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宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

修士論文

2007年09月17日 | MBA
 
MBAの修士論文発表まであと1ヶ月。今週末は友人の誕生日パーティーに参加した以外の全ての時間を論文執筆に費やしている。英語で論文を書くことには慣れていたつもりなのだけど、やはりロジックをしっかり突き詰めて論文としての完成度を高めるとなると、毎回予想以上の時間がかかってしまう。

論文の基礎となる情報とデータ、僕なりの分析結果、それに論文の主な構成などについては既にもう全て揃えてある。後はひたすら僕の考えを文字として書いていくだけなのだけど、いかにして僕の考えをモレなく、ヌケなく、かつ、説得力を持って読み手に伝えていくかがとても難しい。

文章のロジックというのは、書きたいことをピラミッド型の図に表してみると、その出来不出来が見えてくることが多い。具体的には、ピラミッドの一番上に最も主張したい内容を書き、その下に最も主張したいその内容をサポートできる理由を3つか4つ書く。そして、その理由のそれぞれについて、根拠となる証拠をその下に書き出していく。すなわち、「主張」-「理由」-「証拠」の3点セットだ。

この「主張」-「理由」-「証拠」の3点セットの主従関係がキッチリと出来上がっていれば、その主張はかなりの説得力を持って相手に伝わると考えてよい。逆に主従関係があいまいだったり、飛躍があり過ぎると、その主張は相手に納得してもらない可能性が高くなる。

日本の大学ではこういった論理のツメ方を習うことはあまりないのだけど、僕が初めてアメリカの大学に留学した時、アメリカ流の論理の組み立て方の精緻さにびっくりさせられたことがある。まだ英語に不慣れだったこともあるのだけど、English Adviser役の学生に何度も何度も赤字のペンを入れられ、僕の書いた論文のドラフトに書き直しを命じられた。日本であんなに頑張って勉強した英文法なんて、ほとんど役に立たなかった。英作文の授業で習ったことなんてもっと論外だ。とにかく、論理の組み立てをしっかりするように!との指導を、イヤというほど徹底して頭に叩き込まれた。

そのおかげで、今でも論文を書くときには、英語であっても日本語であっても、常に論理の組み立てを最優先に意識して書き進めるようになった。苦労して覚えたことは、本当になかなか忘れないものだ。アカデミックな論文執筆なんて本当に久しぶりなのだけど、それでも書き始めると体が何かを覚えてくれているのだ。

とはいえ、一日中ずっと英語で論文を書き続けるのはかなり疲れる。休憩ついでにまた世界遺産ミディ運河沿いの道を散歩してしまった。何度来てもこの道は疲れた僕を癒してくれる。

あと1ヶ月、プチ・バカンスで体力も気力も充実させたし、エネルギー全開で走って行こう。

(写真はミディ運河沿いの散歩道で撮った一枚。)
 

競争と独占

2007年09月07日 | MBA
 
Bid Competition(入札競争)というのは本当に厳しい。全てのプレーヤーが求めに応じて最大限の努力をしたにもかかわらず、結果的に1プレーヤーだけが選ばれてしまう。選ばれなかった人が行った全ての努力は、結果に結びつかなかったという意味でムダとなるのだ。

僕が前から追い求め続けている『競争のための協力』哲学も、基本的には「競争こそが最大の成果を生み出す手段」だという考え方に立っている。最大の成果を生み出す可能性が高いからこそ、協力してでも競争に勝つ必要があるのだ。「協力」は「競争」に勝つための手段でしかない。

しかし、最近になって「競争こそが最大の成果を生み出す手段」という前提に少し疑問を抱くようになってきた。本当は競争によって敗者の側の「努力のムダ」が増え、社会全体としての成果の最大化を実現できていないのではないかと思うようになってきたのだ。

具体的には、ある新型ロケットの開発プロジェクトに関連して、そのプロジェクトをメインで請け負うプライムコントラクターを競争入札で決めることになったとする。もちろん、価格だけでロケットの良し悪しを判断できる問題ではないので、概念設計までを各プレーヤーが独自に行った上で、その提案内容も含めて総合的にプライムコントラクターを誰にするかを決めることになるのが普通だ。

