おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
今日は温泉宿での芝居について書いてみます。
少し前に栃木県の塩原温泉に泊まったときのことです。温泉に入りお食事をいただいた後、「人情芝居」の公演がありました。興味本位で会場の大広間に行くと、8割方が年配の女性の観覧者で、残りわずかな席に座ることができました。
劇団の方々が演じる芝居は、禁断の恋の末、女性が身ごもったものの、男性側の都合で離れ離れになります。未婚の母として地域で暮らしていくことを恐れた女性が他の男性を婿にとり暮らし始めたところへ、結ばれなかった男性が現れひと悶着するお話。最後には、生まれた子供が我が子でないことを知った婿が、離縁状を渡しさっと身を引き、本来の親子での暮らしをさせるところが「人情」という演出でした。
これがドラマでしたら、悲しい結末で終わることもありなのでしょうが、ここは温泉宿。観覧しているおばぁちゃま方は、温泉に入ってゆっくりと羽をのばしに来ている場所です。やはり話の演出としてはハッピーエンドでなければなりません。最後にほっとするところでおおきな拍手を受け、その後は座長がおまけ付きのおみやげを売り、観客たちのニコニコしながら引き上げていきました。
最近のお笑いやバラエティーでは、ヒトをけちょんけちょんにけなして笑いを取る場面をよく見ます。しかし、これと同じことをもし温泉宿でやったら、それを見たお客様はあまり良い気持ちでお帰りになるとは思えません。たぶんリピートをしなくなるでしょう。温泉宿は「からだ」も「こころ」も「気持ち」もほっこりとして帰っていただかなければなりません。
思いがけないところで宿の原点を考えさせられました。
劇団のみなさん、ありがとう!
今日も楽しい1日を過ごしましょう。