新・東京日記 ~ママチャリで行くわヨ!~

子育ても一段落し、だいぶ落ち着いてきた日々の備忘録。

今度はザルツブルク

2008-09-10 | Weblog

NYの続きを書く暇もなく、今私はザルツブルクに来ている。ザルツブルク。そう、モーツァルトの里、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台で有名なオーストリアの小都市である。

 そもそも、千葉県の片隅にいながら「外国」に強烈な憧れを抱くきっかけとなったのが、サウンド・オブ・ミュージック。「ああああ、こんなに美しいところがあるんだ、こんなに楽しげで美しい人々が外国にはいるんだ!!!私は、将来絶対に外国に行くう!!!」と、5歳の私を驚愕させたこの映画。そこから私の「外国に行きたい病」が始まり、その後は「大草原の小さな家」に影響を受け、さらにはトム・クルーズの「トップ・ガン」に悪影響を受け、アメリカのカリフォルニアにまず留学、と紆余曲折はあったが、結局、今のような国際協力の仕事に就くに至ったのは、まさにサウンド・オブ・ミュージックに端を発するのでは!?ということは、ザルツブルクは私の人生にとっての原点ではないか!?まぁ、ザルツブルクからしたら「はぁ?」という感じだろうが、とにかく、私にとってザルツブルクは特別な場所である。

 で、何しに来ているのかというと、「ザルツブルク・グローバル・セミナー」に、「フェロー」として参加しているのである。このセミナーは、年間通じてさまざまなグローバル課題をテーマにし、世界中から専門家、実務家を集めて行われている集中ワークショップである。9月7日の週のテーマは、Peace-making and Peace-building: Securing the Contributions of Women and Civil Society。つまり、紛争の和平交渉や平和構築に、どうやって女性と市民社会を参画させていくか、というのがテーマ。このセミナーに、Faculty(つまり先生方)として日本を代表して参加されるM教授が推薦してくださり、Fellow(つまり学ぶ人たち)としての参加資格と参加費用を得ることができたのだ。(今まさに、このワークショップ(超インテンシブ!)は進行中なので、結果については、またここで書くか、たぶん日本に帰って報告会が開かれるであろう。しかし、世界中から面白い、ものすごい沢山の経験と専門の人たちが来ている。。。。。)

 せっかくこんな機会を頂戴しながら、出発前は連日連夜ほぼ寝ないで仕事をする日々が続き、とにかく疲労困憊、十分な準備もできなかった。それプラス、1週間も留守をするので子どもたちの学校のことやら、歯医者に連れてくやら、子どもたちのケアもしなければならないし、ばあば用にブリーフィング・ノートを作らないといけないしで、荷造りしたのは出発の2時間前であった。。。

 まあ、そんなで本当に辿り着けるのかと思ったが、フランクフルトからプロペラ機に乗継ぎ、小一時間。ひえぇ~、アルプスの山並みに、美しい緑の中にパステル調の色とりどりのおうちが点在し、湖水が日の光できらきらと輝く絵本の挿絵のような景色が見えてきた!頭の中は当然「ドレミの歌」がファンファーレのように鳴り響く!夢にまでみたザルツブルク。。。。

 小さな空港に文字通り降り立ってみれば、なんとものどかで、空気はCrisp。さっそくタクシーに乗って、グローバル・セミナーの会場へ。山の上に聳え立つザルツブルクのランドマーク、ホーエンザルツブルク城(というか城砦)がかなたに見えてきたと思ったら、タクシーは、装飾の施された鉄の門をくぐりぬけ、湖に面した建物のわきに止まった。そう、そこが、セミナーの会場なのである。名前は、レオポルツクローン宮殿。ザルツブルクの大司教兼領主によって、1736年に建てられたお城。数年をかけて建築した後、その領主は自分の甥っこにこの館を遺した。この甥っ子(Countだから、伯爵かな?)が、芸術に造詣が深く、ラファエロ、ティッツィアーノ、デューラー、ルーベンスらの絵画をたくさん集めたそうな。しかも、かのモーツァルト親子の最初のパトロンでもあったのだと。