この場合、最終的にプライムコントラクターとして選ばれるプレーヤーが1社であると仮定すると、残りのプレーヤーが概念設計のために投入したヒト・モノ・カネの全てのリソースは、結果的にムダとなる。もちろん、選ばれなかったプレーヤーの中に技術が蓄積して残ると考えればムダではないのかもしれない。しかし、今回の選定において結果に結びつかなかったという意味で、競争によってまたムダな努力が生産されてしまったことになるのだ。

Economics(経済学)の講義では、競争のないMonopoly(独占)状態こそが社会全体の富の最大化を阻む要因だと習った。企業としては独占状態ほどおいしいビジネスはないのだけど、社会という観点で見た場合、独占状態のビジネスが社会全体としての価値の最大化に向かうことはない。企業利益の最大化と消費者利益の最小化といった方向に全てが動く。それが「独占」の本質だ。

その「独占」の対極として「競争」は存在する。しかし、「独占」状態では社会全体の富は最大化されないし、かといって、「競争」を生み出しても社会全体の富が最大化されない可能性があるとすれば、一体僕達はどやって社会全体にとって最適な状態を作り出すことができるのだろうか。社会全体の富を最大化できる状態とは、一体どんな状態なのだろう。絶対に発生することのない理論上の「完全競争」の状態こそが、今の僕の疑問に対する答えなのだろうか。

もっと現実的なしっくりくる答えを知りたい。でも今はまだ何も分からない。

(写真はトゥールーズ郊外の街Moissacの街並み)
 
 

アンドラ公国

2007年08月31日 | MBA
 
フランスとスペインの国境にAndra(アンドラ)という国がある。ピレネー山脈の真ん中に位置する人口わずか6万人の小さな公国だ。もちろん独立国家なので、トゥールーズから車でわずか2時間でいける距離にあるにもかかわらず、この国に入るにはパスポートが必要になる。

このアンドラ公国、実際には観光ビジネスによって成り立つ観光立国だ。夏はキャンプに登山、冬はスキーにスパと、一年を通してヨーロッパ中から観光客がアンドラへと押し寄せる。確かに、ピレネー山脈の美しい景色も魅力の一つなのだけど、実はアンドラには他の国では絶対に享受することのできない、とても魅力的な特典がある。

それはずばり「免税」だ。この国では、世界中の品物が免税で購入できるのだ。具体的には、もしフランス国内で購入したら一律に課せられる約20%のTVA(付加価値税)などが、全て免除となるのだ。お酒、タバコ、電化製品、ブランド品など、ありとあらゆる商品が一年中20%以上のディスカウントで買える。これが実はアンドラの一番の魅力なのだ。

しかし、アンドラ公国はピレネー山脈のど真ん中にあって、車で行くとなると山道を登っていくしかない。もちろん、鉄道は通っていないので、公共交通機関を利用するとなると、選択肢はバスしかない。バカンスにも買い物にも最高の場所なのだけど、アクセス手段が極めて不十分なのだ。

そんなアンドラ公国の窮状に、僕のAerospace MBAのクラスメートの一人が目を付けた。アンドラ公国に小さな空港を建設し、そこから小型のプロペラ機を使ってヨーロッパ各地に直行便を飛ばそうという壮大な計画を思いついたのだ。

そして、その小型プロペラ機として選ばれたのが、僕が今インターンとして勤務しているATR社の航空機だ。短距離での離着陸性能、オペレーションコストの安さ、機体価格の安さ、そして何より、ATR本社のあるトゥールーズから近い。あらゆる面で今回のプロジェクトにフィットする航空機だったのだ。

もちろん、まだ計画段階であって、具体的にいつ実現するとかは何も決まっていない。ビジネスプランを詳細に練り上げ、アンドラ公国側と調整を重ね、地元の商工会議所などとパートナーシップを組んでプロジェクトを前に進めていかなければならない。道のりはまだまだ険しいが、現時点の採算性はGoサインを出せるレベルらしい。

観光需要はあるが空港のない地域に空港を作り、その空港にフィットする航空機を売る。一見すると回り道のように思えるけど、実はそういうビジネスの立ち上げ方が、最後には一番収穫の多い結果を生む戦略だと僕は思っている。

