宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

アンドラ公国

2007年08月31日 | MBA
 
フランスとスペインの国境にAndra(アンドラ)という国がある。ピレネー山脈の真ん中に位置する人口わずか6万人の小さな公国だ。もちろん独立国家なので、トゥールーズから車でわずか2時間でいける距離にあるにもかかわらず、この国に入るにはパスポートが必要になる。

このアンドラ公国、実際には観光ビジネスによって成り立つ観光立国だ。夏はキャンプに登山、冬はスキーにスパと、一年を通してヨーロッパ中から観光客がアンドラへと押し寄せる。確かに、ピレネー山脈の美しい景色も魅力の一つなのだけど、実はアンドラには他の国では絶対に享受することのできない、とても魅力的な特典がある。

それはずばり「免税」だ。この国では、世界中の品物が免税で購入できるのだ。具体的には、もしフランス国内で購入したら一律に課せられる約20%のTVA(付加価値税)などが、全て免除となるのだ。お酒、タバコ、電化製品、ブランド品など、ありとあらゆる商品が一年中20%以上のディスカウントで買える。これが実はアンドラの一番の魅力なのだ。

しかし、アンドラ公国はピレネー山脈のど真ん中にあって、車で行くとなると山道を登っていくしかない。もちろん、鉄道は通っていないので、公共交通機関を利用するとなると、選択肢はバスしかない。バカンスにも買い物にも最高の場所なのだけど、アクセス手段が極めて不十分なのだ。

そんなアンドラ公国の窮状に、僕のAerospace MBAのクラスメートの一人が目を付けた。アンドラ公国に小さな空港を建設し、そこから小型のプロペラ機を使ってヨーロッパ各地に直行便を飛ばそうという壮大な計画を思いついたのだ。

そして、その小型プロペラ機として選ばれたのが、僕が今インターンとして勤務しているATR社の航空機だ。短距離での離着陸性能、オペレーションコストの安さ、機体価格の安さ、そして何より、ATR本社のあるトゥールーズから近い。あらゆる面で今回のプロジェクトにフィットする航空機だったのだ。

もちろん、まだ計画段階であって、具体的にいつ実現するとかは何も決まっていない。ビジネスプランを詳細に練り上げ、アンドラ公国側と調整を重ね、地元の商工会議所などとパートナーシップを組んでプロジェクトを前に進めていかなければならない。道のりはまだまだ険しいが、現時点の採算性はGoサインを出せるレベルらしい。

観光需要はあるが空港のない地域に空港を作り、その空港にフィットする航空機を売る。一見すると回り道のように思えるけど、実はそういうビジネスの立ち上げ方が、最後には一番収穫の多い結果を生む戦略だと僕は思っている。

ジャングルに生えたバナナを探し回るのもいいが、畑に種を蒔いておくことも決して忘れてはならないのだ。

(写真はアンドラ公国の所在地)
 

中国におけるATR

2007年08月30日 | インターンシップ
 
僕がインターンとして勤務するATR社には、実は北京事務所がある。正確には事務所があるというよりも、Sales Representative(セールス責任者)をフランスから派遣し、彼の下で計3人の中国人スタッフが働いているだけの小さなオフィスだ。

今日ちょうど北京オフィスからトレーニングのために中国人スタッフがトゥールーズの本社にやってきていたので、お昼に一緒にランチをとることにした。僕は大学時代に中国語を勉強していたのだけど、ビジネスレベルの中国語会話にはさすがについていけない。自己紹介だけ簡単に中国語で済ませ、後は全て英語で会話をすることになった。

北京オフィスで働く彼女の話によると、中国では日本以上にTurboprop(プロペラ)機に対する乗客の抵抗が強いのだそうだ。ジェット機全盛の時代になぜ一昔前のテクノロジーを使って空を飛ばなければならないのか、それをなかなか理解してもらえないらしい。もちろん、乗客の抵抗感の強さはそのまま航空機の魅力度として航空会社に認識され、僕達のようなマーケティング担当者にとっては無視できないファクターとなる。

