音信

小池純代の手帖から

十喩詩 1 まぼろし

2020-01-12 | 日記
空海「十喩詩」より

    一  詠如幻喩


  吾観諸法譬如幻 惣是衆縁所合成
  一箇無明諸行業 不中不外惑凡情
  三種世間能所造 十方法界水蓮城
  非空非有越中道 三諦宛然離像名
  春園桃李肉眼眩 秋水桂光幾酔嬰
  楚沢行雲無復有 洛川廻雪重還軽
  封著狂迷三界熾 能観不取法身清
  咄哉迷者孰観此 超越還帰阿字営



翻案八首
     まぼろし


なにもかもまぼろしゆゑにまぼろしのごとしと言へるものなにもなし

惑へどももどれないまま迷ひをり明けない夜と暮れない夕べ

見るものと見らるるものがみつめあふ水の面の蓮 水の上の城

なづけずによばずに去るにまかせてむわたくしといふこのみづしづく

春の桃 秋の水 手につめたくて 月を呑んだはあれいつのこと

をみなごのかたちの雲がをみなごのにほひの雪をふらせをりけり

ただ狂へ一期の夢のそののちの末期の水のうましくるほし

くらきよりくらきところへうつるかななんのはじめやなんのをはりや







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