宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

Aerospace MBA

2006年08月31日 | MBA
 
今日は久しぶりにスーツを着た。Ecole Superieure de Commerce de Toulouse(ESC)のMBAディレクターに会うためだ。毎日スポーツで汗を流しているためか、ズボンが少しゆるくなっている感じがする。このままどんどんスリムな体型になってゆくのだろうか。

さて、そんな僕の体型の話は置いておいて、将来この学校(ESC)を目指そうという人のためにディレクターからの話を簡単に紹介したいと思います。

<MBAディレクターからの話>

●現在、そして近い将来も含め、宇宙航空ビジネスが抱える課題は大きく分けて以下の4つだ。そして、これらの課題を見事にクリアできる若く有能なマネージャーを養成するために、このAerospace MBAは存在する。
 (1)統制型ビジネスから自由競争型ビジネスへの移行
 (2)グローバライゼーションのさらなる拡大
 (3)新技術へのリアルタイムな対応
 (4)ベビーブーム世代の大量退職

●ESCとしては、学部・修士も含め全部で30以上のプログラムを提供している。このAerospace MBAは、Consulting Management MBAと並びこの学校の中で最上位に位置するプログラムだ。インテンシブかつハードなので覚悟しておいてほしい。

●最初の数ヶ月はビジネスマネジメントの基礎理論を徹底して学ぶ。ストラテジー、マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、ヒューマンリソース、ロジスティクスなどの科目だ。もちろん、使用するケースやプレゼンのテーマは宇宙航空に関連したものになるので、このプログラムはあらゆる観点から宇宙航空につながっていると考えてもらいたい。

●基礎理論をしっかり修得した後は、宇宙航空ビジネスの実践面をより具体的に学ぶ。エアラインビジネス、エアポートマネジメント、エアロジスティクスビジネス、スペース&ディフェンスなど、各自の興味に従って自由に履修することができる。

●そして最終的にほぼ全員が企業や研究機関でのコーポレートミッションに取り組む。3ヶ月~4ヶ月間のインターンシップだ。ここでよい結果を残せば、MBA終了後すぐにその企業のマネージャーポジションを得ることも可能だ。

●最後に、皆さんが気になるであろうデータを参考までに紹介しておく。このAerospace MBAプログラムは、フランス国内のMBAランキングでもTOP5に入っており、最も権威ある3つのMBA認証機関からすべて認証を受けている世界29校のうちの1つである。Aerospace MBA卒業生の平均的な年収は75,000ユーロ(日本円で約1,000万円)で、データ上では1年後にさらに22%、2年後には35%年収はUPしている。努力次第で輝かしい未来が待っているということだ。

と、ざっとこんな感じでプレゼンは終了した。

その後質疑応答タイムが続いたのだけど、ディレクターのプレゼンの中で知識に加え“ヒューマンスキルの重要性”が指摘されていたので、ちょうどその内容が僕がフランスにくる直前に担当していた仕事とかなり関係していたこともあって、自分のビジネス経験を踏まえてコメントしたところ、以下の答えが返ってきた。

●君の意見にまったく同意する。だからこそ、我々もビジネス理論と並行してヒューマンスキルの修得を最も重視している。プレゼンテーションスキル、コミュニケーションスキルなど、これらの有無が将来CEOになれるかなれないかを左右する重大なファクターだ。MBAの卒業式には毎年エアバス社(航空機メーカー)やスネクマ社(航空機エンジンメーカー)のCEOをゲストに呼んでいるが、皆驚くほど共通してヒューマンスキルが飛びぬけて高い人ばかりだ。知識の有無は現時点における差異でしかないが、ソフトスキルの有無はこれから長い時間をかけて君の人生に大きな差を生む(make a huge differnce)だろう。このことをずっと心に留めておいてもらいたい。そうすれば君はきっとこのMBAで大きなものを手にして日本へ帰国できるはずだ。

最後に、今日のディレクターからの言葉で最も僕の心に響いた言葉を紹介します。

“The more you put to the MBA, the more you get from the MBA”

やる気が100倍になったスピーチなのでした。

カルフール

2006年08月30日 | その他
 
キャンパス内で車を持っている学生は少数なので、僕はいつもみんなを連れて一番近いカルフールへ買い物に行っている。車で約15分の距離だ。みんな、ここぞとばかりに1週間分の食料を買い込むのだけど、やはり買い物スタイルには男女間で大きな差が出てしまう。