しかし、ATR社の航空機にはプロペラが付いているものの、実はジェットエンジンで空を飛んでいる。皆さんが普段乗っているようなジェット機に付いているファンジェットエンジンと基本的に同じだ。ただ、ジェット燃料を燃焼することで得たエネルギーをプロペラを回すのに用いるのか、あるいは、ブレードの付いたタービンを回すのに用いるのかの違いだ。ターボプロップ機は、昔の小型プロペラ機のようなレシプロエンジンで飛んでいるわけではない。

中国には既に5機のATR機が導入されている。その意味では、まだ一機もATR機が導入されていない日本よりも、中国のほうがマーケティング戦略的に先を行っているといえるだろう。また、韓国でも既に2機のATR機がフライトサービスを提供している。そして、今後その数はさらに増え続ける見込みだ。

環境にやさしく、運行コストが安く、値段まで安い。そんな優秀な航空機でもなかなか売れない国がこの世にあるというのだから、航空機ビジネスは一筋縄ではいかない極めて難しいビジネスだと思う。その難しさにチャレンジングな要素がたくさんあって、そこがまた僕にとっては面白い。

技術開発として成功することと、ビジネスとして成功することは、本当に全く別のものなんだと最近は身をもって実感するようになってきた。そこがインターンシップをすることの価値なのかもしれない。

(写真はアジア地区におけるATR社の進出地域)
 

バチカン航空

2007年08月29日 | 宇宙航空産業

今日面白いニュースを聞いた。バチカン航空に関するニュースだ。

バチカンといえば、カトリックの総本山であって、ローマ教皇がいる場所として有名だ。イタリアのローマ市内にあるもののイタリア国内ではなく、一つの国家として独立した存在が認められている。歩いて国内の一周旅行ができる、とても不思議な場所だ。

そのバチカンに航空会社が誕生したらしい。それがバチカン航空だ。といっても定期運行の航空会社ではなく、チャーター機を運行する航空会社らしい。つまり、旅行会社や企業などが1フライトまるごと航空会社からサービスを買い上げて、その個々の座席を個人客に販売する航空ビジネスだ。

バチカン航空の特徴は、そのフライト路線の選択にある。キリスト教の聖地に的を絞ってフライトを提供しているのだ。具体的には、前にもこのブログで紹介した「奇跡の水」で有名なフランスのルールドや、巡礼路の最終目的地として有名なスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラなど、キリスト教徒なら誰でも一生に一度は訪れてみたいと思う都市に的を絞ってビジネスを展開している。

しかも、このバチカン航空はLow Cost Airline(ローコスト航空会社)のビジネスモデルを採用している。すなわち、航空チケット自体は驚くほど安いのだけど、可能な限りサービスを標準化してオペレーションコストを削減するとともに、1フライトに多くの乗客を乗せることで利益を確保する仕組みだ。イギリスのイージー・ジェットやアイルランドのライアン・エアーなどがこのモデルを採用している。

バチカン航空の経営ビジョンは、できる限り低価格で聖地へのフライトを提供することで、一人でも多くのキリスト教徒に巡礼の夢を叶えてあげることらしい。組織の目的と公衆の利益が一致した、とても素晴らしいビジョンだと思う。このビジョンなら誰も反対することができないし、ひょっとしたら本当は少しくらいチケットの値段が高くても、この航空会社を利用する人が多くなるかもしれない。

それに、もしキリスト教の熱心な信者であれば、他の航空会社にチケット代を支払うくらいならば、お布施の意味もこめてこの航空会社を利用する人だっているだろう。ヨーロッパにおけるキリスト教の人口を考えると、このバチカン航空の潜在的な顧客層は馬鹿にはできない。すごい数になると思う。

日本ではどうだろうか。高野山航空とか本願寺航空とかを作ったら、信者の方はこの航空会社を好んで利用するだろうか。安全面の懸念が多少あるにせよ、「高野山航空で行く熊野詣の旅」とかいったら、僕は思わず「おっ」と飛びつく人がいそうな気がする。

