宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

宇宙ビジネスインターン

2008年05月29日 | MBA
 
前から温めていた新しい企画を実行に移すことになった。「宇宙ビジネスインターン」だ。これまで研究・開発を念頭に置いて進められてきた日本の宇宙分野に、新しい風を吹き込むための僕の新しいチャレンジでもある。

「宇宙ビジネスインターン」とは、MBA(経営学修士)やMOT(技術経営修士)の学生の中から有志を募り、宇宙ビジネスが抱える各種の課題に対して、個人又はチーム単位でその解決に挑んでもらおうという企画だ。僕がヨーロッパで経験したATR社のインターン勤務の経験が発想の土台になっている。ヨーロッパで見て、聞いて、経験したものの中で良いものは全て日本にフィードバックする。それが僕の使命でもあると思っている。

僕の所属する組織には、経営トップに新企画を直接提案して、その目に留まれば企画実行のための予算がもらえるという素晴らしい制度がある。今回、僕はこの制度を利用して直接プレゼン提案を行い、幸いなことにGOサインをもらうことができた。とてもラッキーなことだと思う。十分なチャンスをもらった以上、期待された以上の成果を残さなければと思っている。

既に国内のビジネススクールやMOTスクールにもコンタクトして、僕自ら営業活動を開始している。まずは東京と関西を中心にやっているが、時間とお金の許す限り日本全国に範囲を広げて企画のプロモーション活動をしていきたい。そして、経営やビジネスのプロフェッショナルを目指す人々の中に、宇宙を「自分の事」として考える人の数を増やしたい。それが今回の僕の狙いだ。

僕一人で出来ることには限界がある。でも、僕と同じような考え方を持った人を増やしていけば、時間はかかるかもしれないが、必ずこの国の宇宙が歩む道は変わっていくと信じている。

ということで、「宇宙ビジネスインターン」大募集です。興味のある方はメールください。
 

エコジェット

2008年05月25日 | 宇宙航空産業
 
『環境にやさしい』は、今やどんなビジネスも無視できない最重要キーワードになっている。企業は環境負荷の少ない製品を開発するために研究開発投資を行っているほか、環境のことを考えているというメッセージを発するために多額の資金を費やしている。今や環境はビジネスとしてそのくらいの価値がある。

しかし、僕の感覚では、今の日本に蔓延している「環境にやさしい」はニセモノだと思う。環境に配慮した行動だとアピールしつつも、それが本質的には環境負荷削減に繋がっていないことが多いのだ。表向きだけ環境にやさしい取り組みであることを主張して、その裏ではしっかりと環境に負荷をかけてビジネスを行っている。

先日プレス発表された日本航空(JAL)のエコジェットがそのよい例だ。JAL機の機体には通常「赤」をメインにした装飾が施してあるのだけど、その「赤」を「緑」に変えることによって、『これはエコジェットです』と堂々と宣言している。機体に塗る塗料を「赤」から「緑」に変えればそのぶんだけ環境負荷がかかっているのだけど、それでもエコだと言い張る姿勢には本当にビックリだ。

僕がこのブログで紹介したヨーロッパのEASY JET(イージー・ジェット)社では、少なくともそんな小細工でエコをアピールするのではなく、航空会社の側から本当に環境にやさしい航空機とはいかにあるべきかのコンセプトを提示するところまで踏み込んでいる。エンジンの取り付け位置が翼の上にあるという、非常にチャレンジングなデザインの航空機をエアバス社やボーイング社に提案したのだ。将来的に何十機、何百機と航空機を購入することになるのだから、今から一番環境にやさしいオペレーションを実現するのに最もふさわしい航空機を自ら考えておこうという姿勢がそこにはある。

EASYJET社のエコジェットの記事はこちら

もちろん、日本航空も含め、世界中の航空会社が原油高騰に悩まされ、新たに導入されるかもしれない航空燃料環境税にビクビクしながら、少しでも燃料消費を少なくしようと必死になっている。その姿勢は本当に素晴らしいと思うのだけど、「環境にやさしい」というイメージを獲得するためだけに必死になっている姿は、見ていて少し痛々しい。

最近の日本には本当にそういう企業活動が多い。本質的に環境にやさいい行動をとるのではなく、環境にやさしいというイメージを獲得することだけに必死になっているのだ

社会的に責任のある企業であればあるほど、目的を達成するために本当に必要な、本質的な行動をとってほしいと思う。でなければ、どんなにお金を使っても、どんなに時間を費やしても、どんなに世の中が盛り上がっても、決して世界は何も変わっていかないと僕は思う。

(写真が日本航空のエコジェット。JALのホームページより。)
 

インドの少女からの手紙

2008年05月22日 | その他
 
今日、インドの少女から一通の手紙を受け取った。

「私はインドの学校に通っています。日本が金星に行く学生を募集していることを新聞で知りました。ぜひ私も参加したいと思います。お返事お待ちしています。」

先日発表したH-2Aロケット相乗りによる金星ミッション公募の話が、世界を半周してインドまで伝わり、しかも、新聞でそれを知った少女が「私をぜひ仲間に加えてください」と日本まで手紙を書いてきたのだ。僕はこの事実にビックリしてしまった。

インパクトのある企画は世界を駆け抜ける。それが良く分かった。
 

ATRが日本の空に

2008年05月15日 | MBA
 
僕がフランスでインターン勤務をしていたATR社が、ついに日本上陸の本格的な第一歩を踏み出したようだ。昨日の日経新聞やプレスリリースに掲載された情報によると、日本の大手商社である伊藤忠商事が、ATR機の日本における正規販売代理店契約を締結したらしい。日本においては商社経由の航空機販売が主流であるだけに、ATR社はついに本気で日本の空にチャレンジする意志を固めたのだと僕は思う。

プレスリリースはこちら

一日も早くATR機に乗って日本の空を飛びたい!とにかく楽しみだ!

