最近、「ガラパゴス現象」という言葉が流行っているそうだ。どうやら発信地は日本で、絶海の孤島ガラパゴス諸島に因んで名づけられた現象らしい。
ガラパゴス諸島はダーウィンの進化論で知られている中南米の島の一つだ。独自に進化を遂げたその生態系はあまりにも有名で、巨大なリクガメやイグアナ、コモドドラゴンなど、他の地域では見られない多種・多様な生き物が生息している。何千年にもわたって他の島などとの交流が全くなく、生態系が完全に隔離されたきたおかげで、生き物達は他に見られない独自の進化を遂げたのだ。
しかし、日本における「ガラパゴス現象」というのは生き物のことではない。携帯電話のことだ。NTTドコモ、au、Softbankなど、日本には通信サービスを提供する携帯電話各社と、日本電気、三菱電機、シャープなど、携帯電話機そのものを製造・販売するメーカー会社がある。これらの日本の会社が提供する通信サービスの規格は、実は日本でしか通用しない独自規格が中心で、世界標準とは全く異なった通信方式を採用している。すなわち、日本の携帯電話業界は、世界の大きな流れとは離れて独自の進化を遂げ、独自の規格を発展させてきたのだ。これが日本の携帯電話業界を指して言う「ガラパゴス現象」の真の意味だ。
日本の携帯電話業界がこのように独自の進化を遂げてしまったのは、やはり日本国内に十分な市場と成長機会があり、その中だけで競争していても十分に生き残ることが可能だったからだ。もし、日本国内に十分な市場がなく、世界に出て戦わなければ生きていけないような状況に追い込まれていたならば、決して日本でしか通用しないような規格の製品のみが開発されることはなかっただろう。おそらく、携帯電話の製造メーカーは、世界に受け入れられるために、世界標準に合わせた規格での携帯電話開発を進めたはずだ。
身近なところに十分な成長機会があることは、とてもラッキーなことだと思う。しかし、機会に恵まれすぎていると、反って進化のチャンスを逃すことにもつながるのだ。
(写真はガラパゴス諸島のイグアナ、だと思う。)