宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

スマイルカーブ

2008年09月28日 | その他
 
最近、いろんな人や機関から講演を頼まれることが多くなった。今年に入ってから既に5回近く講演に出かけているのだけど、先週末も東京大学で開催された「宇宙開発フォーラム」というイベントでプレゼンをすることになった。テーマは『宇宙産業の現状と課題』というもので、まさに今僕が担当している仕事に深く関係しているものだ。

僕にとっては常に考えなければならないテーマなので難しい講演ではないのだけど、今回はいろんな制約があって少し大変だった。制約条件というのは、「宇宙開発フォーラム」というイベントが主に学生さんを対象にしたもので、しかも、宇宙開発にあまり詳しくない学生さんも含まれているとあって、一般的な知識を提供するような内容にして欲しいという要望が事務局側からあったのだ。特に、僕が今回依頼された講演はイベントの最初に行われる基調講演のようなプレゼンで、まず最初に学生達に「考えるキッカケ」になるような知識や情報を授けて欲しいということだった。

僕の経験では、基礎的な内容というのは「学ぶのはとても楽」なのだけど、「教えるのはとても難しい」。何か基礎的なことを学んだ後に、自分では理解したつもりで他人にそれを教えようとして、「あれ、何かが違う」と感じたことのある人は多いだろう。「基礎」というのは実は一番難しい存在であり、物事の表面だけを理解していたのでは決して教えられないのだ。なので、僕のような若輩者が引き受けてよいものかどうか、今回だけは正直迷った。

最終的には「宇宙開発に進化をもたらしたい!」という事務局の方の熱意に賛同して講演を引き受けることにしたのだど、今回はさらに僕の講演では日本の話は一切せず、宇宙産業一般と世界マーケットに限定して話をして欲しいということになり、ハードルはさらに上がった。僕がヨーロッパのMBAで学んだ授業を踏まえながら、さらに、最近僕がスタートさせた「宇宙ビジネスインターン」の話もして欲しいという要望も加わった。結局、一からプレゼン資料を作り始めたこともあり、パワーポイント資料が出来上がったのはプレゼン前日の深夜のことだった。

僕のプレゼンは朝10時45分から始まり、正午過ぎまで続いた。終わってみればあっという間のプレゼンだったが、皆さん寝ることもなく真剣に話を聞いてくれ、朝一番の講演なのに本当にスゴイなぁ~と感心してしまった。休日だし、授業の単位にもならないと思うのだけど、宇宙に興味があるというだけでここまで熱意を持って聞いてもらえると正直僕も嬉しい。頑張って資料を作った甲斐があったというものだ。

僕はプレゼンをするときは必ず会場の皆さんの反応を見ながら話を進めるようにしているのだけど、今回壇上から皆さんの反応を見ていて一番反応がよかったのが「スマイルカーブ」を使った宇宙産業と航空産業の比較論の話をしたときだ。スマイルカーブというのは、台湾のパソコンメーカーACER社のCEOが発案したコンセプトで、ビジネスの上流から下流にかけて、ビジネス一般における利益率の違いをグラフに表したものだ。

あくまで一般論なのだけど、ビジネスの上流、すなわち、研究開発とか素材に関するビジネスは利益率が高く、組み立てや製造などの中間にあるビジネスでは利益率が低くなる傾向があり、それを超えて販売後のサービスやコンサルティングなどのビジネスになれば利益率は上昇する、というものだ。全てのビジネスに共通するわけではないけれども、ただ部品を買ってきて組み立てるビジネスというのは、儲けを出しにくい傾向がある、ということを意味している。

航空産業の場合、機体やエンジンを販売した後にもメンテナンスやスペアパーツ、トレーニングなどの利益を見込むことができ、ビジネス全体として儲けを出す体質を業界全体として構築することが可能だ。しかし、宇宙産業では、人工衛星やロケットを宇宙に送り出した後はもう物理的に手を出すことができず、メンテナンスやスペアパーツ等のアフターセールスビジネスは成立し得ない。すなわち、少なくとも現在の技術レベルで行う宇宙産業においては、高い利益率が見込まれるスマイルカーブ下流のビジネス領域を攻めることができず、より利益率の低い領域でしか勝負できないのだ。