男性陣はスーパーに行く前から何を買うかを既に決めていて、店に着いたらその売り場へと直行するので、30分程度で買い物が住んでしまう。それに対して女性陣は、スーパーに到着して周りを見まわしながら何を買うかを考え始めるので、当然すごく長~い時間がかかる。そのギャップたるや、本当にすごい。

僕を含む男性陣はいつもこの長~いギャップ(1時間以上)をカルフールのベンチに座って耐えねばならない。だけど、この時間は僕にとって格好のフランス語の練習の時間になっている。おかげで簡単な会話ならみんなとフランス語で会話できるようになったし、いろんな国の文化や習慣を学ぶことができるのだ。

Time is money. ここフランスでのあらゆる時間をとにかく貪欲に、有効に使っていきたい。


※フランステレコムの工事ミス(決して認めないとは思いますが)により、キャンパス内のあらゆるインターネット回線が断絶していたため、ブログ更新がちょっと遅くなりました。

Stay hungry, stay foolish!

2006年08月29日 | MBA
 
アップルコンピュータの創業者であるスティーブ・ジョブス氏は、僕が尊敬する経営者の一人だ。今日はそのスティーブ・ジョブス氏が行ったあるスピーチについて。

このスピーチはスタンフォード大学の卒業式の場で行われたものだ。もちろん、同氏の前にいるのはこの日見事にスタンフォード大学の学位を取得した学生達だ。

スタンフォード大学といえば、言わずと知れた米国西海岸の超有名エリート校。その卒業生といえば、まぎれもなく米国社会のトップエリートの仲間入りとなる。そのトップエリートの卵達に対して同氏が贈った言葉が、実に明朗快活にして深みに満ち溢れているのだ。

キーワードは、“Stay hungry, stay foolish!"

ぜひこのキーワードを頭の片隅においた上で、彼のスピーチを聞いてみてほしい。

 ■スティーブ・ジョブス氏のスピーチ(英語、約15分間)

僕がMBAアプリカント(受験生)だった頃、毎日のようにこのスピーチを聞いて自分を鼓舞していました。そのくらい熱くなれるスピーチです。どうしても紹介したくて、あえて今日のテーマに選んでみました。

最後に、臨場感を味わうためにぜひ英語で聞いてほしいのだけど、どうしても英語は苦手だという人のために、日本語訳のサイトを紹介しておきます。

 ■スピーチの日本語訳サイト

(写真はスタンフォード大学のHPより)

Thai Tea

2006年08月28日 | その他
 
タイ人の女の子のRATA(タイ語で“Happiness”を意味するらしい)から素敵なプレゼントをもらった。特製のThai Teaだ。(写真)

ミネラルウォーターの空容器に入っているのはご愛嬌で、中身は本当においしい。本場の香りがする。それに思っていたほど甘くない。

僕は正直に言って甘い食べ物や飲み物があまり得意ではないのだけれど、だいぶ前に僕が甘いものは苦手なんだ!とどこかで言ったのを覚えていてくれたらしく、いつもより特別にコンデンスミルクの量を減らして作ってくれたのだそうだ。その何気ない心配りに感謝だ!タイの女性は本当にやさしい。

日本にいた頃は毎日のようにスターバックスコーヒーを飲んでいたけど、これからはThai Teaに鞍替えしようかなあ~なんて思っている。そのくらいおいしかったのでした。

日本庭園

2006年08月27日 | フランス
 
ここ3日間連続して僕の演説のような内容が続いてしまったので、今日は少し趣を変えて、ここトゥールーズにある日本庭園の話。

これまでに僕が聞いた限りでは、フランス人はアジアの中でも特に日本という国に良いイメージを持っていて、その美しい四季や繊細な料理、武士道精神や禅、空手といった日本人の精神性に、何か憧れのようなものを抱いているところがある。この日訪れた日本庭園でも、地元フランスの人々がいつもとは何か違った“Soulful”な安らぎを求めて、あえてこの場所を選んで散歩しているように感じられた。

庭園内にアジア人の僕がいることを見つけると、早速「もしかして、君は日本人なのか?」と尋ねてきたフランス人がいた。「Oui, je suis japonais.(はい、私は日本人です)」と答えると(う~ん、教科書どおりだ!)、日本庭園の中で日本を味わおうとしているまさにその時に日本人に巡り会えたことが相当嬉しかったらしく、今日はトレビアンだ!とかなり満足げな表情で握手を求められた。最初は僕も彼が何者か分からなかったので戸惑ってしまったのだけど、ただの気の良いフランス人のおじさんだと分かると、その後は気軽に会話をすることができた。

