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宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

ヨーロッパ市場への挑戦

2009年07月31日 | 宇宙航空産業
 
最近は忙しくてブログを書く時間がなかったのだけど、今日は嬉しいニュースが届いたので久々にブログを更新。僕が前から担当してきたヨーロッパ市場への参入に少しづつ具体的な成果が出始めてきたというニュースだ。プロジェクトを成功させるためにヨーロッパに何度も出張してきたので、努力が結果に結びついたことほど嬉しいことはない。しかし、それ以上に、先行投資を惜しまず、リスクをとってヨーロッパ市場に挑んだ日本の中小企業の方々の勇気と情熱に、僕は心から敬意を表したい。Felicitation!

再びヨーロッパへ(2008年12月7日ブログ記事)

中小企業の戦略(2008年7月22日のブログ記事)

<新聞記事の内容>

 神奈川を中心とした中小製造業でつくる「まんてんプロジェクト(航空宇宙開発用部品調達支援プロジェクト)」が、欧州の航空宇宙産業に本格進出することになった。会員企業が製造した部品を組み合わせたユニットを航空機のエンジンに供給する方向で、24日までに独と仏の大手メーカーと包括的な合意に達した。プロジェクト始動から6年かけて取り組んできた壮大な構想は、実現に向けて具体的な局面を迎える。

 交渉を始めたのは、世界5大エンジンメーカーに数えられるMTUアエロエンジンズ社(ドイツ)とスネクマ社(フランス)。年内に両社の調達担当幹部が訪日し、具体的なユニットが決まる。

 まんてんプロジェクトは6月に仏パリ郊外で開かれた国際航空宇宙ショーに出展して技術力をアピールした。既に両社の営業担当者による工場視察も受けており、同プロジェクトは「より高度な金属加工に対応できる日本の町工場の優れた技術力が評価された」としている。

 航空宇宙ショーのブースには会員企業の製品や技術を展示。期間中、約80社の企業が訪れて商談を実施し、スネクマ社と同じ企業グループのテックスペースアエロ社(ベルギー)などとも具体的な交渉に入った。

 航空機の部品総数は自動車の100倍に当たる約300万点。日本の中小製造業が心臓部のエンジンに部品を供給することで、すそ野の広い航空宇宙産業で新たなビジネスチャンスにつなげる考えだ。

 まんてんプロジェクトは中小企業の航空宇宙産業進出を促すため、県異業種グループ連絡会議(神奈川異グ連)を母体に2003年に発足。現在は全国の約120社が参加している。共同受発注の業務は、同プロジェクトが設立したJASPA(横浜市保土ケ谷区)が担っており、国内では宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)や大手システムメーカーへの供給実績がある。

記事へのリンクはこちらから
 

パリ航空宇宙ショー100周年

2009年06月12日 | 宇宙航空産業
 
世界最大級の航空宇宙イベントがいよいよ来週からスタートする。今年で100年目の記念大会となるパリ航空宇宙ショーだ。フランスのパリ郊外にあるル・ブジェ空港で6月15日~21日まで開催されることになっている。

今回のパリ航空宇宙ショーには僕も参加する予定でいたのだけど、残念ながら今回の参加は見送ることになった。100年記念のメモリアルイベントが目白押しだっただけにどうしても行きたかったが、別の仕事が入ってしまい断念せざるを得なくなったのだ。今回のパリ航空宇宙ショーに参加する人がいたら、ぜひ後で感想を聞かせてほしい。2年に一度のお祭り騒ぎなので、きっと不況の中でも盛り上がっているに違いない。

前回の2007年大会には僕はフランス宇宙工業会GIFASのGuestとして招待され、Chaletと呼ばれる眺めの良い展望ブースでシャンパンを飲みながら最新鋭機のデモフライトを眺めることができた。今回はMBA時代のクラスメートがいろんな航空宇宙企業に勤めていて、それぞれのChaletに招待してくれていたので、もし参加していたなら毎日豪華な料理とシャンパン三昧で航空宇宙ショーを楽しむことができたはずだ。もちろん、ヨーロッパ航空宇宙ビジネスの最前線について情報収集する絶好の機会にもなる予定だった。

さらに、今回のパリ航空宇宙ショーでは、僕の母校であるトゥールーズ・ビジネススクールの学生達が自らセッションを主催するらしい。パネリストの中には僕の同期で現在EADS KoreaのDirectorを務めるJin-Wookもいる。彼はMBA時代に同じプロジェクトチームのメンバーで、よく一緒に酒を飲みながらアジアの航空宇宙ビジネスについて語り合った仲だ。