それに、まもなく団塊世代の大量退職を迎える時期だ。お金と時間を大量にもてあましたアクティブシニア層向けの企画として、高野山航空はイケる気がする。

久々に日本に誕生する新規航空会社、「高野山航空」。ビジネスモデルを考えて、ぜひビジネスプランに落とし込んでみたい。

(写真はトゥールにあるChenonceau城へ向かう道で撮った一枚)

ATR社の記事

2007年08月28日 | インターンシップ
 
トゥールーズにまた夏が戻ってきた。朝から雲一つない澄みきった青空が広がっていて、先週までの寒さが嘘であるかのように気温もぐんぐん上がっていく。こうでなくちゃ夏を過ごした気分にならない。

トゥール・ポワティエの旅から帰った僕は、今週もまたATR社での勤務を続けている。早いもので既に勤務も3ヶ月目に突入した。そろそろ修士論文の準備も含めて、成果のまとめに入らなければならない。

そんなことを考えていたちょうどその時、日本にいらっしゃるあるお方からホットなニュースを送っていただいた。ATR社のことが日本のビジネス誌で記事になっているというのだ。僕はワクワクしながらファイルを開いてみた。

タイトル:『小型旅客機の価格破壊者 仏ATR参入で国産ジェットに新たな不安』

いかにも衝撃的なタイトルだ。『価格破壊者』なんて激安スーパーの安売りセールに使う表現であって、一機何十億円もする航空機に使うべき言葉ではない。航空機のカタログ価格はあってないようなもので、全ては交渉次第で決まる。売手の交渉力、買手の交渉力、マーケットの状況など、あらゆる要素が複雑に絡み合って航空機の価格は決定されるのだ。それを小売店と同じレベルで表現してしまっているあたりに、センスと知識の無さを感じてしまう。

書かれている内容は、今年6月にATR社の親会社の一つであるイタリアのフィンメカニカ社の幹部が日本を訪れ、日本市場への参入を正式に表明したというもの。僕の直属のボスであるGianni副社長の名前も出ていて、カナダのボンバルディア社が独占する日本の小型機市場に対し、ATR機の運行コストの安さをウリにして各航空会社にアピールしていく、といったことが書いてある。

面白いのは、三菱重工業が中心になって現在開発を進めている国産ジェット機への影響を大げさに心配している点だ。「新たな強敵が出現!」といった論調で、まるでATR社が日本の国産ジェット機の未来を潰そうとしているかのような語り口だ。まあ、このタイミングで新規市場参入を仕掛けるのだから、そう受け取られても仕方がないのかもしれない。しかし、ちょっと大げさだと僕は思う。

三菱ジェットの価格が一体いくらになるのかは正確には分からないが、僕の予想ではおそらくATR機の2倍から2.5倍くらいの価格帯になるのではないかと考えている。もし競争が発生するとすれば、それは決して価格競争ではなく、Value(価値)の競争になるはずだ。顧客が求めるスペックを、顧客が満足して支払えるのレベルの対価で提供できるかどうかが勝負なのだ。

ATR機が日本の空を飛ぶ日は、それほど遠くないかもしれません。

(写真は日経ビジネス7月16日号より)
 

Futuroscope

2007年08月27日 | フランス
 
トゥールで古城めぐりを一通り終えた翌日、僕は次なる目的地であるPoitiers(ポワティエ)へと向かった。週末を利用した2泊の旅行とはいっても、トゥールーズまで車で帰るには6時間もかかる。月曜日からまたATR社での仕事があることを考えると、自由に使える時間はあと半日しかない。

僕は迷わずポワティエ郊外にあるFuturoscope(フュチュロスコープ)を訪問することにした。ここは世界でも珍しい「映像」をメインとしたテーマパークだ。各企業の協賛の下、最先端のテクノロジーを使って地球と自然と宇宙と未来を映像で表現してあるらしい。

このフュチュロスコープを一言で表現すると、「愛知万博」の常設版といった感じだ。斬新なデザインのパビリオンが次から次へと姿を現し、各パビリオンの入り口に「今なら何時間待ちです」という表示がしてある。このあたりは、数年前に行った愛知万博を思い出させてくれる。