結局このフランス人のおじさんから日本庭園についていろいろ質問されることになったのだけど、あやふやなながらも記憶から知識を捻り出してなんとか全て答えることができた。これは事前の勉強の成果だ。フランスに来る前にお金と時間をかけて2度も京都観光をしておいて本当によかった。生きたお金の使い方とはまさにこのことだ。価値を生む先行投資だった。

ところで、突然ですがここで皆さんにクイズです。このフランス人のおじさんが日本庭園について一番感心していたことは、一体何だったでしょうか?


Thinking time...

Still continue...

Time's up!


答えは、「借景」というコンセプト。庭園を構成するのはその中にある池や石や木や生き物だけではない、遥か遠くに望む山並みさえもその庭園の景観の一部としてデザインしてしまうあの技法のことだ。ここトゥールーズの日本庭園では周りの一部をビルに囲まれているので、残念ながらあの素晴らしい京都の「借景」の再現のようにはいかない。それでもなんとか「借景」を再現しようと努力する姿勢は見られた。数千キロ離れた異国の地にしては十分な出来だったと思う。

そしてこの日本庭園、実は僕がこれから通うことになるEcole Superieure de Commerce de Toulouseから歩いて数分の距離にある。MBAの新たなクラスメートといつかこの場所でランチしながら日本の将来について意見を聞くのが楽しみだ。ぜひ彼らなりの日本観を聞いてみたい。

ちなみに、写真中央にある小高い山のような部分が、、、

“フジヤマ”

なのだそうです。。。許してやってください。。。。。ここはフランスです。

欧州、フランスを選んだ理由(その3)

2006年08月26日 | MBA
 
今日でついに「欧州、そしてフランスでMBAを取得することを決めた理由」の最終回です。(全3回シリーズ)


<欧州、そしてフランスを選んだ理由(その3)>

■宇宙航空の風に吹かれながら新しいビジネスモデルを考えてみたい!

昔アメリカに滞在していた頃、アップルコンピュータの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の話を聞く機会があった。僕が尊敬する経営者の一人だ。当時世界的に一大ブームを巻き起こした“iMac”に関する話だったと思う。

同氏の言葉で今でも僕の心から離れない言葉がある。それはこんな言葉だ。

『なぜiMacがあんなに明るく、ポップで、人を楽しい気持ちにさせるのかって?それは、カリフォルニアの風を感じながら作ったからさ。』

僕はこの言葉の意味をこう解釈している。「その分野で傑作と呼ばれるものを生み出したければ、その目指すものにふさわしい環境に自分を置く必要がある。」

また、作曲家の千住明氏はその昔、恩師からこう言われたそうだ。

「君がこの世で最高に美しい音楽を生み出したいと思うのならば、この世で最高に美しいといわれるものに囲まれた暮らしをしなさい。最高の食事、最高の絵画、最高の文化、最高の美に囲まれた環境でなければ、決して最高に美しい音楽は生まれない。」

ということで、論理必然性が見えにくい!という批判は十分承知した上で、ビジネスとして成立する新しい宇宙航空の使い方を考えるためには、やはり宇宙航空分野で最高のものに囲まれた環境に身を置く必要があると僕は判断した。

ここトゥールーズには、エアバス社、アストリウム社、CNES(フランス宇宙機関)など、ヨーロッパの主要な宇宙航空関係機関が集結している。企業や研究機関だけではない、フランス中の有名な宇宙航空の学校さえもここトゥールーズに集まっているのだ。いわば、働く者にとっても、学ぶ者にとっても、ここトゥールーズは宇宙航空産業のメッカなのだ。そのため、地元フランスの人々は、この地域のことを「宇宙航空バレー」と呼んでいる。(アメリカのシリコンバレーのように!)

