新・東京日記 ~ママチャリで行くわヨ!~

子育ても一段落し、だいぶ落ち着いてきた日々の備忘録。

熱く語る

2006-06-01 | Weblog

MTV Video Music Awardから一転、今度は開発経済の国際フォーラムにいってきました。その名も、ABCDE会議、Annual Bank Conference on Development Economics(世界銀行 開発経済に関する年次会合)。これは世銀が毎年開催している「開発に関する最も知名度の高い国際フォーラム」(←パンフレットより)で、「開発に携わる研究者、シビルソサエティ、民間セクター、政府関係者や政府関連機関の代表者官の意見交換を拡大することを目的として開始」されたそうな。

今年は初めて東京で開催された。ホスト国である日本の財務省との共催。今年のテーマは「開発のための新たなインフラを考える」。90年代は、途上国のインフラ整備は民間投資に任せて、社会開発(教育、医療等)やガバナンスなどのソフト面に開発機関はこぞって支援を行った。ところが、ここ数年、「社会開発を行うにしても、やっぱり電気、水、道路、輸送手段、電話等々インフラをしっかり整備しないとダメだよね。民間投資には期待したけど、電話やIT等通信手段への投資に著しく偏っていて、なかなか基礎的なインフラや農村インフラまで投資がいきとどきまへんから、やっぱりODAでやらないかんね」と言われ始めた。

私も2年前にエチオピアにいったときに痛感しましただ。インフラの重要性を。エチオピアはアフリカで唯一長期にわたって植民地化されたことが無い国で、だからこそ国民の民度もプライドも高いんだけど(私とゴジラの部下改めカリメロを悩ませ続けたゴジラその人もエチオピアのお方)、とにかくインフラがダメなんだね。ヨーロッパの国々が入ってくるとまずやるのはインフラ整備だから。エチオピアは首都でもそれはもうものすごいでこぼこ道路で、広い国土にも主要な幹線道路があるだけで道路網も発達していないし、通信網も全然だめ。80年代にエチオピアの飢餓が世界の脚光を浴びて、大量の食糧・物資が送り込まれたわけだが、飢餓状態に陥っている農村地帯への道路も輸送手段も整っておらず、結局援助が無駄になってしまったことがあった。(←数年前、首都周辺に高速道路ができたんだけど、車持ってる人少ないからいっつもガラガラで、しかも普通の道路と勘違いして牛や馬は通るは、車は逆走してるわ、私は目を疑いましたわ。。。)

というわけで、確かにインフラは途上国支援で重要です。従来のインフラ構築とこれからのパラダイムがどう違うというと、「貧困削減と持続的な経済成長のためのインフラ」という考え方が基礎になってるということ。(昔は大規模インフラばかりで、ODAがらみの汚職が問題となってたし。)貧困削減とか、持続的な開発とか、人間中心の、つうのは我らがUNDPの哲学そのものである。それを、大金持ちの天下の世銀さまがどのように議論するのか。。。。私はと~っても興味があったんです。

会場からしてゴージャスなんですけど、スピーカーのラインナップもすごかった。Wolfowitz世界銀行総裁、谷垣財務大臣、緒方貞子さん、Stiglitzコロンビア大学教授(ノーベル経済学賞の受賞者)等々、ゴージャスざんす。し、し、しかし、私は自分の目を疑いましたよ。全体セッションと分科会で合計30人分くらいの話をわたしゃ聞きましたが、な、な、なんと、緒方さんともう一人OECDの人以外、全員、全員、全員、男だったんです~っ!!!!しかもほとんど白人。

経済成長とか大規模インフラとかそんなんがテーマなら、白人男性のエコノミストが50人出てこようとわたしゃ何も言わん。しかし、「貧困」とか「持続的な成長」とかそういうコンセプトとからめるのであれば、貧困者の7割が女性だという事実がある以上、女性もいれてくれよっ!!!ジェンダーに関するテーマも入れて、なぜ貧困人口にこんな不均衡があるのかエコノミストらしく分析してくれよっ!!!特に、貧困削減のためのインフラなんてさ、利用者はほとんど女性だで。朝っぱらから蒔き集め(←エネルギー)、水汲み(水・水道、道路)、農作業(←農村インフラ)、子育てや年寄り、病人の世話(←下水道など衛生施設)、農作物を市場で販売(←道路、交通手段)などなど。農村開発ったって、アフリカの農民の8割ちかくが女性だで。

アフリカ開発銀行は分科会で「アフリカの経済アウトルック2006」というレポートの概要をプレゼンしたんだけど、このレポートのチラシには「アフリカの物流の8割は、車でも電車でも飛行機でもなく女性によって担われてます」みたいなショッキングなことが書いてあったのに、実際のプレゼンではその事実がなぜなのか(男女間の労働分担)、どう対応すべきなのか、つうジェンダーの視点なんて全然語られなかったよ。いかに開発経済学の主流が男性によって占められていて、こういう人たちのマインドで開発経済政策が策定されていくのかよくわかった。ここは、フェミニスト経済学で博士号を取得すべく日夜勉学に励んでいるメンコ娘にはやく学位をとってもらって、二人でタグを組んで主流派の研究者とポリシー・メーカーに挑んでいきたいものである。

それから、アフリカのインフラ整備や開発で何度も出てきたのが汚職の問題。そこで、市民社会組織(NGO等)の監視役、そして政治・制度・構造改革を求めていくアドボカシー集団としての役割がとっても重要になってくる。今回のフォーラムにはCSOサイドからのプレゼンがほとんどなくて残念であった。同じ問題について討議するにしても、パネルディスカッションでは政府、アカデミック(研究者)、実務者、CSO等、ひとつのテーマを多角的な視点で議論してほしかったよ。

あと、ある「貧困」を中心テーマとした分科会に出たとき、ボリビアの政府の人のプレゼンがあったのだけど、ボリビアでは様々な貧困対策を行ってきたけど、今現在、貧困者と富裕者がはっきりと二つにわかれており、貧困者が貧困層から脱却できない状況になっている、という発表であった。貧困者を貧困から脱却させるためには、「教育」が一番の近道とされている。しかし、本当にそうだろうか、という問題である。ボリビアのケースでは、Ethnicity、という大きな社会的な壁がある、と報告された。先住民は差別されている。たとえ、教育を受けたとしても、雇用市場で差別される。社会的な差別は根強く残り、それが貧困層からの脱却や社会への統合(Social Integration)を妨げている、という考え方である。ほんと、そのとおり。ジェンダーもまさにそういうこと。経済学的に考えたら、誰にとっても中立的であるはずの政策が、実際に実施してみると、社会的・伝統的価値観や規範というブラックホールに吸い込まれて、結果としてみると男女間に、民族間に格差が生まれている。数字や経済理論だけでは割り切れない、しかしながら多大な影響を及ぼす様々な社会における不平等をどうやって是正していくのか。それがもっと開発経済の枠組みで語られるようになって欲しいものである。でないとさ、貧困削減なんてありえないでしょう?

そういえば、世界中からの参加者でひしめいていた全体会議、隣に座ったおじさんが南アフリカ大統領府の経済政策局長で、いろいろ話してたらやっぱし共通の知人がおった。広いようで世界は狭い。つうか、同じ業界ならあたりまえか?

月曜の夜は、帰りに息子と待ち合わせて田町で飲み会参加。酔っ払いのオッサンたちにいろいろからかわれててかわいそうだったわ~。(←そうさ、君らのことだよっ!!!)帰り道、「ママ、そのうちさ、ママが飲みすぎて僕がおぶって帰んなきゃいけなくなんじゃないの?」と釘をさされた。それはブリリアント・アイデア。