以前にインターンシップの探し方に関する質問があったので、今日はその回答です。質問をされた方、そして、これからMBAを目指そうとされている方の参考になれば幸いです。
僕の個人的な経験では、MBAプログラムの中で最もストレスフルな時間、それがインターンシップ探しの時間だ。3時間ぶっつづけの英語での筆記試験も大変だったけど、精神的なプレッシャーという意味では、インターン探しが一番キツかったと思う。
まず、一番大事なのは、企業の人とのネットワーク作りだ。希望するインターンシップを得られるかどうかは、このネットワーク作りに始まってネットワーク作りに終わると言っても過言ではない。そのくらい大事だ。とにかく、あらゆる機会を見つけて企業の人と知り合いになり、自分に対して好印象を持ってもらうことが必要だ。
大事なのは、この「好印象を持ってもらう」という部分で、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるでは、間違いなく本当のチャンスを逃す。アンテナは広く遠くまで広げつつも、自分が目指す本当の獲物(希望する企業)だけを見つめて、その対策を練る必要がある。
一番のチャンスは、その企業の人がビジネススクールに講師として来校した時だ。この瞬間を逃してはならない。しかし、同時にガツガツと攻めてもダメだ。なぜなら、人気のある企業の場合、クラスのほぼ全員が名刺を持って講師の前にならぶため、自己紹介のためだけに15分以上待たされることもあるからだ。
一度にそんなにたくさんの自己紹介をされた講師の側もたまったものではない。丁寧に名刺を返してくれるものの、きっと顔も名前も覚えてはくれないだろう。授業が終わった後の長~い列に並んでも、効果はほとんどない。
僕は日本にいるときに人事で採用担当をしていた時期があるので、このあたりの裏事情は知り尽くしている。企業の人間がどういう風に感じて、何をする学生が最も印象に残るか、実体験を通して学んだのだ。その経験が大いに役に立った。
一番の勝負時は、あくまで僕の個人的な経験に基づく考えなのだけど、ずばり授業中にある。授業の中でいかに企業側にとって“Added Value(付加価値)”を感じさせる発言ができるかどうか、それが勝負の分かれ目だ。すなわち、授業の中でその講師が抱えている業務上の課題を敏感に察知し(分からなかったら質問してもいい)、その課題に対して自分にしかできない情報提供の可能性を講師に感じてもらうのだ。
もちろん、その場で立派な解決策なんて思いつけるはずもないので、はっきりと断定的に答えを示すことなんてできない。それをやろうとすれば、逆に安易な考えになって、安っぽく思われてしまう可能性のほうが高い。ただ、その講師がまだ気づいていないであろう解決策の方向性だけでも感じてもらえれば十分なのだ。これに講師が興味を示して、授業を少し中断してでも話を発展させようとしはじめたらもう完璧だ。この講師は100%僕の顔と名前を覚えてくれている。
ということで、本当に意味のあるネットワークは、授業の前にも後にもなく、授業中にある。それが、僕の実体験に基づく結論だ。言い換えれば、授業の中で自分自身を差別化する、それが僕の戦略だった。フランス語も話せず、航空分野で働いたこともなく、マーティングの実務経験もない、日本人の僕が、ATR社でのインターンシップを獲得できたのはこの戦略の成果だと思う。
最後に、ちょっと長いのだけど、今年の11月からAerospace MBAに進学する日本人のMr.Bさんから、MBAの学校選びに関して的確なアドバイスと思われる情報を送ってもらったので、この場を借りて紹介したい。僕の考え方に極めてマッチしている。
『留学先を決める際にグローバル企業が本社を置く都市にある大学を選ぶことをすすめたい。それもできればNYのような大都市ではなく、中都市くらいならばなおよい。なぜか。その町で勉強する間に、そのグローバル企業に勤める人と知り合いになるチャンスが訪れるからだ。(中略)米国アトランタに本社がある事で有名なコカ・コーラ社。アトランタにはエモリー大があるがあまり有名ではない。ただし、コカ・コーラとはゆかりの深い大学であり、同社と深く密接な関係を築いているのだ。(中略)そこで、私が自費留学をするならば、高額の授業料を払ってハーバードに行ったりはしない。マーケティングでキャリアのショートカットを図るならエモリー大学ゴイズエタ・ビジネススクールで学び、在学中にコカ・コーラのアトランタ本社に勤める人々との人脈を作る。』
~『役に立つMBA 役に立たないMBA』小松俊明著 より抜粋~
Mr.Bさん、情報提供どうもありがとう!
(写真はピレネー山脈の湖で撮ったもう一枚)