毎日のように宇宙航空の風が吹く最高の場所で、最高の環境に囲まれながら、最高のビジネスアイデアを考えたい、それが僕がフランスのトゥールーズを選んだ最後の理由だ。


ということで、今日まで3回に分けて「欧州、そしてフランスでMBAを取得することを決めた理由」を紹介してきました。

実際、「なぜMBAを取得したいと思ったのか?」、「なぜフランスを選んだのか?」については、多くのMBAアプリカント(受験生)や将来的にMBAを取得したいと思っている人から聞かれる質問です。なので、もちろん個別にメールで回答もしているのですが、広くこのブログで僕なりの理由を公開することにしたものです。

こんなカタイ内容を最後まで読んでくださった皆様、本当にどうもありがとうございました。

その他、もし、ブログで書いた以外のことで質問やプライベートな相談等があれば、気軽に下記のメールアドレスまで送ってください。筆者の会社のメールアドレスを知っている人は、そちらに送ってくれてもOKです。

 メールアドレス:aerospacemba@goo.ne.jp

では、また明日からの『宇宙航空MBAブログ』もお楽しみに!

欧州、フランスを選んだ理由(その2)

2006年08月25日 | MBA
 
昨日に引き続き、僕が欧州、そしてフランスでMBAを取得することを決断した理由を紹介したいと思います。


<欧州、そしてフランスを理由(その2)>

■多様な言語・文化が交錯する場で真のグローバル人材を目指したい!

グローバル人材になりたい!と言ったとき、必ず聞かれるのが、「グローバル人材って一体何?」という質問だ。これについては今までいろいろ考えてきたけど、僕なりの定義は、“自分の核となる文化を誇る勇気と、それ以外の文化を寛容に受け入れる度量を兼ね備えた人材”のことだ。

このような資質を身に付けるために一番大切なことは何か?それは、とりまく環境が極めて多様であることだ。多様であればあるほど、個人が接する“自分とは異なるもの”の数は多くなる。そして、勇気を持ってそれらの異質なものに接し、少しずつ理解を深めていくことで、やがて本物の“グローバル人材”に近づくことができると僕は信じている。

アメリカのMBAについてリサーチしたとき、その人数構成に驚いた。ほとんどのMBAスクールはアメリカ人が70%以上を占めていたのだ。ある一つの国の国民が、ある一つの集団の中で70%を占めていたら、その集団はもはや多様であるとは言えないのではないだろうか。

もちろんアメリカ自体が実に多様な民族により構成されていて、移民も多いことを考えれば、それだけでMBAプログラムに多様性が確保されていると言えなくもない。しかし、アメリカMBAの膨大な学費を考えれば、MBAを目指すような学生は、アメリカ社会の中の上位数%でしかないはずだ。一つの国の国民の、しかも、そんな限定された層だけで構成された集団を、少なくとも僕は多様であるとは呼べなかった。

もちろん、アメリカMBAの中にも国際性を重視したMBAプログラムもあった。しかし、ここならチャレンジするに値すると思えるようなMBAは、その中になかった。

一方、ヨーロッパのMBAでは、マネジメントの対象である社会自体が非常に多様であることに対応し、それを学ぶ学生の集団についても多様性を確保することが重視されている。共に学び、共に苦労する仲間そのものが、すでに実社会でのマネジメント対象である社会の縮図となるよう配慮されているのだ。学校によっては、現地出身の学生を必ず30%以下に抑えているところもあるらしい。ちなみに僕がこれから通うMBAプログラムはは、フランス人は25%以下だそうだ。(昨年以前の情報による)

前にもこのブログで紹介したけど、僕は今、本当に多様な環境に身を置いている。アルジェリア、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、韓国、スペイン、アメリカ、イギリス、インド、日本、ヨルダン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、台湾、タイ、そしてフランス。毎日が本当に新鮮な経験の連続だ。

そしてMBAプログラムが本格的にスタートすれば、さらに多くの国の学生に出会うことになる。真にグローバルに活躍できる人材となるために、勇気を持って多くの異質なものに触れ、寛容な心を持ってそれらを理解し、この素晴らしい仲間とともに成長していきたいと思う。

欧州、そしてフランスを選んだ理由(その1)

2006年08月24日 | MBA
 
昨日のブログで予告したとおり、今日から3回シリーズで、僕がなぜヨーロッパ、そしてフランスでMBAを取得することを決断したのか、その理由をもう少し詳しく紹介してみたいと思います。ちょっと真面目な議論になってしまうかもしれないけど、興味のある方は少しの間お付き合いください。


<欧州、そしてフランスを選んだ理由(その1)>

■ヨーロッパ独特の戦略哲学を学びたい!