もし今年のパリ航空宇宙ショーに参加する人がいたら、僕の後輩達が主催するセッションにぜひ参加してみてほしい。きっと熱い議論と価値ある情報を入手できるはずだ。

June 18, THURSDAY, 2:00 – 6:00 PM

(2:00 – 2:40) Business Model for a new aircraft designed and dedicated to Air Transport Supply Chain Services to Airlines

Abstract: This study describes how a new aircraft model can be designed in order to satisfy, and be dedicated to, a full service package, including leasing of the aircraft to the airlines.
This would involve a dramatic change and impact on the supply chain of an aircraft manufacturer, to make all stakeholders' business models coping with high value added services needed by the Airline customers.

(2:40 – 3:20) Customer Services Questions / Round Table

(3:20 – 4:00) A new vision of the airlines industry

Abstract: Airline industry is one of the most dynamic industries in the world. The sector has gone through drastic changes in the past decades; these changes had impacts on its regulations, infrastructure, and market of the supply and the demand.
The study projected the future of the airlines industry in the next 20 years, description of the future scenarios, challenges airlines will face, and what system needs to be created to sustain traditional airlines business.

(4:00 – 4:40) Airlines industry Questions / Round Table

(5:00 – 6:00) Cocktail

END OF DAY

Royal Air Morocco

2009年04月20日 | 宇宙航空産業
 
とても嬉しいニュースを聞いた。MBA時代の同級生であり、フランスの航空機メーカーATR社で共にインターンとして働いたOthmanが、ついに6機のATR機の販売に成功したのだ。おそらく契約額にして100億円以上、ATR社にとっても彼にとっても大成功のプロジェクトだ。

Othmanはフランス系のモロッコ人で、現在はATR社のTechnical Sales Managerとして働いている。フランス語、英語に加えて、アラビア語も話すトリリンガルだ。ただし、敬虔なムスリムではなく、お酒も飲むしタバコも吸うし、食べ物は何でも食べる。僕にとっては普通のMBAクラスメート以上に苦楽を共にした戦友でもある。

その彼が進めてきたプロジェクトがついに成就したのが何よりも嬉しい。僕は彼に頼まれていつも戦略立案をサポート、というか、半分肩代わりしていた。Othman曰く、自分は戦略の実行には自信があるのだけど、分析や立案となるとどうも苦手意識があって、同じMBAに通いながら日本人の僕には到底叶わないと感じていたのだそうだ。なので、迷いがあるといつも僕の部屋に来て、一緒に問題を特定して、何時間も二人で議論し合ったのを覚えている。

今回のATR社のプレス発表を見る限り、あの時に提案した戦略プランはどうやら結果として実を結んだようだ。僕は既存の航空会社に最新鋭機を直接売り込むのではなく、地方政府を巻き込みながら大手航空会社の子会社として新たに地域会社を設立し、そこにATR機を販売する戦略を提案した。大手航空会社に直接販売して運航させたのでは、大手特有の高コスト体質からおそらくATR機の低コスト運航性を十分に発揮できないと読んだからだ。航空機という商品を売るのではなくビジネスモデルを売る、これも僕がMBAで学んだ大切なことの一つだ。

確定発注6機+オプション2機の販売成功という結果を見ると、あの時に立案した戦略は外れていなかったのではないかと思う。もちろん、戦略の「実行」が得意だと自負するOthmanの実力の結果であることに疑いの余地はない。この結果を生み出したのは間違いなくOthmanの汗と努力だ。とにかく、戦友の勝利が何より今の僕にとっては嬉しい。

Felicitation, Othman! 僕もさらなる飛躍に向けて頑張っていくよ!

ATR社のプレス発表はこちら

(写真はRoyal Air MoroccoのATR-72 600Series)
 

衛星ブロードバンド

2009年04月16日 | 宇宙航空産業
 
人工衛星「IP STAR」によるブロードバンドサービスがついに日本でも始まった。これはタイの衛星通信事業者であるタイコムの日本法人が提供するもので、簡単に言うと、宇宙を経由してインターネットにアクセスするサービスを日本国内に提供するものだ。

わざわざ宇宙を使って?という部分に疑問を持つ人もいるかもしれない。しかし、世界には光ファイバーなど地上での高速通信インフラが整備された国はまだ多くはなく、宇宙を使うことで一気に広大な地域をターゲットとしてブロードバンドサービスを提供することが可能になる。もちろん、人工衛星の開発コストや打上コスト、運用コスト、保険コストなども膨大な投資になるので、地上インフラとして整備した場合の総コストと比較した上での意思決定が必要だ。