ジャングルに生えたバナナを探し回るのもいいが、畑に種を蒔いておくことも決して忘れてはならないのだ。

(写真はアンドラ公国の所在地)
 

StrategyとManagement

2007年08月23日 | MBA
 
今日ATR社の僕の部屋でコーラを飲みながらふと考えたことがある。Strategy(戦略)とManagement(マネージメント)の本質的な違いとは一体何だろうかということだ。

僕の中で戦略立案とは「0.1%でも勝つ可能性の高い方策を考えること」と定義されている。しかし、よく考えたらマネジメンも「0.1%でも目的を達成できる可能性の高い方策を考え実行すること」と定義できるような気がしてきた。これらの違いは一体どこからくるのだろうか。それが今日突然僕の頭の中に降って沸いてきた疑問だ。

僕はUSBキーに大切に保存してあるMBAのファイルを復習してみることにした。今担当しているATR社のビジネス開発戦略に全く関係ないということもないので、ちょっとくらい仕事を中断しても問題ないだろう。基礎科目で習ったこと、プロセスワークショップの資料、選択科目のファイルなど、1時間くらいかけて大体の資料にざっと目を通してみた。

その中で限りなく答えに近い情報を僕に与えてくれたのが、オペレーション戦略を担当してくれたUche教授の講義ノートだった。オペレーション戦略とオペレーションマネジメントの違いを、4つの視点からクリアーに説明してくれている。

まず、Time-Scale(時間的な軸)でいうと、「戦略」が1年~10年という長い期間における需要の変化にどう対応するかを考えるのに対して、「マネジメント」は最大でも1年間という期間の中での需要の変動をどうやって平準化して乗り切るかを考える。期間、そして、需要への対応の仕方という違いだ。

次に、Level of Analysis(分析のレベル)でいうと、「戦略」がMacro(マクロ)な視点からNetwork(ネットワーク)全体を俯瞰して考えるものであるのに対し、「マネージメント」はMicro(ミクロ)な視点からProcess(プロセス)に着目して考える。どこに立ち、どこを見て考えるかという違いだ。

次に、Level of Aggregation(まとめのレベル)でいうと、「戦略」が大体のレベルでまとまっていればいいのに対し、「マネージメント」ではDetailed(詳細)なレベルでのまとめが要求される。最終的に求められるアウトプットのあり方の違いだ。

最後に、Level of Abstraction(抽象度)でいうと、「戦略」がPhilosophical(哲学的)であっても良いのに対し、「マネージメント」はよりConcrete(具体的)でなければならない。思考の質の違いと言ってもいいかもしれない。

こんな感じでUche教授の講義ノートは見事に僕の疑問に答えのキッカケを与えてくれた。MBAの授業に出ていた頃には考えもしなかったことなのだけど、こうして振り返ってみると、極めて奥が深い内容を実際に僕は学んでいたことが分かる。

まだ時間はある。習ったことをしっかり消化して、自分のモノにしていこう。

(写真はAerospace MBAにおけるUche教授の講義ノートより。)
 

SWOT分析

2007年08月18日 | MBA
 
今日は久々にMBAの基本中の基本に戻って、分析ツールの一つであるSWOT分析について。前にも何度かブログの中で紹介したと思うのだけど、「SWOT分析をやってみたけど、使い方がよく分かりません」というメールをいただいたので、僕なりのやり方を紹介したい。

まず、SWOT分析とは、経営分析に用いるツールの一つで、ある会社や製品がどんな強み(Strength)を持っているか、どんな弱み(Weekness)を持っているか、そして、どんな機会(Opportunity)に恵まれているか、さらには、どんな脅威(Threat)にさらされているかを、マトリックス形式で分析するというものだ。誰でも簡単にどんなものにも適用できるのが長所である反面、分析者の立場によっては主観的な結論に陥りやすいという短所もある。

その短所を補うために僕達がMBAで習ったのは、SWOT分析を用いるのではなく、TOWS分析を用いるべしという鉄則だ。ただ順番を逆にしただけなのだけど、まず脅威と機会という外部要因に着目することによって、可能なかぎり中立的な目で内部にある強みや弱みを見極めることができる。これは僕のアカデミック・スーパーバイザーでもあるSveinn教授から教わったテクニックだ。