当時の記憶とまったく違うのは、驚くほど混んでいないということ。この日は8月の最終日曜であるにもかかわらず、駐車場はほぼガラガラで、アトラクションも最大待っても30分程度だった。日本では考えられない空き具合だ。

その理由は30分もしないうちに判明した。内容が古いのだ。これは10年くらい前に作られたのではないかと思われるIMAXを、未だに上映し続けているのだ。よく見ると、会場内には「20周年記念!」の旗が至る所に掲げられている。そう、フュチュロスコープは今年で開業20周年。施設も内容も、全て20年のビンテージものなのだ。

開業20周年を記念したスペシャル・イベントがたくさん開催されているとパンフレットには書いてあるのだけど、どこを探しても何もやっていない。東京ディズニーランドのようにキャラクター達がパーク内を歩いてお客さんとコミュニケーションをとるといったことも当然ない。ただただ、スタッフの待つ各パビリオンを訪問し、内部で上映されている映像を楽しむ。これを延々と1日中繰り返す。僕は1時間もしないうちに飽きてしまった。

さらに驚くのは、午前10時からテーマパークはオープンしたのだけど、ほとんどのアトラクションは営業開始が11時30分と書いてある。それまで僕達はパーク内で一体何をすればいいのだろうか。散歩か?ピクニックか?それとも、ただ待てということなのか。

もっと驚いたのは、トゥールーズにある宇宙のテーマパークCite de L’espace(シテ・ド・レスパス)と全く同じ展示が、全く同じスタイルで、全く同じような場所に設置されていたことだ。人工衛星の画像を使って宇宙から眺めた地球を紹介するという展示なのだけど、写真もアイデアも全てが一緒。同じ会社が経営しているとしか思えない手の抜きっぷりだ。

フュチュロスコープに失望してしまった僕は、これ以上見るべき斬新なものはここにはないと判断して、一路トゥールーズへと早めに戻ることにした。既に払ってしまった1日フリーパス入場券33ユーロ(約5,0000円)が本当にムダだった。でも、これも経験のうちだ。

もし、お腹いっぱいになるまでIMAXを堪能したいという人がいたら、フュチュロスコープは最高の場所だと思うので、一度行ってみてください。パリからTGVで行くことも出来ます。

(写真はフチュロスコープの展望タワーから撮った一枚)

庭園の美しさ

2007年08月26日 | フランス
 
アンボワーズ城を後にした僕は、そのまま車を走らせて次の目的地であるChenonceau(シュノンソー)城へと向かった。途中で道を間違えて30分近く時間をロスしてしまったのだけど、フランスの田舎道をドライブできたと思えば少し得した気分になれる。慣れない土地での運転で起こることは、全て前向きに受け入れよう。

Chenonceau(シュノンソー)城はとても美しいお城だ。(一昨日の写真参照)その一番の特徴は、川の上に城が建てられているところにある。つまり、お城の入り口が川のこちら側にあり、出口が川の向こう側にあるのだ。川に架かる橋がお城になっているのか、お城が橋になっているのか、よく分からないお城でもある。

僕の中ではお城巡りというのは、建築様式やデザイン、内部の調度品と絵画などを見て当時の生活に思いを巡らせるところに醍醐味がある。このシュノンソー城の内部には、当時の寝室や食堂の様子などが再現されていて、華麗なる貴族生活の一部を垣間見ることができる。

本当ならばそれぞれのお城ごとにもっとゆっくり見学したいのだけど、時間がお金よりも貴重な僕のフランス留学生活ではそうも言っていられない。見られるものは全てこの目で見て、体験できるものは全てこの体で体験し、日本には決して存在しない異質なものに可能な限り多く触れておく必要がある。そうすることが、今後の人生において僕のCreativity(創造力)を高めてくれる鍵になると信じている。

僕は次なる目的地であるVillandry(ヴィランドリー)城へと先を急ぐことにした。もう時刻は夕方5時を回っている。早くしないとフランスの最高傑作と呼ばれるヴィランドリー城の庭園を見学することができない。