宇宙を使ったインフラ構築が特にその効力を発揮するのは、ヒト・モノ・情報といった資源が、それぞれは少量づつながら広範囲に分散して存在している場合だ。そして、資源それぞれの経済的価値が高ければ高いほど、高額な人工衛星によるコストを負担してでも各資源を結び付けようという需要がそこに生まれる。すなわち、宇宙インフラにとって大事なのは、需要の量ではなく、その質(価値の高さ)と分散性だと僕は考えている。

具体例を挙げれば、離島や過疎地における遠隔医療などはその良い例だ。これらの地域にあらゆる専門分野の医師を配置してトータルな医療サービスを提供することは、物理的に不可能ではないにしても、経済的に成立しない可能性が非常に高い。しかし、一方で人の命というのは何にも代え難い高い価値を持ち、さらに、離島や過疎地にはそれらの高い価値が分散して存在している例がほとんどだ。こういうモデルが成り立つ状況こそ、宇宙インフラの出番だと僕は思っている。

IP STAR社が日本で提供するサービスは単なる通信サービスなので、遠隔医療といったアプリケーションが出現するのはこれからだろう。あとは時間とコストの問題で、低価格化が進めばそれだけ利用者・利用地域が増えて、スケールメリットによる低価格化がさらに進むという好循環が生まれる。インフラは構築するだけでは全く意味がなくて、その上に成立するアプリケーションの良し悪しがその後の発展性を決める。地上での高速通信インフラが整備された日本においては、新たなアプリケーションが今後生まれるかどうかがIP STARの成否を分けるだろう。

ただし、このサービスを利用するためには、直径120cmの衛星用パラボラアンテナを設置する必要があるそうだ。マンションのベランダに設置するにはちょっと大きいかもしれないが、将来的には84cmのアンテナも販売するそうだ。設置価格は1件あたり30万円で、通信速度によって月々3500円~5500円の利用料金が課金される。このくらいのレベルであれば、僕はビジネスとして成立するアプリケーションが多数出てくるのではないかと思っている。

日本市場における今後のIP STARの活躍に注目していきたい。

IP STARのホームページはこち

(写真はIP STAR社のブロードバンド衛星)
 

航空マーケティングセミナー

2009年04月04日 | 宇宙航空産業
 
日本の航空宇宙は「技術で勝ちながらビジネスでなかなか勝てない」と僕は前から言ってきた。その背景には技術開発に対する日本独特の自負や信念のようなものがあって、よい製品を開発すれば市場は必ずそれを求めるであろうというプロダクト・アウト(Product Out)の思想がそこにはあった。そんな環境で育つ人材は結局過去と同じ技術重視の戦略をとり、今後もずっと変わらぬ状況が続くのだろうと僕は考えていた。

しかし、最近になって少しづつ変化が出始めてきた。将来の技術開発を担う人材に対して、最終ゴールであるビジネスの仕組みまでしっかり教えようという動きだ。言いかえれば、市場が技術に対して何を求め、その要求に答えるためには技術は何をすればよいのかというマーケット・イン(Market In)視点での人材教育だ。

具体的な例としては、東京大学航空イノベーション研究会が航空宇宙工学を学ぶ学生に対して、専門的なエンジニアリングのみならず、マーケティングやビジネスの仕組みまでを教える講座を開こうとしている。前期・後期に分けて産業界からも第一線のビジネスマンを講師に迎えるようなので、きっと中身の濃い教育プログラムになるだろう。僕がフランスで学んだAerospace MBAに近い存在になるかもしれない。

記事によれば、将来社会人向けの短期セミナーとしてスピンアウトする可能性もあるという。航空ビジネスに興味ある人にとっては、その上流から下流までを体系的に学べる絶好の機会になるのではないだろうか。日本国内においてそれが可能になるのだから、まさに時代は変わりつつあるのだと思う。

記事はこちらから
 

ガラパゴス現象

2009年02月17日 | 宇宙航空産業
 
最近、「ガラパゴス現象」という言葉が流行っているそうだ。どうやら発信地は日本で、絶海の孤島ガラパゴス諸島に因んで名づけられた現象らしい。

ガラパゴス諸島はダーウィンの進化論で知られている中南米の島の一つだ。独自に進化を遂げたその生態系はあまりにも有名で、巨大なリクガメやイグアナ、コモドドラゴンなど、他の地域では見られない多種・多様な生き物が生息している。何千年にもわたって他の島などとの交流が全くなく、生態系が完全に隔離されたきたおかげで、生き物達は他に見られない独自の進化を遂げたのだ。

