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チラシの裏

ビロードの悪魔から闇よ落ちるなかれ

2022年02月24日 | JDカー
■「ビロードの悪魔」(1951年)は精神をタイムトラベルさせる趣向なんだけれど、
SFのほうでは、似たような設定の話があるのだろうか。
★超有名な「夏への扉」は1956年発表ですし、有名なのは日本だけで
アメリカでは二流作作品だと認識されているとどこかで読んだ記憶が。
だいたいジュブナイルですし。
チャールズ・ハーネスの短編「時間の罠」は1948年ですが、出来としてはどうでしょうか。
SFというよりは、「アーサー王宮廷のヤンキー」あたりがアイデアの素になっていませんかね。
■とりあえず仕組みもなにも関係なく、タイムトラベルしちゃうわけね。
「アーサー王」はスパナで殴られたから、だったかな。
★精神が入れ替わってしまうというのは、
ハミルトンの「スター・キング」が1949年に単行本で出ていますが、
まさかカーがエドモンド・ハミルトンを読んでいたとは思えません。
単なる偶然でしょう。
■そっくりさんが入れ替わるというのは、「ゼンダ城の虜」以来の定石だけど、
「ビロード」は入れ替わ……
★そこはダメです。
でも、「エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件」のように古文書から事件の謎を追う、
という仕組みも使って絶えず緊張を緩めず、大チャンバラになだれ込む展開は見事です。
■カーにしてはチームプレイを描いているのが珍しい。
暴徒を前にして、本当の剣士は主人公と執事だけで、
あとは使用人たちが得意な得物を手に対峙するってのは燃えるねえ。
★もうだめか、というときに主人公が犬を呼ぶんです。
■ヒ素を飲まされて瀕死寸前なのに、飼い主の主人公が呼ぶ声に応えて雄叫びをあげるんだ。
犬好きには泣ける場面だね。
★暴徒が後ろのほうから三々五々離脱していく、という描写もなんだかリアルでした。
なんだかミステリとは関係ないところばかり誉めてます。
■ド・なんとかで思い出したんだが、
スプレイグ・ディ・キャンプの「闇よ落ちるなかれ」に似てないか。
★ああ、1941年に単行本が出てますね。カーがディ・キャンプを読んでいたのでしょうか?
■ディ・キャンプは分からないが、カーはウェルズが嫌いだったから、
タイムマシンを使いたくなかったのだろう。
★そうなんですか。
■チェスタトンの没後弟子のカーとしたら、師の衣鉢をついでウェルズに難癖をつけ続けていたんだ。
★だいたい没後弟子って何ですか。
■平田篤胤が、すでに亡くなっていた本居宣長が夢に出てきて弟子を認められたとして、
没後弟子を名乗っているんだ。
カーが英国に来た時点でチェスタトンは亡くなっていた。
★カーの夢にチェスタトンが出てきて、弟子を認めたとか?
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