蟻だよ、死ぬ。ふざけるな、ねふぃりむ、Fuck you。
はぁ、前脚がこそばゆい、ぺろぺろ、え?今バクテリアを500000000匹食べたって?ふざけるな、バクテリア。
ファックオフ。
俺の腹ン中でネフィリムたちがわめきだした。
忘れていたけども、俺の胃の中がマントルだったのだ。
そう、空っぽの。
この世はアリだ。
「ナイ」という生命体が俺にそう言った。
Aphex Twin - Slo Bird Whistle (Peel Session)