 そして、時を経て、1918年。宮殿は、演出家でザルブルク音楽祭の創始者のひとりでもあるマックス・ラインハルトの手に渡る。その時にはこの宮殿は荒れており、多くの絵画も売り払われていたらしいが、この人が、数年かけて、大々的に修復してさらに改築したのだと。ところが、ユダヤ系であったため、このお城はオーストリアに侵攻してきたナチスに没収され、家族はアメリカに亡命。しばらくは、ナチスの夏の保養所に使われていたらしい。戦争が終わってから、ラインハルト家に返還されたが、その4年前に、ラインハルト氏はニューヨークで亡くなっていた。最後まで、レオポルツクローン宮殿に帰りたい、と言っていたらしい。遺された奥さんが、1947年に、ハーバード大学の大学院生たちに夏の間、セミナーをするための場所としてこのお城を貸したのが、このザルツブルク・グローバル・セミナーの始まりとなったのだって。戦争でぼろぼろになったヨーロッパの国々の学生と、アメリカの学生を交流させ、理解を深め、二度と戦争が起こらないようにすること、それが当初の目的だったそうな。それが発展し、財団ができて、今日にいたるのですと。これまでに440ものセッションが開催され、世界中から延べ22,000人が参加したとのこと。

 で、このお城なんですけど、サウンド・オブ・ミュージックでは、フォン・トラップ大佐のおうちなんです。舞踏会が行われる大広間も、裏のテラスから眺めるお花いっぱいのお庭と、マリアと子供たちがボート遊びをしていて落っこちてしまう池も。。。。この館でロケをしたかったそうなのだけど、まさにこのグローバル・セミナーが開催中だったので許可はおりず、すぐ外にレプリカを作って撮影したんだって!
 お城の中は、メトロポリタン美術館なんかに展示してある「貴族の館」なんだけど、もちろん柵などなく、大広間に置いてあるソファに腰掛けていいし、重厚なライブラリーに陳列してある本を手に取り、絵画と彫刻に囲まれて、本を読んでもよい。読書にふけり、ふと顔をあげると、小窓のそとには木立の向こうに湖とアルプスの山並みが、食事も毎回大広間で芸術品に囲まれて、という信じられない夢のようなセッティングなのです。Facultyの方々は、お城の本館のサロンつきの素晴らしい眺めのお部屋に滞在されているのだが、私たちFellowは、離れの館。私の部屋は、な、なんとちょっと屋根裏部屋ぽっくて、小窓のそとにはアルプスが見えるの。聞こえてくる音は、中庭の噴水の水が流れる音、小鳥の鳴き声、そして、旧市街の大聖堂から聞こえてくる鐘の音。。。。。ああ、気分はアルプスの少女!

 今年の夏もいろいろ読書をしたが、その中で、ヨーロッパ(特にドイツ近辺)中世史の研究者阿部 謹也著「ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界」「中世を旅する人びと-ヨーロッパ庶民生活点描」とか、「ハプスブルク家の女性たち」「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」なんてのも読んでいたので、さらに気分は盛り上がる。お城の中には、宗教画、肖像画、鎧などがたくさんあるのだが、廊下には、中世の村人たちや町の人たちの様子や風俗を描いた銅版画や素描がたくさんあり、それらにもおおいに興味をひかれる。
 お城の中だけでも、そして周りの湖だけでも散策のしがいがあるが、朝から晩までセミナーに缶詰めで、旧市街に行くチャンスがなかなかない。ので、昨日の夕方、セミナーが終わってから、自転車を借りて旧市街まで行ってみた。山に聳え立つ城塞を見ながら、ふもとに広がる草原の中の道を走る。もち、頭の中は、またもや「ドレミの歌」である。道が不確かなので、信号待ちの地元のサイクリストに教えてもらい、どうにかたどりつく。聖堂を中心に、大きな広場が広がっており、そのまわりに大司教の宮殿や、商店街が広がる、中世の街のつくりである(←たぶん)。自転車をとめ、歩き回ってみた。ヨーロッパの街って、本当に石造りなのね。午後7時を告げる鐘が鳴り響く。すごい音です。この音、あたりまえだけど中世から変わらないのであろう、と思うとまた感動。