しかし、日本における「ガラパゴス現象」というのは生き物のことではない。携帯電話のことだ。NTTドコモ、au、Softbankなど、日本には通信サービスを提供する携帯電話各社と、日本電気、三菱電機、シャープなど、携帯電話機そのものを製造・販売するメーカー会社がある。これらの日本の会社が提供する通信サービスの規格は、実は日本でしか通用しない独自規格が中心で、世界標準とは全く異なった通信方式を採用している。すなわち、日本の携帯電話業界は、世界の大きな流れとは離れて独自の進化を遂げ、独自の規格を発展させてきたのだ。これが日本の携帯電話業界を指して言う「ガラパゴス現象」の真の意味だ。

日本の携帯電話業界がこのように独自の進化を遂げてしまったのは、やはり日本国内に十分な市場と成長機会があり、その中だけで競争していても十分に生き残ることが可能だったからだ。もし、日本国内に十分な市場がなく、世界に出て戦わなければ生きていけないような状況に追い込まれていたならば、決して日本でしか通用しないような規格の製品のみが開発されることはなかっただろう。おそらく、携帯電話の製造メーカーは、世界に受け入れられるために、世界標準に合わせた規格での携帯電話開発を進めたはずだ。

身近なところに十分な成長機会があることは、とてもラッキーなことだと思う。しかし、機会に恵まれすぎていると、反って進化のチャンスを逃すことにもつながるのだ。

(写真はガラパゴス諸島のイグアナ、だと思う。)
 

「あいのり」の意味

2009年01月25日 | 宇宙航空産業
 
H-ⅡAロケット15号機に相乗りして打ち上げられた小型副衛星について、宇宙空間でとても綺麗な写真が撮れたようなので思わず紹介したくなった。小さくても立派な人工衛星、見事に「星」になったようだ。ただ、本当の仕事はこれからだ。ミッション完遂目指して頑張ってほしい。

今回のロケット打ち上げについては、メインの主衛星「いぶき」とサブの副衛星7基の相乗り打ち上げということで、以前から数多くのマスコミが強い関心を示していた。打上成功の報を聞き、様々な新聞社やテレビ局がいろんな視点でコメントしているのだけど、その中で最も僕の心に響いたコメントが中日新聞の「中日春秋」だ。

■中日新聞の「中日春秋」はこちら

「あいのり」とは単に衛星と衛星の相乗りという状態のことだけを指すのではない。僕が目指していたのは、産・学・官の「あいのり」によるプロジェクト実現であり、もっと言えば、関係者全員の情熱の「あいのり」による目標達成なのだ。そして宇宙のプロとアマチュアの「あいのり」でもあった。両者の間にあった大きな壁に、小さいながらも風穴を空けたことの意義は大きい。

そのことをちゃんと分かってくれていたメディアが少なくとも日本に1つあった。今日はそのことが最高に嬉しかった。

Merci beaucoup! 中日新聞!
 
(写真はJAXAのホームページより)
 

講演記録

2008年12月30日 | 宇宙航空産業
 
師走も30日を迎え、僕も今日から実家に帰ることにした。振り返ってみると今年は例年にも増してよく講演を頼まれることの多かった年だったと思う。小・中学生から高校生、大学生、一般ビジネスマン、会社経営者の方々まで、本当にいろいろな人々の前で講演をさせていただいた。僕にとっても本当に良い経験になったし、自分がまだまだ何も知らないということを改めて教えられたような気がする。

先日、僕が講演を行った宇宙開発フォーラム(SDF)という団体からイベント開催の報告書をいただいた。その中には僕が行った講演のことも書いてあるのだけど、それ以外にも宇宙をめぐる新しい動きについて、各方面の方々が様々な視点でコメントをされているので、興味のある方はダウンロードして読んでみてほしい。

お正月休みの読書の友、ということで。

報告書ダウンロードはこちら

それでは皆様、良いお年を!