(写真はATR機。ATR-42とATR-72の2機種というシンプルなラインナップ。)
 

「R」をシェアする

2008年05月13日 | 宇宙航空産業
 
宇宙航空の世界では、国や地域を超えた共同開発というコンセプトはもはや常識になりつつある。膨大な開発コストやあまりにも長い開発期間を無事乗り切るために、互いに協力し合ってプロジェクトを成功に導こうという意図がそこにはある。

新規開発をスタートさせるとき、当たり前のように国際共同プロジェクトの形態をとることが多い一方で、その成功例というのは意外と少ない。大体のプロジェクトでは途中で進行が頓挫するか、あるいは、続いたとしても様々な問題を抱えながら瀕死の状態になっている例は数え上げればきりがない。すなわち、国際共同プロジェクトで最終的に大成功を収めるのは極めて難しいという現実を前にしながら、それ以外に開発をスタートさせる方法が他にないという理由で、安易に国際共同プロジェクトを選んでいる。それが現実だ。

僕の考えでは、国際プロジェクトに限らず、自分以外の誰かと共同でプロジェクトを遂行する際のポイントは、「R」をシェアすることにあると思っている。その「R」とは、Risk(リスク)とReturn(リターン)だ。

Risk(リスク)については言うまでもないだろう。リスクとは、それを最も低コストで受け入れられる者に配分すべき、というのがリスクマネジメントの大原則だ。どこまで低コスト化できるかを追求するためには、やはり当事者の数を増やすという解決策が一番にくる。もちろん、数を増やしたからといって単純に低コスト化が実現できるわけではないのだけれど、自分とは違うタイプ、異なるスキル、経験を持った人材を巻き込むことで、リスクの低コスト化の可能性は高まる。ただし、メンバーが多様になればなるほど別な意味でのリスクが発生するので、そのあたりのバランスを見極める必要がある。

そして、もう一つの「R」がReturn(リターン)だ。最終的に得られる成果や報酬をあらかじめ推定し、それらを明確にシェアしておくことで、コスト削減努力に対するインセンティブをプロジェクトの中に自然発生させるのだ。つまり、得られる報酬が最初から決まっている場合、人間は成果の創出に必要なコストを前もって頭の中で計算し、自らの努力が最小限で済むような方向で物事を進め、そのために知恵を絞ることが多い。これはリターンをシェアする仕組みを構築することで得られるプロジェクトの低コスト化だ。低コスト化の成功は最終的に競争優位ポジションの獲得につながっていく。

しかし、日本で僕が経験している共同プロジェクトの多くでは、Return(リターン)に注目することなく、逆にResponsibility(責任)のほうに注目する。それぞれの義務や責任を明確に規定することにエネルギーを費やすのだ。もちろん、それは必要なプロセスなのだけど、未来に向かって何ら前向きなインセンティブを発生させないことだけは確かだ。人間、「義務」とか「責任」とか聞いて、気が重くならないわけがない。

もっともっと仕事が楽しくなるような仕事の進め方は必ずある。日本はその宝庫だと僕は思っている。
 

プレゼンの準備

2008年05月11日 | MBA
 
山のような仕事が一段落してようやく落ち着けると思っていたら、今度は嵐のようなプレゼンに追われている。何か新しいアクションを仕掛けるようなプレッシャーのかかる仕事ではないのだけど、同時に4つほど外部からプレゼン依頼を受けてしまい、その準備に追われているのだ。

僕が今受けているプレゼンの依頼は、子供達に宇宙の不思議を伝えるような目的のものではなく、あくまでビジネスとしての宇宙航空に関するものだ。前に何度か小中学生を対象に講演会のような場所で話をしたことはあるのだけれど、それとは違った意味でまた新たなチャレンジができることが嬉しい。こういう毛色の違う依頼が僕のところに舞い込むようになったこともまた、Aerospace MBAの副次的な成果だ思う。

依頼されているプレゼン一つはヨーロッパにおける商業宇宙輸送の最前線に関するものだ。講演会のメインテーマはサブオービタル飛行ビジネスなので、いわゆる宇宙旅行に関するヨーロッパ地域のチャレンジに的を絞って話をすることになると思う。僕がフランスにいたのは既に6ヶ月前だ。大企業として世界で始めて宇宙旅行ビジネスへの参入を表明したEADSアストリウム社の動きなど、この半年間の進捗をリサーチした上で、僕なりの分析コメントとともに発表しなければならない。

その他にも、宇宙ビジネスに新規参入しようとする人々の勉強会で行うプレゼン発表や宇宙航空マネジメントに関するプレゼン発表など、日本全国でプレゼン発表が控えている。これから頑張ってパワーポイントのプレゼン資料を作らなければならないのだけど、いい加減な資料を作ると間違いなく飽きられてしまうので、十分に気合を入れて取り組まなければならないと思っている。

MBAでは、企業のトップエグゼクティブとして成功するためにプレゼンスキルを極限まで磨き挙げることを求められる。そのための特別な授業も複数あったし、MBAの基礎科目や応用科目の授業の中でも何度も実践としてのプレゼンのトレーニングを積んだ。僕の考えではプレゼン能力向上に王道はなく、ただ準備と練習の量に掛かっていると思っている。

一期一会のプレゼン機会に全力投球。できることはそれだけだと思う。