噂に聞いていたヴィランドリー城の庭園は、西洋特有の左右対称の美しさを極限まで追求した素晴らしい庭園だった。ただ単に均整が取れていて美しいということだけではなく、1ブロック進むごとに別のテーマが表現されていて、庭を歩くこと自体がちょうど物語を読み進むのと同じようなワクワク感を感じさせてくれる。

例えば、装飾庭園では4つの異なる「愛」が表現されている。一つ目は「優しい愛」で、シンプルにハートがデザインされている。2つ目は「熱烈な愛」で、入り組んだ迷路のような構図になっている。3つ目は「移り気な愛」で、浮気のシンボルカラーである黄色を基調とした色使いがなされている。浮気のシンボルカラーが黄色であること、そして、そんなものが存在すること自体がフランス的で面白い。最後の4つ目は「悲劇的な愛」で、愛をめぐる決闘によって流れた血を表現するために、赤い花一色で全体が染められている。こんな感じだ。

この庭園なら何時間歩いていても飽きない。それに、視覚的な刺激を次から次へと受けることによって、頭の中にどんどんクリエイティブなアイデアが沸いてきそうな気がする。

ここの城主だった人が本当に羨ましい。一度でいいからここに住んでみたい。

(写真はヴィランドリー城の庭園)
 

レオナルド・ダ・ヴィンチ

2007年08月25日 | フランス
 
Tours&Poitiers(トゥール・ポワティエ)といえば、世界史を習ったことがある人なら一度は聞いたことのある地名だと思う。8世紀にフランスを支配していたフランク王国のカール・マルテルが、激しい戦闘の末にイスラム教徒を撃退した場所として有名だ。確か、トゥール・ポワティエの戦いは732年だったと思う。

トゥール・ポワティエの旅1日目の今日は、トゥール周辺に点在するシャトー(古城)を巡る。古城はトゥールの町を中心とした半径60kmの範囲内に点在しているので、車がないと思い通りの観光はできない。そのためにわざわざ数百キロも運転してトゥールーズから車でやってきたのだ。

まず最初に向かったは、トゥールから一番遠い距離にあるChambord(シャンボール)城。16世紀のフランソワⅠ世によって建てられた、趣味の「狩り」を楽しむための城らしい。趣味とはいってもそれはフランス国王の趣味。当然、スケールは全然大きい。

彼はイタリア遠征によってルネッサンスの影響をかなり受けたようで、このお城のデザインにもイタリア・ルネッサンスの革新的な建築が多数取り入れられていた。昇り降りする人々が決してすれ違うことのない二重らせん階段は、本当にトリッキー、かつ、見事なデザインだった。一説にはレオナルド・ダ・ヴィンチの発想によると言われているのも、なんとなく納得できる。

シャンボール城のテラスでフランス国王の気分を満喫した後、僕はロワール川のほとりにあるAmboise(アンボワーズ城)へと向かった。ここには、なんとレオナルド・ダ・ヴィンチのお墓がある。イタリア人だとばかり思っていたのだけど、彼はフランソワⅠ世に招かれて晩年をここトゥールで過ごし、そのままフランスで没したらしい。

お城の近くにはレオナルド・ダ・ヴィンチが住んでいたという家も残されていて、今は博物館として一般に公開されている。イタリア人の独創的な発想に魅了され続けている僕としては当然見学したいところなのだけど、どうせならイタリアに行って本家本元のレオナルド・ダ・ヴィンチの作品に出会いたい。ここフランスで展示されているのは全てレプリカだと思うので、残念だけど今回は我慢しておこう。

それに、明日はもう一つの目的地であるポワティエに行かなければならない。あともう2つほど観ておきたいお城があるので、僕はアンボワーズ城を駆け足で観て回った後、次なる目的地のChenonceau(シュノンソー)城へと向かうことにした。

(写真はトゥール近郊のシャンボール城。)
 

トゥール・ポワティエの旅

2007年08月24日 | フランス
 
今日は8月最後の金曜日。長~いバカンスを終えてそろそろ仕事に復帰しようかな~という人も増えてきた。僕のボスであるFomica副社長もイタリアから戻ってきて、午前中のみオフィスに出勤。挨拶に行くと本当は来週まで出勤する予定ではなかったのだけど、CEO(最高経営責任者)とのミーティングが急に入ってしまい、仕方なく出社してきたとのこと。バカンス中にたまった何百通というメールの山に愕然としている様子だ。

