航空機の寿命を知っている人は、この世に一体どれくらいいるだろうか?一般的に約25年~30年が限界と言われていて、それ以降にフライトすることは、安全面や整備面の懸念によって飛ぶのが難しくなるとされている。
この寿命は航空機そのものに関する寿命なのだけど、航空機メーカーにとっての航空機の寿命と言った場合、一般的に約50年と長くなる。航空機を開発し、市場に送り出し、さらにその航空機の製造をストップするまでに約30年。そして、製造を完全にストップしてからも約20年間はスペアパーツ等を供給しなければならないため、航空機製造メーカーにとっての航空機の寿命はやや延びて約50年となるのだ。
この約50年というライフサイクルは、他のビジネスと比べても極端に長い。こんな長い期間をかけて投資を回収することを想定したビジネスなんて、航空機ビジネスをおいて他にはあまりないと思う。大規模かつ長期間にわたる投資を要求されるのが、航空機製造ビジネスの特徴だ。
しかし、この約50年というのは、民間の商業旅客機の場合にあてはまる数値だ。軍用機の開発となると、さらにこれが伸びる。具体的な例を挙げると、F-15戦闘機で51年、C-130輸送機で79年、そしてなんと、あのB-52爆撃機に至っては、1946年の開発スタートから数えて94年目の2040年までの使用を予定している。100年近いライフサイクルを想定した商品なんて、にわかには想像し難い。しかし、これは事実なのだ。
もちろん、これらの超長期ライフサイクルは、初めから想定していたものではない。当初はやはり民間の航空機と同じように30年程度のライフサイクルを想定していたのだ。それが、いつの間にか次の世代の航空機の投入が伸び伸びになって、50年から100年近いライフサイクルとなってしまったのだ。
防衛ビジネスは、基本的な考え方が極めて保守的な分野だ。現在の航空機がしっかりと役割を果たしているのならば、あえて新しい技術を用いた航空機を開発して既存のものに取って代ええようというダイナミクスが働きにくい分野でもある。昔のままの航空機が今もずっと使われて続けているのはそのためだ。
軍用機の世界で有名なジョークが一つある。それは、「祖父が操縦していた飛行機をその孫が操縦する」というものだ。94年のライフサイクルを想定したB-52爆撃機なら、そんな事だって十分にありうるのだ。
20世紀の古いテクノロジーで、21世紀のより複雑なミッションを遂行することを要求される。空軍の兵士の皆さんがちょっと気の毒に思えてきたのでした。
(写真はB-52爆撃機。長距離、高高度、大量爆撃を可能にした超大型爆撃機だ。)