MBAの科目の一つに「経営戦略論」というのがある。ランチェスターの法則、マイケル・ポーターの5フォースなど、国家、地域共同体、会社、グループなど、どんな組織体であってもそれらを戦略的に経営していくために最低限必要な理論を学ぶものだ。

しかし、僕が本当の意味で学びたかったはそんな理論めいたものじゃない。理論だけなら日本で本を読めばある程度は理解できるし、実際、僕は日本でいろんなビジネススクール(慶應KBS、グロービスなど)に顔を出してきたので、理論だけなら大体理解できている思う。そうではなくて、ここヨーロッパにしかない、「競争」と「協力」とが絶妙なバランスで共存する、あの伝統的な戦略哲学を、この頭と体と心をフルに活用して体得したいのだ。

歴史を振り返ってみれば、ヨーロッパはこれまで戦争と平和、分割と併合を幾度となく繰り返してきた。ローマ帝国、フランク王国、英仏100年戦争、第一次世界大戦など、数え上げれば切りがないほどの歴史的混乱の舞台となってきた。

そんな慢性的な不確実性、不安定性の中からここヨーロッパで誕生したのが、“外交”というコンセプトだ。国家や地域というものが、いかにして他より有利なポジションを占めるか、そして、いかにしてより大きな繁栄を手にするか、さらには、いかにしてその存在を守り続けるかを追求するテクニックである。

そんなヨーロッパ外交史の中でも僕が最も注目しているのは、ある共通的な目的を達成するためには敵とさえも徹底的に協力してしまう、あのヨーロッパ独特の思考様式だ。僕はこれを“競争のための協力”哲学と勝手に呼んでいる。

例を挙げることは外交史の授業に譲るとして、現在のヨーロッパを見てもこの“競争のための協力”哲学はしっかりとその力を発揮している。例えば、エアバス社。アメリカという敵(もっと言えばボーイング社)に戦いを挑み、そして勝つために、フランス、ドイツ、イギリス、スペインの4カ国が徹底的に協力している。つい50数年までは互いに戦争をしていた国同士が協力しているのだ。これこそがまさに僕の考える“競争のための協力”哲学の体現だ。

それだけじゃない。宇宙航空分野に限ってみても、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の存在、さらにはアメリカのGPSシステムに対抗したガリレオ計画など、ある共通の敵と戦うために、ここヨーロッパの国々はいとも簡単に協力を実現してしまう。(もちろん内部に多少の軋轢が生じていることは僕も十分認識している)

僕はこの“競争のための協力”というコンセプトこそが、今の日本、さらに言えば今のアジア地域に最も欠けているものだと考えている。日本を含むアジア地域に目をやると、同じように50数年前まで互いに戦争をしていた国同士が、未だ何の本質的協力もできない状態でいる。それどころか、互いに過去を引きずり、あるいは過去を未来のために利用し、表面的なけなし合いを戦後50年経った今もなお続けている。

もちろん、ただ協力すれば良いと言っているのではない。“協力のための協力”をその意志に反して始めるくらいなら、まだしないほうがリソースの節約になる。世界と戦っていくためには、あくまで“競争のための協力”である必要があるのだ。残念ながら、日本という国では“協力のための協力”が非常に多く、協力すること自体が自己目的化してしまっていることが多い。

そんな日本に、そして、日本を取り巻くアジア地域に、僕はこのヨーロッパ独特の“競争のための協力”という戦略哲学をなんとかして根付かせたいと思っている。日本の、そして、アジア地域のポテンシャルを最大限に発揮するためには、どうしても必要なことなのだ。

そしてそのために、僕はアメリカではなく、あえてこのヨーロッパに来る道を選んだ。一人の日本人の勝手な考え方かもしれないが、今は自分の考えを信じて、学ぶべきものを全て学んで帰りたいと思っている。

(明日は「欧州、そしてフランスを選んだ理由(その2)」です)

なぜ欧州、フランスを選んだのか?

2006年08月23日 | MBA
 
MBA(Master of Business Administlation)と聞いて一番に思い浮かぶ国といえば、やはりアメリカだと思う。ハーバードビジネススクール、スタンフォードビジネススクールなど、MBAに興味のない人でもニュースなどで一度は聞いたことがあるのではないだろうか。では、なぜ僕がアメリカではなく、あえてフランスという国でMBAを目指すことにしたのか、質問のメールもすでにかなりの数をいただいたので、簡単に紹介してみたいと思う。

端的に言うと、以下の3つが、僕がヨーロッパという地域を選び、そしてその中でもフランスという国を選んだ理由だ。

 理由①「競争」と「協力」が共存するヨーロッパ独特の戦略哲学を学びたい!
 理由②多様な言語・文化が交錯する場で真のグローバル人材を目指したい!
 理由③宇宙航空の風に吹かれながら新しいビジネスモデルを考えてみたい!