ということで、僕はいつも外部要因としての「脅威は何か?」を分析することから始め、その後順番に「機会は何か?」、「弱みは何か?」、「強みは何か?」と続けてゆく。これが僕の中でのSWOT分析ならぬ、TOWS分析だ。

SWOT分析が役に立たないと言っている人の多くは、ほとんどの場合が脅威や機会、そして、強みや弱みの要素を列挙するだけで終わってしまう人だ。いくらカテゴリー分けされているとはいえ、ただの事実を何時間眺めても経営戦略なんて頭に沸いてこない。ここで終わるくらいなら、最初からSWOT分析をしないほうがまだ賢いと思う。時間の節約になるからだ。

本当に大事なのはこの後だ。僕のいつものやり方は、図のように4つのマトリックスそれぞれで、意図的に頭の中の思考様式を変えながら戦略オプションを考えるというものだ。具体的には以下のとおりだ。

まず、「脅威」と「弱み」とが交差する部分では、Cooperative Approach(協力型アプローチ)を使って考える。つまり、いかにして協力関係を築きながら自分の弱みを克服し、脅威の到来に耐え抜くことができるかを考えるのだ。かなり保守的な守りの姿勢だけど、脅威に対して弱みしか持っていないのであれば、戦っても勝ち目はない。それ以上に状況を悪化させない策を練るのがベストだ。

逆に、「強み」と「脅威」が交差する部分では、Repulsive Approach(撃退型アプローチ)を使って考える。つまり、自分の中の強みを使っていかにして脅威を撃退できるかを考えるのだ。強みを有しているのだから逃げ腰になるのではなく、あえて攻めるべきだと僕は思う。

そして、「機会」と「弱み」が交差する部分では、Recovering Approach(回復型アプローチを使って考える。つまり、この機会を利用して弱みを克服できないかを考えるのだ。チャンスを目の前にしてついつい攻めてしまいたくなるのだけど、弱みがある状態で攻めても成果はたかが知れている。ここはじっくりと体力を充実させることに集中すべきだ。

最後に、「機会」と「強み」が交差する部分では、Creative Approach(創造型アプローチ)を使って考える。つまり、これまでになかったような新しい手段で新しいチャンスを一気に獲得できないか考えるのだ。自分の中に強みがある上に追い風まで吹いているのでついつい目の前の小さな玉を拾いたくなるかもしれないが、決してあせってはいけない。頭をひねっていいアイデアを捻り出し、最終的にごっそりとチャンスを掴むのだ。

こんな風に4つの異なる思考パターンでそれぞれに最も適した戦略オプションを考えていく。これが僕の中でのSWOT分析だ。

もっといい方法を知っている人がいたら、ぜひ共有させてください。

(写真は僕の中でのSWOT分析ならぬ、TOWS分析のマトリクス)
 

お盆休み

2007年08月15日 | MBA
 
今日本はちょうどお盆休みの真っ最中だと思う。オフィスで勤務する一部の人を除き、日本中がほっと一休みする瞬間だ。こちらフランスでも8月15日は祝日になっていて、オフィスやお店は全てお休みとなる。当然ATR社での僕のインターンもお休みだ。

お盆といえば、僕はやはりお墓参りを思い出す。父方の祖父は日本人には珍しくとてもクリエイティブな人で、広島のある山の中を自分で切り開き、そこに自分のサンクチュアリ(聖域)を作ってしまった人だ。そして、そこからの眺めが大のお気に入りだった祖父は、さらに自分のお墓までそこに作ってしまった。ということで、僕の一族は毎年お盆やお彼岸を迎える度に、その祖父のサンクチュアリが存在する山の中へと分け入り、お墓参りをするのが習慣になっていた。それが僕の中でのお墓参りだ。

お墓参りをする意義というのは、もちろん故人を偲ぶということに加え、核家族化が進行する現代の世の中において、バラバラになった家族や親族が再び一堂に会する機会であるともいえる。そのためには、当然直接足を運んでお墓参りをしなければならないのだけど、僕のようにフランスに在住している者にとっては、それはちょっと難しい話だ。

