名古屋,暑いです(>_<)
さて,前回の続き。
前回,特許査定に対する不服申立てが争われたとして、
知財高平成27年6月10日判決(知財高裁3部)を紹介しました。
争点が3つあると指摘して終わっていたので,
今回は,それぞれについて裁判所がどう判断したかを書きます。
この判決を読むと,特許法って,行政法の分野に深くかかわっているなと改めて思います。
特許権という権利になってしまった後は,私法上の権利に関する民事分野がメインですが,
権利になるまでは,特許庁という行政機関が関与する手続なので,当たり前といえば当たり前なんですけどね。
まず最初の争点,
(1) 特許査定に対して行政不服審査法に基づく不服申立てができるか
結論は否定です。
理由は,特許法195条の4における「査定」には,特許査定も含まれると解釈されるため。
この帰結として,特許査定に対する不服申立ては,行訴法上の取消訴訟によらなければなりません。
本件特許査定謄本の送達から6か月以内に,提訴しなければならないという期間制限があります。
続いて,2つ目の争点,
(2) 補正について錯誤無効の主張が認められるか
原告は,誤って真意と異なる補正をしてしまったから,その補正は錯誤無効だと主張しました。
民法95条に基づく主張ですね。
なるほど,そういう主張の仕方もあるんだなあと。
判決では,錯誤無効となる場合もあるけど,かなり例外的な場合に限られると判断しました。
錯誤無効となる場合の要件が示されていますが,それにあてはまることは,通常は考えられません。
特許法で補正や訂正の手続ルールが定められている以上,
そのルールから外れてもいい場合は,きわめて限定的となるのは当然のことです。
次に,3つ目の争点,
(3) 無効確認訴訟において特許査定が無効とされるか
一般に,特許査定のような「行政処分」は,その処分にかかる違法が「重大かつ明白」である場合に限り無効とされます。
取消訴訟の出訴期間が過ぎていても,「重大かつ明白」な違法があれば,無効主張できる。
これが特許庁審査官による査定処分の場合では,
審査官が,審査を全くしなかったか,実質的にこれと同視すべき場合,
には重大な違法があるとして,査定が無効となる,と判断しました。
本件では,担当審査官が,新規事項の追加に当たるかの審査を怠っていたと認定されています。
でも,それ以外の特許要件(進歩性など)については,検討をしていた。
だから,審査を全くしていなかったとか,実質的にそれと同視すべき場合には当たらず,特許査定は無効ではない,
と判断されました。
新規事項追加が看過された点は,無効理由を含むというだけとなります。
結局,代理人が補正をミスして特許査定を受けてしまった結果,仮に権利になっても使えないものになってしまいました。
日々,特許の出願や権利化業務を行っている者として,他人ごとではありません。
注意したいですね。
法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!
★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート
〇知的財産トラブル
特許権・実用新案権の侵害
商標権の侵害
意匠権の侵害
著作権の侵害
不正競争防止法(不競法)
〇警告書(通知書・内容証明)対応
警告書(通知書・内容証明)って何?
始まりはいつも警告書(通知書・内容証明)
〇契約書
契約書の作成・チェック
契約書のチェックポイント
〇顧問契約
※名古屋商工会議所の会員です(HP)。
★あいぎ特許事務所
商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります。