宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

雪のパリ

2008年12月10日 | フランス
 
日本からの12時間30分のフライトを経て、フランス・パリへとやってきた。MBAを終えてからヨーロッパには何度か出張でやって来たのだけど、フランスに来たのはこれが初めてだ。MBA卒業式の翌日、トゥールーズ空港を出発し、パリのシャルル・ド・ゴール空港からお昼の便で日本へと帰ったのを今でも覚えている。あのときは本当に晴々しい充実感に溢れた気持ちだった。

ところが今回パリに到着してみると、なんと雪が降っている。気温は零度で体が芯から冷えるほどに寒い。パリの冬は寒いとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。不運だったのは、到着したフライトが搭乗デッキのあるターミナルに接続せず、空港のはずれの駐機場に止まったことだ。つまり、大雪の中バスに乗り換えてターミナルまで行かなければならないのだけど、なぜか僕の順番が来る少し前でバスが出発してしまい、後続のバスが全くこない。結局、大雪が降る中15分間も外で待たされてしまった。

待たされている間にビックリしたことが一つある。ある意味で発見なのだけど、パリのシャルル・ド・ゴール空港には野ウサギが住んでいる。しかも、1匹や2匹どころの騒ぎではなく、滑走路脇の芝生の上や駐機場の草むらに何匹もピョンピョン飛び跳ねているのだ。雪で空港の敷地一面が真っ白になっていたので、余計にウサギの動きが目立って見えたのかもしれない。とにかく、航空機の動きに気をつけながら元気に遊んでいてほしいと思う。

今回もヨーロッパで何か面白い発見があれば、時間を見つけてレポートしたいと思います。
 

再び、ヨーロッパへ

2008年12月07日 | フランス
 
日本では師走を迎えて寒さが一段と厳しくなる中、僕はまたヨーロッパへ行くことになった。今回は急に決まった海外出張で、明後日からフランスとドイツを4泊6日で廻ってくる。今年の夏にイギリスで行われたファーンボロー航空宇宙ショーのフォローアップ、そして、半年後にフランスで行われるパリ航空宇宙ショーの事前調整が今回の主な目的だ。その他、ヨーロッパの宇宙航空関係者にも直接会って鮮度の高い情報を入手してこようと思う。毎日どこかの街からどこかの街へとフライトする大忙しの弾丸出張だ。

よく考えたら去年もクリスマス前の時期にドイツに出張した記憶がある。ヨーロッパのクリスマスは日本のそれよりもなぜか雰囲気があって、もちろん本場だから当然だとは思うのだけど、とにかくクリスマスが似合う。街中の建物、商店のショーウィンドウ、通りを歩く人々、全てが同じような空気に包まれていて、外は信じられないほど寒いのになぜかずっと眺めていたい、そんな気持ちになってしまう。時間がとれるのは夜だけになると思うけど、この時期のヨーロッパの街を歩くことができるのは本当に楽しみだ。

とはいえ、出張で行くからにはミッションを100%達成して日本に帰ってこなければならない。今週末はそのための準備でほぼつぶれてしまったのだけど、僕の予想ではなんとか良い結果を出してこれそうな気がする。

ただ、唯一の心配事は、日曜日の正午に横浜で行われる先輩の結婚パーティーに間に合うかどうかだ。僕のフライトは同じ日の朝に成田空港に到着する。空港から横浜まで直接行けばなんとか間に合いそうな感じなのだけど、もし遅れたらゴメンなさいということで。立場はまるで違うのだけれど、今は「走れメロス」の気持ちが分かるような気がする。

(写真はJAXAが募集しているクリスマスカード。無料なのでこちらからどうぞ!)
 

フランス文化交流プログラム

2007年12月23日 | フランス
 
ドイツから帰国して間もなく、フランスからある一通のE-Mailが届いた。僕が最初にフランス語を学んだDorothy(ドロシー)先生からのメールだ。まだBonjour!(こんにちは!)程度の単語しか知らない僕に、おしゃべり大好きFedelique先生とともにフランス語の基礎を一から根気良く丁寧に指導してくれた。

最後にお会いしたのは、確か僕のFASIA卒業式の日だったと思う。その日は卒業生が一人ずつ壇上でスピーチをすることになっていて、僕は前にもブログで書いたとおりフランス語でスピーチをした。もちろん、文法的には間違いだらけだったと思うし、発音だって完璧には程遠かったに違いない。しかし、Dorothy先生にとっては、一からフランス語を教えた生徒がそこまで成長したこと自体が嬉しかったらしい。

「日本人というのは、本当に何でもすぐに吸収してしまう民族なのね」という先生のコメントが今も僕の心に残っている。確かに、渡来人の大陸文化にしろ明治維新の脱亜入欧にしろ、日本民族は歴史の大きな流れの中で外部の新しいものをどんどん吸収して自分のものにし、さらに独自の改良を重ねて現在の文化を作り上げてきた気がする。「吸収力」こそが日本人の一番の強みなのかもしれない。

そのDorothy先生が今度は僕を頼ってきた。何の依頼だったかというと、今度フランスのToulouse(トゥールーズ)で語学学校を開設することにしたので、日本人の生徒のリクルートメントを手伝ってほしいという。もちろん、僕は喜んでできる限りのお手伝いをしますと返事を出した。

今回Dorothy先生が設立する学校というのは、フランス語の学習を基本に置きつつも、まずはフランス文化の感覚的な体験と異文化との触れ合いに重きを置いているらしい。そのため、ミッションは2つなのだそうだ。

 ■言語と文化を通じてフランス語の学習を促進すること
 ■フランス文化の再発見を通じて外国人とフランス人との融和を図ること

フランス語のグループレッスンや個人レッスンに加え、以下のような特別メニューを用意し、フランス的なものを思い切り吸収して日本に持ち帰ることができるプログラムになっている。フランス語が苦手だという人には、英語での授業にも対応してくれるらしい。

<フランス文化交流セミナー>

 ■ワインとフランス料理、フランチレストランのマナー (1日)
  -専門用語、ワインの産地、ぶどうの種類、ワイン作り、ティスティング
  -典型的なフランス料理
  -フレンチレストランにおけるテーブルマナー

 ■フランスの過去・現在・未来 (1日半)
  - 歴史上の主要な出来事から考察するフランス社会進化論

 ■フランス社会学 (1 日)
  - フランスにおける教育、宗教、経済、社会構造、芸術、政治など

 ■カルチャーショックとその対処法 ( 半日)

 ■フランス人としてのマナー ( 半日)
 - フランスにおける一般的な作法(挨拶、感謝、時間の正確さ、ドレスコード、お土産の渡し方)、ビジネス上のマナー (会議、同僚との関係、会話の仕方、名詞の渡し方)、その他フランス社会における丁寧さの基準など

これらの授業は、全て僕がDorothy先生とFedelique先生から受けたのと同一の内容だ。フランスでMBAを取得し、フランス社会で活躍することを想定し、僕達はフランス社会でいかにして成功を勝ち取るかの術を学んだ。その一つがこのフランス文化交流セミナーだ。

来年あたりから日本語のサイトを開設し、日本からもどんどん参加者を送り出せるようになればよいと思う。受講料だって、既存のフランス語学校に比べれば超格安に設定されているし、トゥールーズという場所柄もあって、パリとはまた違ったフランス体験ができると思う。もちろん、エアバス社やフランス宇宙機関CNESなどもあって、宇宙航空を満喫するには最適の場所だと僕は思う。今僕は休日を返上してDorothy先生から送られてきたプログラムの日本語訳を作っているところだ。

完成次第このブログ上で紹介するので、興味のある人はぜひ検討してみてください。

(写真はプライベートでの僕のオフィス=自宅の部屋。まだ何も揃ってない。。。)
 

ローマ風呂

2007年10月29日 | フランス
 
フランスMBA留学生活最後の日曜日は、ちょっと車で遠出してローマ風呂へ行くことにした。ローマ風呂といってもイタリアにあるわけではなく、フランスにある温泉スパのことだ。内装が古代ローマ時代の公衆浴場のようになっているので、ローマ風呂と呼ばれている。

今回の目的は、ATR社での勤務を無事終えて日本に帰る前に、一度心身をリフレッシュさせることにある。噂によると屋外の温泉も併設されているとのことなので、「おっ!露天風呂かぁ!」という感じの軽いノリで昨日行くことを決めた。温泉なんて日本に帰ればいくらでも行けるのだけど、ヨーロッパの温泉を体験してみるのも悪くない。

受付で入場料を支払った後、早速僕は水着に着替えた。ここは日本ではないので、温泉に入るのにも水着着用が必須になる。裸で入ったら、たぶん警察行きになるだろう。日本に帰る3日前になってそんな事態だけは避けなければならない。

期待に胸を膨らませながら中へ進むと、係りの人が2名ほど待機していて、まず足を洗えという。足湯でもあるのかなと思ったのだけど、そんな素敵なものはなく、ただの温水シャワーを足にかけるだけだった。ちょっと期待はずれだ。

さらに中に進むと、次のコーナーは全身への温水シャワー。通路を通り抜ける間ずっと全身に温水が降り注ぐ感じだ。これは意外と気持ちいい。しかし、よく考えたら普通に家でシャワーを浴びるのと大して違いはない。こんなもので満足していては30ユーロの価値はない。

全身にシャワーを浴び終わったので先へ進むと、最後のコーナーとして消毒液のような小さなプールがあった。ここを通り抜ければいよいよ温泉に入れるらしい。でも、なんか小学校のプールに来た感じがしないでもない。シャワー+消毒液のコーナーが続いているのだ。

理由はすぐに分かった。ここは温泉というよりも、温泉のようなプールなのだ。ガラス張りの天井から降り注ぐ太陽の下、ぬるま湯に長時間浸かりながらゆっくりと時間を過ごすための施設だ。体を洗うスペースもなければ、湯船もない。あるのは派手なプールとその中を水着を着てプカプカ浮いているヨーロピアン達だ。

面白いのは、この温泉プールの中には流れがあって、これにうまく乗っていくと屋外の温泉へとそのまま行けることだ。つまり、屋内温泉プールと屋外温泉プールが繋がっているのだ。一度も水から上がることなく、出たり入ったりすることができる。

屋外の温泉プールがまた気持ちいい。仰向けになって寝転がると、ちょうど太陽が正面に見え、目を閉じても光が目の奥底にまで届いてくる感じだ。風は少し冷たいのだけど、太陽の光の温かさと交じり合って、なんとも言えない心地よさを僕に提供してくれている。とてもぜいたくな時間と空間だ。これなら30ユーロ払ってでも体験する価値はある。

しかし、僕の本来の目的はローマ風呂を体験すること。屋外は気持ちがよいのだけど普通の温泉プールであって、ローマな雰囲気は一切ない。周りを見回すと、「ローマ風呂はこちら」(フランス語)という看板を早速発見。僕はすぐに水から上がってローマ風呂へと直行した。

ローマ風呂は思ったよりも小さくて、大人が10人も入ればいっぱいになるくらいの広さだ。古代ローマ人が本当にどんなお風呂に入っていたのかは僕は知らないけど、これがローマ風呂だとするならば、彼らはギリシアのパルテノン神殿のような空間で入浴を楽しんでいたことになる。しかも、変なエレファントの置物があって、その象の鼻からお湯が出ている。古代ローマで像は人気者だったのだろうか。ライオンの口からお湯が出る姿はイメージしやすいが、像の鼻からお湯がでるのは僕的にどうもしっくりこない。

上のほうを見ると、サルなのか、それとも、ゴリラなのか、よく分からない熱帯雨林系の生き物が座っている。もちろん石像なのだけど、なぜかあぐらをかいて瞑想に耽っている。修行中の身なのだろうか。あまり愛想のいい空間とは言えない。

ローマ風呂、日本にはない世界を見た感じがして、なかなか良かったです。

(写真は本物のローマ風呂のイメージ。僕が行ったのはフェイクだったようです。)
  

フランス語検定

2007年10月25日 | フランス

MBAに関する課題やプレゼンを全て終了し、このまま何事もなく卒業式を迎えたいなあ~と思っていた矢先、今回の僕のフランスMBA留学に対し奨学金を支給してくれたFASIAプログラムのMarcから連絡を受けた。MarcはFASIA奨学金プログラムの中で教育に関するカリキュラム編成などを担当していて、僕がフランスに到着して直後の3ヶ月間、フランス文化やフランス語、フランスの宇宙航空産業などに関する授業をアレンジしてくれた人だ。

日本に帰るまであと10日を切ったこの段階になって何事だろうと思っていたら、なんと来週の月曜日にフランス語の試験をやるので受けてほしいとのこと。しかも、ただのフランス語の試験ではなくて、TFI(Test de Française International)という外国人を対象とした公式なフランス語検定らしい。

そんなの聞いてないよ~と心の中で思いながら詳しい話を聞くと、何でもFASIAプログラム本部に今年度の教育成果を報告するに際し、フランス語力ゼロの外国人が1年間でどれだけフランス語力を伸ばしたかを測定したいらしい。そして、先日のFASIA卒業式においてちゃんとフランス語でスピーチをやってのけたということで、なぜか僕が選ばれてしまったらしい。検定料金は全てFASIA側が負担するので、ぜひ受験してほしいとの依頼だった。

しかし、依頼というよりも、これはもう決定に近い。あれだけの奨学金をもらい、かつ、これだけお世話になったMarcからの頼みを僕が断れるわけがない。それを分かっていて、既にフランス語検定の受検申し込みを僕の名前で済ませておいいたのだけど、どう?受けてくれない?のこと。やはり、依頼ではなく決定だったようだ。

ということで、僕は来週10月29日(月)のフランス語検定に向けて、またフランス語の猛勉強をするハメになってしまった。ATR社での勤務が少し落ち着いてきたからまだ何とかなるものの、これがMBA最終プレゼン前だったら完全にオーバーヒートしていたと思う。今回のフランス留学は、どうやら最後の最後まで僕を休ませてはくれないようだ。帰国する2日前にまたまた一大イベントが入ってくるとは思わなかった。

フランス語検定まであと5日。なんとか最大限レベルアップを図っておこう。

(写真は先日の二つ星レストランで出されたチーズ)


星付きレストラン

2007年10月17日 | フランス

MBAの最終プレゼンも無事終了したということで、自分へのご褒美の意味も込めてトゥールーズには数軒しかないという星付きレストランに行ってきた。「星付き」というのは、あの有名なミシュランのガイドブックに載っているいわゆる豪華でおいしいレストランのことだ。星一つから星三つまでの等級に分かれていて、星が一つでもあればそれだけで十分な名誉だと言われている。

フランスに数軒しかない三ツ星レストランはトゥールーズにはないので、今回はその次のランクにあたる二ツ星レストランに行った。その名は、「Michel Sarran」(ミシェル・サラン)。地元トゥールーズでは知らない人はいない有名なレストランらしい。

予約をしてあった午後8時に友人とレストランの前で待ち合わせをし、僕は車をレストランの目の前に停めた。二ツ星ともなれば、当然ここからサービスが始まる。僕は車を降りて車のキーだけを係りの人に渡し、友人とともにレストランに入った。車は彼が駐車場まで停めに行ってくれるようだ。とてもラクちんなサービスだ。

レストランの中は別に絢爛豪華というわけでないのだけど、センスのよい家具と柔らかい照明に照らし出されて、とても優雅で落ち着いた雰囲気を醸し出している。僕達は2階の小さな部屋に案内された。既に2名のカップルが楽しそうに食事をしている。今日は平日なのでお客さんもあまり多くはないようだ。

まず最初にオーダーを聞かれたのが食前酒。通常はキールやシャンパンなど軽めのアルコールを一杯だけ飲み、これから始まるコース料理に備える。僕はお祝いの意味も込めて、今回はシャンパンを注文した。そして、まずは乾杯。友人も僕のMBA最終プレゼンの終了を祝福してくれた。とても嬉しかった。

その後コース料理がどんどん続く。といっても、時間をかけてゆっくり楽しみながら食事をするので、次から次へ休みなく続くといった感じではない。ウェイターが僕達の食事のスピードを確認しながら、それをシェフへと伝え、ベストなタイミングでベストな料理をベストな温かさで運んできてくれるのだ。だからこそ、何もかもが最高においしい。

正直、あまりにもおいしすぎて、どんな料理が出されたかあまり覚えていない。とにかく、料理のおいしさとレストランの優雅な雰囲気に包まれて、時間だけが楽しく過ぎていったことだけが強く記憶に残っている。子羊のローストやサーモンのナントカ、アンチョビのナントカ、フォワグラのナントカ、正直言ってぜんぜん料理のタイトルは聞き取れなかった。何で作られたシェフオリジナルのフランス料理ということくらいしか、僕には分からない。まだまだフランス料理に関しては、僕は修行が足りないようだ。

食事が一通り終わると、今度はチーズの時間になる。大きなテーブルに十数種類ものチーズが並べられて運ばれてきた。このチーズの中で好きなものを好きなだけ選んで食べてよいらしい。コレとコレが食べたい!と言えば、ウェイターが小さく取り分けて、お皿に盛り付けてくれる。

最後はデザートの時間だ。なにやら宇宙をイメージしたような近未来的な器にココナッツミルクとアイスクリームが入っている。その横にはイチヂクのデザートが添えられている。僕は甘いものがあまり得意ではないのだけど、今回は最後まで全部食べることができた。おいしいものは、おいしいのだ。

ここで終わりかと思ったら、最後のカフェが残っていた。しかも、ただカフェが出てくるだけではなく、またデザートと一緒に出てくる。タピオカ入りのムースに、またまたココナッツ系のデザート、地元フランス名物のマカロンなどだ。ここまでくると、さすがにもうお腹はいっぱいだ。これ以上はどんなにおいしくてももう入らない気がする。

食事が終わった後もすぐに追い出されることはなく、心行くまで皆で会話を楽しむことができた。すなわち、星付きレストランが提供しているのは「おいしいし料理」だけではなく、日常の忙しさを離れた「豊かな時間」なのだ。満足感は並大抵のレベルではない。

帰りもまたサービスが行き届いている。お店のレストランを出た瞬間、そこには既に僕の車が用意されていた。しかも、エンジンがかかっていて、ライトもついて、ちゃんと街の中を走る用にロービームにセットされていた。ここまで行き届いたサービスは、フランスに来てから始めてのことだ。

何から何まで、心行くまで満足できる時間と空間。それが星付きレストランが提供しているものなのだ。おいしい料理だけではない。これなら高いお金を払ってでも行く価値があると僕は思った。

これで2ツ星ということは、もし3ツ星に行ったら一体どんなサービスと料理に出会えるのだろうか。そのお楽しみは将来にとっておこうと思う。

(写真は「Michel Sarran」のHPより)

フランス敗北

2007年10月14日 | フランス
 
現在フランスで開催中のラグビーワールドカップも、いよいよ準決勝を迎えている。ここまで勝ち残った4カ国のうち、今日は地元フランス対イングランドの試合が行われる予定だ。当然、地元フランス人の盛り上がりも最高潮に達している。

特に僕が今住んでいるトゥールーズでは、サッカーよりもラグビーの人気のほうが断然に高い。男であろうと女であろうと、トゥールーズに生まれたからにはラグビーはセットついてくるもの、というのはATR社の同僚Lohreの名言だ。

フランスが対戦する大きな試合がある時は、街の中心部にあるCapitol(キャピトル)広場で盛大な観戦イベントが行われるのが普通だ。もちろん、トゥールーズ市がスポンサーになって超大型スクリーンを設置するので、入場料などは一切いらない。皆で盛り上がって一緒にフランスを応援しよう!というのが趣旨だ。

僕も時間があればキャピトル広場まで観戦に行きたかったのだけど、MBAの修士論文の発表が来週月曜日に控えている。今はプレゼンの最後の総仕上げの段階で、ラグビーの試合どころではない。もし日本が準決勝まで進んでいて、フランスと対戦することになっていたら、ひょっとしたら行っていたかもしれない。しかし、フランス対イングランドの対戦ということで、僕は自分のMBAプレゼンの準備を優先させた。

しかし、やはり結果が気になる。友人のフランス人は皆クレイジーなほど盛り上がっているのに、僕だけ一人話についていけないのも少し寂しい。かといって、僕の部屋にはテレビは置いていない。一年間MBAの勉強に集中するために、あえてテレビは買わないことにしたのだ。ただし、最新情報を収集するために、ラジオと新聞(Financial Times)はちゃんと買っている。

すると、IASキャンパスに住む友人の一人が、「キャンパス内の大講堂にある大型スクリーンを使用してよいという許可をもらったから、今すぐに来い」という電話をくれた。さすがラテン系だ。こういうエンターティンメント系のことになると、すさまじい行動力を発揮する。僕は彼の誘いに乗って、少しだけフランス対イングランドの試合を観に行くことにした。僕の部屋から大講堂までは、歩いて15秒ほどの距離だ。少し休憩を入れてフレッシュな頭で考えたほうが、プレゼンのクオリティも高まるに違いない。

結局、僕は後半の残り30分だけを観ることができたのだけど、結果的にはフランスが最後の最後でイングランドに逆転されてしまい、会場内は落胆と失望の入り混じった空気に包まれてしまった。フランス人の友人は、もう人生はこれで終わりだとばかりに、すっかり肩を落としている。なにもラグビーの試合でそこまで落ち込まなくてもいいじゃないかと思うのだけど、彼にとってはラグビーこそが人生らしい。その中でもフランス代表の試合は、最も神聖なものなのだとか。今夜は近づかないようにそっとしておこう。


その後ヤケ酒パーティーに誘われたのだけど、僕はその誘惑をなんとか振り切り、MBAのプレゼン準備へと舞い戻っていったのでした。

(写真はラグビーフランスW杯のオフィシャル・ラグビーボール)
 

ヨーロッパ議会

2007年10月08日 | フランス

ストラスブール出張2日目の今日は、半日だけ市内の観光をすることに決めていた。本当はもっとゆっくり滞在して周辺の地域も見て周りたいのだけど、ATR社での勤務がトゥールーズで待っている。それに、今回のプレゼンの結果を受けて、僕の修士論文の最後の総仕上げをしなければならない。もし時間がお金で買えるものなら本気で買いたいと思うくらい、今は時間がほしい。

しかし、いくら今の僕の生活が忙しいとはいえ、せっかく初めてストラスブールにやって来たのに全く何も見ないというのは少しもったいない。意図的に新しい何かに触れることによって、自分の中のCreativity(創造性)にさらに磨きをかける。それがこのヨーロッパで僕が見つけた、僕のあるべき姿のひとつだ。自分のあるべき姿だと考える以上、僕はそれを身を持って実行しなければならない。そんな理屈で自分を納得させ、僕は半日だけのストラスブール観光を思い切り楽しむことにした。

ストラスブールという街は、一言で表現するならば、フランスとドイツとが絶妙に混在した街だと言える。フランス国内にあるにもかかわらず、古い建物はほとんどがドイツ独特の建築様式で作られているし、町の中にある地名もドイツ語の響きをするものが多い。案内標識などもフランス語とドイツ語が併記されていたり、街の中で聞こえる言語もフランス語だったりドイツ語だったりする。とにかく、フランスとドイツが混ざり合っている。それがストラスブールの今の姿だ。

それもそのはずで、ストラスブールを含むアルザス・ロレーヌ地方は、ある時代ではフランスに属し、また、ある時代にはドイツに属してきた。いわば、長い歴史の中で政治に翻弄され続けてきた地域なのだ。

世界史を習ったことのある人なら知っていると思うが、1648年にウェストファリア条約でフランス領となり、1871年に晋仏戦争の結果ドイツ領となった。さらに、第一次大戦後のベルサイユ条約で再びフランス領となった後、第2次大戦中はドイツ軍の占領を受けた。そして、戦後になってようやくフランス領へと復帰したのだ。

最も有名な話としては、『最後の授業』というのがある。それまでフランス領に属していたある地域の学校に対し、明日からはドイツ語でしか授業をしてはいけないとの命令をドイツ軍が下す。フランス人の先生は、フランス人の生徒達を前にして、「今日がフランス語で行う最後の授業です。」と悔しげにフランス語との別れを告げる。歴史の大きなうねりの中で、無力な生徒達は全てをなすがままに受け入れざるを得なかった。そんな悲しいストーリーだ。

そんな悲しい歴史のあるストラスブールには、今やヨーロッパの司令塔ともいえるヨーロッパ議会が設置されている。大ヨーロッパの実現にはまずフランスとドイツの融和から、ということでストラスブールが選ばれたらしい。

今日は土曜日だったので、ヨーロッパ議会の中を見学することはできなかった。しかし、真新しい議会の建物の外観を眺めるだけでも、今ここで壮大なスケールの何かが起ころうとしているのを僕は感じた。もちろん、過去からの確執や利害の対立だって山ほどあるだろう。しかし、ヨーロッパはそれを乗り越える道を選んだのだ。そのこと自体に僕は敬意を表したい。

戦後何年経ってもアジアは対立を乗り越えることができていない。その意味で、日本を含めたアジア国々はまだまだ子供なのかもしれない。

(写真はストラスブールにあるヨーロッパ議会の建物)

弾丸ツアー報告(その3)

2007年10月01日 | フランス

弾丸ツアー2日目は朝10時からスタート。Formula 1(フォーミュラ・ワン)ホテルに彼ら二人を迎えに行った後、荷物を一旦僕の家に置いてそのまま宇宙のテーマパークCite de l’espace(シテ・ド・レスパス)へ直行。今日の予定もいっぱい詰まっている。テキパキと楽しんでもらわないと全工程が終了できない。

シテ・ド・レスパスでは、まずシンボルであるArian (アリアン)5ロケットの実物大模型を見学。二人ともロケット関係者だけあって、アリアン5に付いているバルカンエンジンを食い入るように眺めていた。ここのいいところは、実際に燃焼試験で使った実物を展示してあって、しかもそれが触り放題、写真撮り放題であるということ。日本の筑波宇宙センターで展示されているH-2ロケットは、秘密保持のためにエンジンが取り外されているそうで、そのあたりに文化の違いを感じてしまったようだ。

そして、次はおなじみの3次元立体プラネタリウム。今回の上映作品は古代エジプトの宇宙観をテーマにしたとても美しいものだった。彼ら、フランス語のナレーションが理解できただろうか。まあ、映像を楽しんでもらえればそれでよい。言語なんて本当に不自由なものだなあ~といつも思う。

お昼になったので一旦シテ・ド・レスパスを後にして、トゥールーズ市内へ移動。今日はラグビーのニュージーランド対ルーマニア戦がある日だ。本当は彼らはスタジアムでの観戦を希望していたのだけど、大人気のオールブラックス戦はどれもプラチナチケットで、どんなに頑張っても入手することができなかった。これまた申し訳ない。

カフェでランチを取りながらラグビー観戦を楽しんだ後は、再びシテ・ド・レスパスへ。彼ら二人を展示施設に残して僕は一人外の芝生の上でゆっくり昼寝でもしようかと思っていたのだけど、ここで思わぬ展示物を発見。なんと、アストリウム社が計画している宇宙旅行ロケットの実物大模型が、期間限定でここに展示されていたのだ。

これには僕も食いついて見学してしまった。シンプルな構造な上にデザインがまたカッコイイ。パイロットは一人のようだ。乗客は一回のフライトに4名。ヘルメットをかぶった上で卵型の座席に寝転がった姿勢で打ち上げられるシステムのようだ。宇宙空間に到達したら、座席のシートベルトを外して3分間程度の無重力体験ができるらしい。宇宙船には小さな丸い窓がたくさんついていて、中から宇宙や地球のようすを眺めることができる。しかし、帰るときにどうやって元の席に戻るのだろうか。そこがちょっと心配だ。パイロットが一人というのもちょっとコワイ。価格は日本円にして一人約3,800万円だ。

シテ・ド・レスパスを存分に堪能した後は、いよいよ最後の見学地である世界遺産カルカッソンヌ城へ。僕はもう既に8回目の訪問になる。毎回誰かが来る度にここに来ている気がする。カーナビがなくてもここまで来られるようになったことが、僕の成長の証でもある。

時間はすでに夜7時をまわっていたので城の本丸の中には入れなかったのだけど、それでも世界遺産たるにふさわしいカルカッソンヌ城の巨大さを間近に見て、二人とも少なからず感動していたようだ。できれば馬にのって城の中を歩きたかったらしい。残念、昼間に来ていればその夢は実現できた。

夕食はカルカッソンヌ城の中のレストランで最後の晩餐。彼らはこのあと夜12時の寝台列車でパリへと戻り、そのまますぐにシャルル・ド・ゴール空港から成田空港、そして、中部国際空港へとフライトをする。フランス最後の夜にふさわしい思い出になるよう、地元の赤ワインと名物郷土料理カスレを楽しみながら、いろんな話をして盛り上がった。本当に楽しかった。

しかし、彼らの本当のお楽しみはこれから。ヨーロッパ美女と楽しい時を過ごしたいというリクエストに応えて、ちょうど友人宅で開催されていたパーティーに出席することにした。時間はもう夜11時。列車の出発まで後1時間ちょっとしかない。12時にカボチャの馬車が迎えに来るから、それまでは自由に思う存分楽しんでこいよ、ということにして、僕は知り合いといつものように雑談をしながら過ごした。フランス、イタリア、ドイツ、アイルランド、オランダ、イギリス、デンマーク、その他いろんな国の美女(ということにしておこう)が集まっていたと思う。結果がどうなったか気になる人は、日本に帰国した彼らに直接聞いてみてください。

ということで、12時過ぎに彼らをパーティー会場から連れ出し、トゥールーズの駅まで送迎して、無事第2回トゥールーズ弾丸ツアーは終了。

楽しんでもらえたことを祈ります。第3回に好ご期待!(帰国までに間に合えば)

(写真はアストリウム社が計画している宇宙旅行ロケットの内部)

弾丸ツアー報告(その2)

2007年09月30日 | フランス
 
ATR社での勤務に戻った僕は、午前中にGianni副社長から頼まれた仕事を大体済ませ、自分の修士論文の執筆に移った。もう後発表まで2週間しかないし、その前にSveinn教授に読んでもらって事前にOKをもらわなければならない。後少しで完成なので、今必死に最後の仕上げをしているところだ。今のところ120ページくらいになる予定だ。

修士論文執筆に没頭しているうちに、エアバス社工場見学の時間になった。僕は再び市内へと車を走らせて彼ら2人をピックアップし、急いでエアバス社の工場へと向かった。エアバス社の工場はATR社から近いのだけど、市内からみるとちょうど反対側にある。同じ道を同じ日に何往復もしている気がした。

エアバス社の工場見学では、今回は英語でのツアーをお願いしておいた。前回のトゥールーズ弾丸ツアーではフランス語のツアーに申し込んでしまい、最後のほうは少し飽きられていたような気がしたからだ。幸い二人ともかなり興奮して見学を楽しめたようだ。僕は見学には参加せず再びATR社での勤務に戻っていたのだけど、午後6時に彼らをエアバス社に迎えにいった時には、二人とも顔が笑顔に満ちていた。もちろん、併設のおみやげショップで大量のエアバスグッズを購入していた。日本で働く同期に自慢するらしい。

少し早いのだけど今日はもうATR社での勤務終了ということで、僕は二人を車に乗せてIASキャンパスに帰ることにした。実はこの後彼らをブログでも紹介したFormula 1(フォーミュラ・ワン)ホテルに連れて行くのだ。徹底したコスト削減と効率的なオペレーションマネジメントで有名な、MBAの教科書にも載っているホテルである。トゥールーズでまだホテルをどこも予約していないとのことだったので、僕が代わりにここを予約しておいた。きっとどうすればコスト削減が実現できるかのいい勉強になるだろう。

この後、皆でレストランに行きディナーを食べて1日目は終了。長旅の最後できっと疲れているだろうから、少し早めに休んだほうがいい。それに、明日は朝10時から弾丸ツアー2日目がスタートする。ゆっくり休んでおいてね、と言い残して僕はIASキャンパスにある自宅へと戻った。
 
(写真は空を飛ぶエアバスA380)