そこで、宇宙を使ってお墓参りができないかどうか考えてみた。宇宙を使うとはいっても、別にロケットを使って遺灰を打ち上げる宇宙葬という意味ではない。光学観測型の人工衛星を使い、ある地点に存在するお墓をピンポイントに撮影し、お墓参りの代わりとすることができないかというものだ。

最新の衛星技術では、10cmの分解能を有する人工衛星を開発することも可能だ。これは、地上に引かれた10cm間隔の線を宇宙から識別できるということを意味する。ならば、宇宙から人工衛星を使い、縦横約2メートルのお墓を識別することくらい極めて簡単なことのはずだ。

さらに人工衛星に搭載されたセンサーの種類によっては、斜めの角度から地上の様子を撮影できるセンサーも存在する。ということは、うまく撮影すれば墓標に刻まれた『○○家の墓』という文字も確認できそうな気がする。ただし、エンジニアリング的な観点で本当に実現可能かどうかの確証はない。今後衛星エンジニアを仲間に入れて検討することが必要だ。

倫理的な問題として、宇宙から撮影した映像だけでお墓参りを済ませてしまうことへの是非はあると思う。しかし、既に日本ではインターネットを使ったバーチャルお墓参りシステムや、葬儀のインタネットライブ中継を提供するビジネスが存在している。ならば、お墓参りの需要をターゲットとした新衛星ビジネスとして『Obon-Sat』(オボン・サット)があってもいいのではないかと僕は思う。

ただし、このシステムではお供え物ができない。そこが弱点かもしれない。

(写真はピレネーの山奥の一風景。僕の祖父のサンクチュアリはこんなもんじゃない。)
 

祝 ブログ開設1周年!

2007年08月14日 | MBA
 
『宇宙航空MBAブログ』をご覧いただいている皆様、今日8月14日をもって当ブログはめでたく開設1周年を迎えることができました。パチパチパチ!これも日頃から『宇宙航空MBAブログ』に暖かい応援のメッセージを書き込んでくださる皆さんのおかげだと、心から感謝しています。どうもありがとうございます。そして、Aerospace MBAが日本に帰国するまであと2ヶ月半、最後の最後まで『宇宙航空MBAブログ』をどうぞよろしくお願いします。

さて、ブログ開設1周年記念ということで、昨年の8月14日に掲げた当初目標を達成できているかどうか、ここで少しだけ自己評価してみたいと思います。昨年の今日、このブログの第1号の記事として掲げた目的は以下の3つでした。

 目標①:ヨーロッパ宇宙航空ビジネスの最善線をレポートする
 目標②:AerospaceMBAコースの最前線をレポートする
 目標③:フランス生活のリアリティをレポートする

客観的にQuantitive(定量的)な分析をしてみると、この1年間に書いた365の記事のうち、①の『ヨーロッパ宇宙航空ビジネスの最前線』の記事が54、②の『Aerospace MBAコースの最前線』の記事が201、③の『フランス生活のリアリティ』の記事が63という状況です。もちろん、最多記事数を誇るMBAというカテゴリーの中にも、ヨーロッパ宇宙航空ビジネスに的を絞った記事やフランス独特のマネジメント観などについて述べた記事もあったと思うので、単純に記事数だけでこのブログの評価することはできないと思います。

その他、僕の食事の好みに関するあまり意味のない記事もいくつかありました。最近始まった「インターンシップ」というカテゴリーでは、僕のATR社での日々の勤務をリポートしています。とにかく、僕のフランスでのMBA留学体験を日本の皆さんと共有できるよう、リアルタイムな情報発信を一番に心掛けてきました。

あとは皆さんがこの『宇宙航空MBAブログ』を読んで3つの目標が少しでも達成されていると感じていただけたならば、僕としてはこれ以上の励みになることはありません。品質とは常に顧客からのフィードバックによって向上させられるものなので、ぜひコメント欄に皆さんの率直な感想を書いていただければ幸いです。

皆さんからの意見を真摯に受け止め、今後とも『宇宙航空MBAブログ』の価値を最大限に高められるよう、僕としてできる限りの努力していきたいと思います。

最後に、この1年間で見つかった『宇宙航空MBAブログ』の新たな目的を、一つだけ自信を持って付け加えたいと思います。

目標④:一人でも多くの人をこのAerospace MBAコースへと導くこと

この1年間本当にどうもありがとうございました。あと2ヵ月半、どうぞよろしくお願いします。

2007年8月14日
Aerospace MBA

(写真は今年のパリ航空ショーのレセプションで気付いたら撮られていた一枚)
 