あわよくば、子どもたちのお土産も買いたいと思っていたが、お店は全部しまっていた。メインストリートを歩いてみる。石造りで、すご~くせまくて、その道の先には教会がそびえたっているのが見える。その中に、モーツァルトの生まれた家が。。。。みんながばしばし写真撮っているから何かとは思ったが、1階のテナントがアイスクリーム屋さんなので、しばし通りすぎたところ、地図を見てびっくり。それこそがモーツァルトの生家なのであった。しかし、しつこいようだが、1階はアイスクリーム屋さん。まあ、中では、かの有名なザルツブルク名物、モーツァルト饅頭、もといモーツァルト・チョコを売ってはいたが。。。。


 日が落ちて、だんだんと薄暗くなってくる。また、石造りの小道と広場を交互にてくてく歩き、自転車をとりにいった。ちゃんと帰れるかどうか、道を覚えているか、不安だったが、どうにかこうにか見覚えのある通りにでて、そこからまた草原の道を風を切って進む。また、ドレミの歌(笑)今度は大声で歌ってみる。はるかかなたに、アルプスの山が影絵のようにシルエットになって浮かび上がり、半月が昇ってきた。池の水鳥が鳴く声と、水がはねる音、虫の声だけが響く木立の道をひたすら自転車で走る。まさに、Tranquility。別世界である。。。。こんなところにしばらく滞在して、たくさん本を読んで、音楽を聴いて、ワインを飲んで、思索にふけりたいものである。。。。。

 無事にお城に戻り、また大広間で食事をし、お酒が入ってるからみんなで身の上話なんぞもし(しかし、毎回そうだが、本当にこういう女性たちの人生のすごさには脱帽する。特にアフリカのおばさんたちのすごいこと!こども10人いながら国会議員、とか)、そのあと、地下のバーで、アフリカやらアジアの音楽にあわせてダンスしているおじさん・おばさん(笑)を冷やかしにいった。しかし、みんなタフだわ。

 というような日々を送っています。


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4 コメント

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アルプスの少女ハイジへ?? (ちあき)
2008-09-10 06:38:34
麻子ちゃ~ん!久しぶりです。

相変わらず仕事、子育て、プロジェクトという
ハードスケジュールをこなしている麻子ちゃんの
タフさには脱帽します!

セミナーは素晴らしい場所で開催されているのね~。

10月中旬に帰国します。11月に一度NYに戻るけれど
また12~1月に再度帰国予定。色々ありますが、
何とか頑張ってます。

是非会いたいな。大きくなったカズやナナちゃんにも
会いたいし。メールします。

1週間思い切り、ドレミの歌を歌いながらアルプスの少女を
楽しんで!!


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Unknown (めんこ)
2008-09-10 23:39:20
久しぶりのヨーロッパ満喫してるようで何より。麻子の話し振りがユーモラスで爆笑。ってうけを狙ってなさそうだけど。。。
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楽しそう!! (karimero)
2008-09-11 18:33:44
いやー、あなたは絶対エッセイストになるといいよ、本当に可笑しかったー(めんこの言うようにウケ狙いじゃないのは分かっているんだけどさ・・)。

ちなみに、きっと子供たちが巣立ったら一人旅とかふらりと出て行きそうだなーとこれを読んでふと思いました。
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理想の音楽環境 (シギー)
2008-09-11 18:44:50
ドレミの歌は学生の頃によく歌いました。
大学時代はジャズにはまり最も好きな
曲の一つは「My Favorite Things」です。
サックス奏者のジョン・コルトレーン・カルテットが演奏するのにしびれます。貴ブログのザルツブルグ
の情景を読んでいるだけでも訪れてみたく
なります。平和活動は本当に大切ですね。
ロシア、グルジアの紛争にショックを
覚えました。金融のマーケットは1929年
の大恐慌に似てきています。歴史を繰り返さない
のを祈るばかりです。
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