(写真はSDFのホームページより)
 
  

ショベルカーと宇宙

2008年12月20日 | 宇宙航空産業
 
最近は宇宙と何かのコラボレーション事例を探り、その本質とは一体何かを考えながら、新たな宇宙の使い方についていろいろ考える毎日が続いている。そんな中で見つけた面白い記事を紹介したい。ショベルカーと宇宙のコラボレーションに関するものだ。

といっても、ハードとしてのショベルカーそのものに宇宙が必要なわけではない。ショベルカーを販売するというビジネスにおいて、カスタマーサービス、部品供給、生産、マーケティングなどの高精度化を図るためのシステムの一部として、宇宙が効果的に使われているのだ。いわば、ビジネスのソフト面における宇宙の利用だ。

こういった使い方はきっとショベルカーに限ったことではなく、きっと他にも同じような需要があるはずだ。興味がある人はぜひ一読した後で考えてみてください。

<日刊工業新聞:平成20年12月19日>

タイトル:日立建機、通信ユニット搭載の対象機種・地域を拡充

日立建機は建設機械の稼働状況を把握できる通信ユニット搭載の対象機種・地域を拡充する。09年度からは新たに投入するミニショベルに標準搭載する。また対象地域については、09年4月をめどに、南アフリカとインドネシアに広げる。収集した稼働情報は、同社の生産計画策定や部品交換サービス強化、より顧客ニーズに沿った新商品の開発に反映させていく。
 日立建機は油圧ショベルやホイルローダーなどに通信ユニットを組み込み、衛星通信などを介して位置情報や掘削・旋回・走行などの各作業、停車時間などを把握している。
 ミニショベルは他の建機より低価格で、通信ユニットの搭載はコスト面で問題があり、設計上でも難しかった。しかし同社は、ミニショベルの稼働状況を把握することは生産・サービス面で不可欠と判断。専用ユニットを組み込み、価格を抑えて09年度以降に発売する新シリーズに標準搭載することにした。

日刊工業記事はこちらから

(写真は日立建機のミニシャベル。日立建機のホームぺージより。)
 

エールフランス航空と宇宙

2008年12月15日 | 宇宙航空産業
 
今回のヨーロッパ出張はエールフランス航空を使ってパリ、ミュンヘン、パリと回ってきたのだけど、往復の機内でビックリしたことが一つある。座席の前に設置してある個人用スクリーンに、人工衛星から撮影された地球の画像が使われていたことだ。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とエールフランス航空とのコラボレーション企画らしく、しっかりとESAのロゴマークが画面に掲示されていた。東京-パリのフライトは12時間30分、これは宇宙機関にとってすごく良い宣伝だ。

使われている人工衛星の画像は、飛行機が今まさに飛んでいる場所を宇宙から撮影したものだ。つまり、オランダ上空を飛行しているときはアムステルダムの画像だったり、デンマーク上空を飛行しているときはコペンハーゲンの画像だったりという感じで、とにかく今飛んでいる場所に従ってどんどんいろんな画像が変わっていく仕組みだ。窓のすぐ外には1万メートル上空からの地球の姿が見えるが、この画像は数百キロ上空からの地球の姿を僕たちに教えてくれる。この対比をその場で実感できるだけでも非常に面白い企画だと思う。

日本の航空会社にも地図上でどこを飛んでいるのかを示してくれる機内サービスはあるが、さすがに宇宙からの人工衛星画像を機内で使っている航空会社は今のところない。Googleのように地図サービスの一環として人工衛星画像を使う会社は世界にいくつも存在するが、今まさに飛んでいる場所を宇宙から眺めるという価値を提供しているのは、僕が知る限りエールフランス航空のこのサービスだけだ。市場としては小さいかもしれないが、ある意味で新しい宇宙の使い方になっていると思う。

もっと驚いたのは、決してヨーロッパ宇宙機関(ESA)が撮影した画像ばかりが使われていたのではないということだ。ESAのロゴマークの横にはSPOT衛星を運用する民間企業Spot Image社のロゴマークが掲出されていて、その画像がどんな組織によって撮影されたものかを表している。企業にとってもすごく良い宣伝になると思う。経緯は全く知らないのだけど、宇宙機関であるESAが企画し、Spot Image社を巻き込みながらエールフランス航空に売り込んでいたとしたら、これは僕も見習わなければならないアクションだ。

Spot Image社の衛星画像以外にも、KARIというロゴが掲出されていた衛星画像もあった。KARIと言えば韓国の宇宙機関の名前だが、ひょっとしたら将来のビジネスチャンスを期待してKARIの人工衛星をヨーロッパが代わりにPRしているのかもしれない。画像のクオリティとしてはSpot Image社のものに遠く及ばないが、とにかく韓国のKARIにとってはよい宣伝になる。衛星の利用や事業化までをしっかりと考えて宇宙企業をサポートする姿勢に、ヨーロッパのしたたかさをまた垣間見た気がした。