音信

小池純代の手帖から

雑談33

2021-12-31 | 雑談
 さ夜ふくる窓の灯つくづくとかげもしづけし我もしづけし

 心とてよもにうつるよ何ぞこれただ此れむかふともし火のかげ

 むかひなす心に物やあはれなるあはれにもあらじ灯のかげ

 ふくる夜の灯のかげをおのづから物のあはれにむかひなしぬる

 過ぎにし世いまゆくさきと思ひうつる心よいづらともし火の本

 ともし火に我もむかはず灯もわれにむかはずおのがまにまに

                     『光厳院御集』

          光厳院:こうごんいん(1313~1364)
              北朝初代天皇、在位(1331~33)。
              『風雅和歌集』を親撰。
              家集に『光厳院御集』。


こういうのが好きだ。

和歌は哲学でもあったことがあきらかになる一連。
和歌がちいさな建物でもあったことがよくわかる連作。

六首一連。ざっくり前半後半で対。
二首ずつで対。隣り合う歌同士でも対。
一首めと六首め、inとoutで対。
「ともし火:灯」と「我」、「かげ」と「心」の対。
追いかけ合い、映し合うことばと音。

六面の立方体の一面一面に一首一首を書いて
内側に光源を入れて我が心奥に浮かべておきたい。




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