航空機は生き物

2007年08月09日 | MBA
 
イタリア人もフランス人も夏のバカンスで会社にほとんどいなくなる中、インターンの僕は朝8時半から夕方6時半まで、毎日休むことなく勤務を続けている。夏のこの時期に1日も休むことなく働くのは、新入職員の時から記憶を遡っても経験がない。でも、自分が担当しているメインミッションも、ボスから与えられたサブミッションも、どちらもチャレンジングで学ぶことが多いのだから別に文句はない。むしろ、こんな貴重な機会を与えてくれたことに感謝しているくらいだ。

僕が今扱っている航空機という商品は、生き物のような存在だ。前にも少し書いたのだけど、一般的に約30年というライフサイクルの中でどんどん進化していく。製造時点では同じタイプの航空機であっても、約30年後に退役を迎える際には、全く同じ状態でこの世に存在することはほとんどない。

時には外見上異なる航空機に生まれ変わることだってある。安全上の理由から旅客機として利用できなくなった航空機を、貨物専用の航空機として用いるために改造する場合だ。旅客機ではないのだからもう窓やトイレは必要なく、逆に効率よく積荷を運び入れるための大きなドアが必要となる。

外観上ドラスティックな変化はなくても、利用する航空会社によっては内部の座席配置やクラス仕様を大きく変更することだってある。例えば、エコノミークラスしか設置していなかった格安航空会社の航空機を、大手航空会社が購入した後でファーストクラス仕様やビジネスクラス仕様に改造する場合だ。もちろん、逆のケースだってあるだろう。とにかく、航空機はその外観も内部も、常に航空会社の要求に応じて変化し続けるのだ。

そういう風に考えると、やはり変化に柔軟な航空機ほど、ベストセラーになる可能性が高いと僕は思う。航空機を購入した航空会社は、その航空機の旅客機としての実際の利用価値に加え、資産としてみた場合の航空機のResidual Value(残存価値)を非常に気にするからだ。あらゆる顧客のあらゆる要求に柔軟に対応できる航空機ほど、市場での評価は高くなり、結果としてより大きな需要を得ることができる。つまり、その航空機の残存価値が高められるのだ。

変化に対して柔軟であるためには、一体何が一番必要だろうか。僕の個人的な考えでは、「できる限りシンプルである」ことだと思う。シンプルな布製の手提げ袋には何でも入れることができるが、特定の何かを入れるために作られたプラスチック製のケースというのは、その物を入れるため以外の用途に流用することは難しい。シンプルであることが、結果として将来における潜在的な用途の可能性を広げるのだ。

まだ先がよく見えない場合、可能な限りシンプルであり続けたほうがよい。人生も同じかもしれない。(ただし、原則として)

(写真はATR社の旅客機と貨物機のコンバージョン)
 

新世代スタート

2007年08月01日 | MBA
 
今日8月1日から新しいスタートを切る人達がいる。僕達の次の世代のFASIA奨学生達だ。これから15ヶ月間の長いトレーニングプログラムの始まりだ。

当然、僕も去年のこの日から15ヶ月間のFASIAトレーニングプログラムをスタートしたので、もう早いものであれから1年経ったということになる。今日はオフィスの窓から見えるトゥルーズの青い空と白い雲を眺めながら、ひとり感慨に耽ってしまった。時間が経つのは本当に早い。

僕のフランス生活はまだあと3ヶ月もあるので、フランスMBA留学が僕にとってどんな意味を持つのかを振り返るにはまだ早い。しかし、1年前の自分と今の自分とを比べた時、今の時点で既に大きな違いを自分の中に感じることができる。うまく言葉では表現できないのだけど、とにかく1年前には想像もしなかったくらい自分の決断に自信を持てるようになった。不安やストレスがゼロになることは決してないけれど、一つ一つの決断を自信を持って行動に移せるようになったと思う。