僕は午後の仕事を一通り終えると、今日だけは急いでATR社を後にした。実はこの後すぐにTours&Poitiers(トゥール・ポワティエ)への週末小旅行に出かける予定になっている。明日の朝からは世界遺産であるトゥールのChateau(シャトー:古城)巡りをする予定だ。

僕は急いで荷物をパッキングすると、友達と待ち合わせをして一路トゥールへと車を走らせた。トゥールまでは車で約6時間。途中で2回の休憩を挟み、無事11時30分頃にトゥールへと到着した。

今日宿泊するのはFormula 1(フォーミュラ・ワン)という名のホテル。前にこのブログで一度紹介したことのある、卓越したオペレーション戦略で有名なホテルだ。MBAの教科書にもベスト・プラクティスの一つとして掲載されている。

有名といっても、サービスの質がいいとか、ゴージャスで料金が高いという意味ではない。実際は全く逆で、サービスは完璧なまでに標準化されており、顧客の要求などは聞いてもくれない。シンプルなオペレーションに徹底的にこだわり、超低コストな宿泊サービスの提供をウリにしているのだ。

僕がパリに滞在していた時にいろいろトラブルに悩まされたホテルの料金は、一泊約90ユーロ(約15,000円)程度。ここトゥールにあるフォーミュラ・ワンホテルの一泊の料金は、なんと31ユーロ。しかも、これでハイシーズン料金で、10月から3月までは一泊28ユーロ均一になる。

驚くのはこれが一室の料金であって、基本的に3人まで泊まれる室内に何人泊まっても料金は同じになるという点だ。つまり、一人で泊まっても、3人で泊まっても、支払う料金は31ユーロなのだ。

もし、3人で泊まるとすると、一人10ユーロ程度になる。これは一般的なユースホステルの一泊の料金よりも安い値段だ。それでいて共同部屋ではなく、個室が割り当てられるというのだから、当然繁盛するわけだ。

今夜もフォーミュラ・ワンは満室。Profit Margin(利幅)は少なくても、しっかりと利益をあげる体質が構築されているなあ~と感心してしまったのでした。

(写真は明日訪問する予定のトゥール近郊にあるシュノンソー城。)
 

StrategyとManagement

2007年08月23日 | MBA
 
今日ATR社の僕の部屋でコーラを飲みながらふと考えたことがある。Strategy(戦略)とManagement(マネージメント)の本質的な違いとは一体何だろうかということだ。

僕の中で戦略立案とは「0.1%でも勝つ可能性の高い方策を考えること」と定義されている。しかし、よく考えたらマネジメンも「0.1%でも目的を達成できる可能性の高い方策を考え実行すること」と定義できるような気がしてきた。これらの違いは一体どこからくるのだろうか。それが今日突然僕の頭の中に降って沸いてきた疑問だ。

僕はUSBキーに大切に保存してあるMBAのファイルを復習してみることにした。今担当しているATR社のビジネス開発戦略に全く関係ないということもないので、ちょっとくらい仕事を中断しても問題ないだろう。基礎科目で習ったこと、プロセスワークショップの資料、選択科目のファイルなど、1時間くらいかけて大体の資料にざっと目を通してみた。

その中で限りなく答えに近い情報を僕に与えてくれたのが、オペレーション戦略を担当してくれたUche教授の講義ノートだった。オペレーション戦略とオペレーションマネジメントの違いを、4つの視点からクリアーに説明してくれている。

まず、Time-Scale(時間的な軸)でいうと、「戦略」が1年~10年という長い期間における需要の変化にどう対応するかを考えるのに対して、「マネジメント」は最大でも1年間という期間の中での需要の変動をどうやって平準化して乗り切るかを考える。期間、そして、需要への対応の仕方という違いだ。