ただし、利益率が低いと呼ばれている領域でも十分な儲けを出している企業は存在する。スマイルカーブを発案した台湾のACER社などがその代表例だ。つまり、やり方次第では、製造や組立などの中流のビジネスでも利益を出すことができるのだ。儲けを出しにくい領域で「勝ち組」となっている企業の戦略をベンチマークし、可能なものは応用していくことこそが、今の日本の宇宙産業に必要なのではないだろうか。僕の講演では、スマイルカーブを使ってそんな話をした。

僕の講演に興味のある方は、11月中旬にイベントの「報告書」が完成するらしいので、一読してみてください。

(写真は経済産業政策研究所のHPより)
 

ATR日本上陸!

2008年09月15日 | 宇宙航空産業
 
ついにATR機が日本の空を初めて飛ぶ日が決まった。2008年10月2日だ。新潟県の佐渡空港と羽田空港との間をデモフライトする。僕がフランスから帰国してからもうすぐ1年、本当に待ちに待ったATR機の日本初上陸だ。

ATR機によるデモフライトは、実は僕がフランスのATR社で働いていた昨年も計画されていた。今回は佐渡と羽田間のフライトだけのようだけど、昨年は長野県の松本空港や兵庫県の神戸空港など、日本全国の地方空港を飛び回ってその卓越した性能をアピールする予定だった。しかし、直前になって台湾近くに台風がやってきて、肝心のデモフライト用のATR機が日本まで飛んで来られないという事態に陥ったのだ。その時はタイのバンコク航空からATR機を借りることにしていたので、ちょうど日本への飛行ルートに当たっていたのだ。トゥールーズのATR本社でデモフライト中止の知らせを聞き、本当に残念な気持ちになったのを今でも覚えている。

しかし、今年こそ捲土重来。台風が来ないことを祈りつつ、なんとか佐渡-羽田間のフライトを見事成功させて、日本の航空関係者にATR機の価値を十分にアピールしてほしい。原油高に伴う燃料費高騰を受けて経営に苦しむ航空会社にとっては、ATR機の抜群の燃費の良さはとても魅力的に映るはずだ。日本の空を変えるのはATR機以外にないと僕は思っているし、ATR社による今回のデモフライト成功を心から祈っている。

本来なら佐渡空港や羽田空港まで駆けつけて、来日する元同僚に会いたいところだ。しかし、僕はちょうどこの時期に4年に1度開催される日本最大の航空宇宙ショー「Japan Aerospace 2008」に参加していて、日本の宇宙航空産業を世界に向けてアピールしている頃だ。直接応援に行けないことが本当に残念で仕方ない。お世話になったMario副社長の時間があれば、ぜひ夜の東京を案内しようと思う。

Bon chance, ATR! 日本の空はキミを待っている!

<↓新潟日報2008年9月13日版より>

フランス航空機メーカーATR社が10月2日、佐渡―羽田空港間でターボプロペラ機のデモフライトを実施することが、12日までに決まった。同区間のデモフライトは昨年10月にも計画されたが、台風の影響で使用機材が日本に到着できず中止となっていた。

デモフライトは、日本での就航を目指すATR社と伊藤忠アビエーション(東京)が計画。関係者によると、70人乗りの機材を使用し、佐渡で遊覧飛行を行った後、新潟空港を経由して羽田空港に向かう。佐渡空港の滑走路が890メートルと短いため、定員の上限ではなく40人前後の搭乗を予定している。

県や佐渡市などは2010年に供用開始予定の羽田空港第四滑走路への乗り入れを目指しており、デモフライト実施を発着枠獲得につなげたい考えだ。佐渡新航空路開設促進協議会の斎藤甲子郎会長は「1年遅れでようやく実現でき、喜んでいる。まず羽田枠を獲得し、その後の佐渡空港の滑走路2000メートル化に弾みをつけたい」と話している。

記事のリンクはこちら

(写真はのATR-42機とATR-72機)
 

バーベキュー開催結果

2008年09月07日 | MBA
 
「宇宙航空MBAバーベキュー」を無事開催したのでその結果報告。

参加者は全部で19名(男性14名、女性5名)。そのうち2名はなんと関西からわざわざ駆けつけてきてくれた人達だ。本当にありがたい。Merci beaucoup!