話を元に戻すと、今日はお昼休みの時間を利用して、今ATR社で一緒に勤務しているインド人のパラヴィとIASキャンパスのカフェテリアに行ってきた。実は彼女は、今年の11月から僕が通ったAerospace MBAに進学する予定なのだ。明日からトレーニングが始まるということで、IASキャンパスまでの車での行き方を教えてほしいと頼まれたのだ。ついでに、久々にIASキャンパスのカフェテリアで食事をしようということになって、僕達はお昼時のカフェテリアへと向かった。

IASキャンパスのカフェテリアでは、また今年もたくさんの奨学生達に会うことができた。僕達の世代は全部で29名だったのだけど、今年は増えて41名もいるそうだ。もちろん、今年も中国人が一番多く、次にインド、タンザニアと続いている。

すなわち、ヨーロッパ宇宙航空企業と関係の深~い国から選ばれる傾向が非常に強い。中国は言うまでもなくAirbus(エアバス)社の最大の顧客であり、インドは我がATR社の最大の顧客だ。タンザニアも、今年からATR社の航空機を4機導入することになっている。エアバスA380もATRもあまり買う気のない日本からは、残念ながら今年は奨学生が一人もいないようだ。

もちろん、FASIA奨学生にならなくても、直接Aerospace MBAに願書を出して、合格する人のほうが多い。パラヴィと同期生となる日本人のMr.Bさんはその一人だ。僕としては、もっともっと日本からのAerospace MBA進学者を増やしたいと思っているので、Aerospace MBA進学に関する相談やビジネススクールの見学希望、MBAディレクターの紹介希望などは、遠慮することなく気軽にメールしてきてください。

メールアドレス:aerospacemba@mail.goo.ne.jp

(写真はまたまたピレネー山脈。頂上へと続く道のりは長く険しい。)
 

ティラミス

2007年07月27日 | MBA
 
会社でおやつが出るのは日本だけの習慣かと思っていたのだけど、僕が今勤務しているATR社では、極めて頻繁におやつが回ってくる。というより、会社内でのプチパーティーが一週間に必ず1回はある。

しかも、そのプチパーティーが開催されるのは、大体朝10時半とか11時といいった、午前中の比較的早い時間帯だ。そんな時間帯からお仕事を一休みし、イタリアン又はフレンチなおやつを楽しみながら30分程度歓談にふける。仕事のスタイルが優雅になるのも納得だ。もちろん、アペリティフと称してアルコールも当然入ってくる。

パーティが終了したら全員で片付けをして各自の部屋へと戻り、また黙々と仕事を始める。というのは冗談で、また騒がしい仕事の時間が始まる。何が一番騒がしいかというと、イタリア人の電話だ。自分の個室があるにも関わらず、自分の部屋で電話しないのだ。なぜか携帯を手にして廊下を歩きまわりながら電話の向こうの相手と話をしている。イタリア語だから話の内容までは分からないけど、きっと秘密の話ではない、ということだけは分かる。

話をおやつに戻すと、今日のおやつはイタリア名物のデザート、ティラミスだった。何度もブログで書いたと思うけど、基本的に僕は甘いものが苦手だ。ティラミスも名前は聞いたことがあるけど、本格的に食べるのは初めての経験だった。日本ではかなり値段が高い部類に入るケーキのような存在だったと記憶している。

同僚のイタリア人の説明によると、ティラミスはコーヒーとチーズのミックスケーキ、ということらしい。難しい説明は抜きにして早く一口食べてみろ!と言われたので、その通りに僕は一口ティラミスを食べてみた。

予想に反してチーズの味がしない。チョコというか、コーヒーの香ばしい香りが口全体にとろけるように広がっていく。これはおいしい!甘いものが苦手な僕でもこれならおいしくデザートを楽しめる。これは意外な結果だ。

そもそも、なぜ今日ティラミスだったのかというと、同僚の一人の奥様が手作りでティラミスを作ったので、会社に持ってきてみんなで食べよう!という企画だったらしい。僕はプチパーティー開催の趣旨も全く理解することなく、おいしいイタリアンデザートのみ堪能してしまった。

そのうち日本の食べ物を作って持って来い!とボスに言われてしまったので、何を作ろうかと今から悩んでいるのでした。