次に、Level of Analysis(分析のレベル)でいうと、「戦略」がMacro(マクロ)な視点からNetwork(ネットワーク)全体を俯瞰して考えるものであるのに対し、「マネージメント」はMicro(ミクロ)な視点からProcess(プロセス)に着目して考える。どこに立ち、どこを見て考えるかという違いだ。

次に、Level of Aggregation(まとめのレベル)でいうと、「戦略」が大体のレベルでまとまっていればいいのに対し、「マネージメント」ではDetailed(詳細)なレベルでのまとめが要求される。最終的に求められるアウトプットのあり方の違いだ。

最後に、Level of Abstraction(抽象度)でいうと、「戦略」がPhilosophical(哲学的)であっても良いのに対し、「マネージメント」はよりConcrete(具体的)でなければならない。思考の質の違いと言ってもいいかもしれない。

こんな感じでUche教授の講義ノートは見事に僕の疑問に答えのキッカケを与えてくれた。MBAの授業に出ていた頃には考えもしなかったことなのだけど、こうして振り返ってみると、極めて奥が深い内容を実際に僕は学んでいたことが分かる。

まだ時間はある。習ったことをしっかり消化して、自分のモノにしていこう。

(写真はAerospace MBAにおけるUche教授の講義ノートより。)
 

オフィスは遊び場

2007年08月22日 | インターンシップ
 
フランス&イタリアの合弁企業であるATR社で勤務をしていると、オフィスは基本的に退屈な場所であって、そこでいかに楽しく過ごすかに全力投球しているしている姿をよく目にする。その中でも今日の出来事は僕にとって少し衝撃的だった。

何が起こったかというと、ラジコンヘリコプターが僕の部屋の中へと進撃してきたのだ。犯人は同じくMarketing(マーケティング)部門で勤務するクリスティアンとギョーム。彼らは実際に顧客の元へと航空機の売り込みにいくセールスエンジニアだ。

ちょっと見えづらいかもしれないのだけど、写真では2機のヘリコプターが僕の部屋の中を旋回している。別に特定のミッションがあるわけではなくて、時々僕のパソコンの上に着陸したり、僕めがけて急降下で向かってきたりするだけだ。簡単に言うと、真面目に仕事に取り組む日本人の僕をなんとかして彼らの世界へ引き入れようと、あの手この手で「一緒に遊ぼう~!」と誘っているのだ。

ここまでやられるとさすがに仕事にならないので、僕も彼らの要求に応じてラジコンヘリで遊ぶことにした。プライベートでは実際のヘリコプターパイロットであるクリスティアンから大体の操縦方法を教わり、さっそく僕は人生の中での初フライトを経験した。

スロットルのレバーを上げるとヘリコプターのプロペラはどんどんと回転速度を上げ、やがてゆっくりと上昇していく。天井にぶつかってはいけないので、ある程度でプロペラの回転速度を落として機体を安定させる。ちょうどヘリコプターが空中に静止するホバリングの状態だ。

ホバリングが上手にできるようになったので、今度は左右のレバーを使ってゆっくりと左旋回、右旋回を繰り返してみた。レバーに加える力加減をちょっと変えるだけで、ヘリコプターは進路を変えて僕の意志とはまったく逆の方向に飛んでいく。やる前の印象とはまったく違って、これは本当に楽しい。雨の日には家の中でも遊ぶことができるスグレものだと思った。

聞いた話でしかないのだけど、インターネット検索大手のグーグル社では、会社の中に遊び道具を持ち込むのが当たり前になっているらしい。仕事と遊びとの境界を取り払うことで、遊び感覚から生まれるCreativity(創造力)を仕事のアウトプットへ進化させていこうという意図的な政策なのだ。今日僕がオフィスでやったことは、まさしくそれに近い。

仕事を楽しみ、クリエイティブな成果を出す。そのためには退屈なオフィスであってもとにかく遊ぶ。なんとなく理屈が通っているような気がするのは僕だけだろうか。

ラジコンヘリコプター、フランスで買うと40ユーロ(約7,000円)だそうです。日本のオフィスでやると間違いなく怒られると思うので、くれぐれもご注意ください。

(写真は僕の部屋を旋回するヘリコプター。仲間に誘われ僕も一台購入予定。)