もちろんこれ以外にもいろいろな理由を考えた。本当にいろいろ考えた上での決断だった。MBAのアプリケーションプロセスでは、“MBAで何を得て、将来何をめざそうとしているのか?”に加え、“なぜこの国のこの学校をあえて選んだのか?”についても自分なりのオリジナルな考えを、説得力をもって述べることが求められる。そのため、本当に時間をかけてじっくりと考えた上での僕なりの答えだ。

考えたことのすべてをこのブログで紹介することは不可能だけれども、なんとかその一部だけでも僕の考えたことを皆さんと共有できればと思う。明日からの3回シリーズだ。もちろん、異論反論いろいろあると思うので、コメントに記入してもらえるととても嬉しい。異なる意見をぶつけ合うことでお互いの思考レベルをさらに高めあっていくのも、MBAの醍醐味のひとつだからだ。

その他、このブログで大々的に紹介するのがふさわしくない理由(社会通念に照らして)を知りたい人は、航空券を買ってトゥールーズまで遊びに来てください。ワインとチーズで乾杯しながら思い切り話しましょう~。

<追伸>
今日のランチタイム、コカ・コーラをやめてオレンジジュースにしてみました。しかし、数ある選択肢の中から、フランス産のオレンジジュースではなく、Minute Maid(アメリカ製)を選んでしまい、結局、「やっぱりNOBU(僕のこと)はジャパニーズアメリカンだ!」と言われる羽目になってしまいました。。。

ジャパニーズアメリカン?

2006年08月22日 | その他
 
フランスでの生活をスタートしてからちょうど3週間が経過した。予想外のトラブルもあったけど、期待以上に新鮮な驚きに満ちた毎日を過ごすことができ、これまでのところフランス生活にとても満足している。

しかし、そんな満足げな気持ちでキャンパス内を歩いていたら、ある女の子から僕に関する妙な噂がキャンパス内で流れていることを聞かされた。え、なんだろう?気になるじゃないか!と思って詳しく聞いてみると、なんと僕が実はジャパニーズアメリカン(日系アメリカ人)ではないかという疑惑が流れていたのだ。

もちろん半分ジョークで言っているのだとは思う。でも、正直フランスではアメリカ人のイメージはあまり良いものではない。これまでの僕の態度がそんなに独善的だったのかと不安になって、何人かの仲間になぜそんな噂が流れ始めたのかを勇気を出して聞いてみることにした。

すると、その答えに思わず笑ってしまった。みんなが僕をジャパニーズアメリカンだと疑ってしまった理由は、主に以下の4ポイントだったようだ。

 証拠① 日本人なのに観光地に行くのにカメラを持ってこない。
 証拠② 日本人なのに写真に写るときにピースサインをしない。
 証拠③ 日本人なのに日本語で会話しているところを誰も見たことがない。
 証拠④ 日本人なのにランチタイムにいつもコカ・コーラを飲んでいる。

①は確かにそうだ。いつも携帯のカメラで撮影しているのでデジカメは日本に置いてきた。②も合っている。アメリカに留学していた頃からの習慣で、いつも親指を立てるGood Luckポーズか、両手を腰に当てるポーズをとっている気がする。③は当然だろう。ここには日本人は僕一人しかいないのだから。ここ3週間日本語を話した記憶は一切ない。

それで笑ってしまったのは④だ。振り返ってみると、確かにお昼にいつもフランス料理とコーラを一緒に飲んでいる。聞くところによると、この組み合わせ、フランスではありえないらしい。あえてアメリカの象徴であるコカ・コーラを自然に選んでしまっているあたりが、どうやら疑惑(というより限りなくジョークに近いと思う)の発端だったようだ。

しかしみんな良く観察してるよなあ~、と感心せずにはいられなかった。同時に僕はそんなに注目して見られていたのかと恥ずかしくなってしまった。

ということで、明日のランチタイム、何を飲もうか悩んでしまうのでした。(これで悩むあたりが十分日本人だと思うのだけど。。。)