直前まで天気が少し心配だったのだけど、幸いなことに最後まで雨が降ることもなく、気がついたら2時間半のバーベキュータイムがあっという間に終了していた。お肉に野菜にシーフードに、今年の夏を締めくくる素敵なバーベキューが楽しめたと思う。本当においしかった!

僕が驚いたのは、2時間半もの間、ほぼ全員がずっと立ちっぱなしで宇宙・航空トークを繰り広げていたことだ。周りにいた他のグループは皆座ってバーベキューを楽しんでたので、僕達のグループがどれだけ積極的にコミュニケーションをとっていたかが分かる。みんな名刺交換をしたり、ぐるぐる回って話をしたり、そして、時にはお肉を焼いたりビールを注ぎにいったりと、良い意味でかなり忙しいバーベキューだったと思う。そのぶん、普段接することができない新鮮な情報や意見に遭遇できたのではないだろうか。自分とは異質な何かとの新たな出会いこそがイノベーションの源泉になる。それだけでも投資する価値は十分にあると僕は思う。

ひとつ謝らなければならないのは、場所が屋外であまりにも薄暗く、かつ、騒がしかったため、ほとんど「宇宙航空MBA説明会」らしきものができなかったことだ。資料は事前に用意していたのだけど、結局説明らしい説明をすることができず、資料を配布するだけになってしまった。MBAに関する情報を期待して参加してくれた人には申し訳ないと思う。メールでのフォローと次回以降の説明会に期待してほしい。

ということで反省点として、「宇宙航空MBA説明会」はちゃんと会議室でやったほうがよいということがよ~く分かった。なので次回の日程はまだ決まっていないのだけど、どこかの会議室を確保でき次第、またこのブログ上で参加者を募集しようと思う。

今回のチャレンジ企画「宇宙航空MBAバーベキュー」に参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

投資したお金と時間に見合うだけの何かをご提供できたことを祈っています。

(写真はバーベキューの様子。参加者の一人が送ってきてくれました。)
 

雨天決行!

2008年09月05日 | MBA
 
明日の「宇宙航空MBAバーベキュー」ですが、雨天中止とご案内していたのですが、雨が降っても併設のレストランで食事ができるそうなので、場所を少し変えて決行したいと思います。

 ■日時:平成20年9月6日(土)18:00~20:30(決定)
 ■場所:東京 飯田橋 Canal Cafe 屋外スペース(雨天時は併設レストラン)
 ■料金:一人6,800円(食べ放題、飲み放題)
 ■内容:バーベキュー&宇宙航空MBA説明会&宇宙航空トーク

結局、計18名の方が参加してくださることになりました。明日が楽しみです!
 

リマインダァーッ!

2008年09月04日 | MBA
 
「宇宙航空MBAバーベキュー」、いよいよ今週末に開催です!

ということで、晴れを期待して、「1、2、3、リマインダァーッ!」です。

 ■日時:平成20年9月6日(土)18:00~20:30(決定)
 ■場所:東京 飯田橋 Canal Cafe 屋外スペース
 ■料金:一人6,800円(食べ放題、飲み放題)
 ■内容:バーベキュー&宇宙航空MBA説明会&宇宙航空トーク
 ■備考:雨天の場合はバーベキューは×(食事は可能)

参加希望は以下のメールアドレスまで。明日までは増員可能だと思います。

 申込受付メールアドレス: aerospacemba@mail.goo.ne.jp

Let's go for drinking!

(写真は)