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アポロの彼方、その他

2013年02月09日 | SF
80年代ごろ早川書房の海外SFノヴェルズはコンスタントに出ていて、
ほとんどが巨匠の最新作の紹介だった中に時折ヘンな作品が混じってましたよね。
※「マレヴィル」とか

そのヘンな作品の一つがバリー・N・マルツバーグ「アポロの彼方」。
「決戦!プローズ・ボウル小説速書き選手権」とか「裁くのは誰か?」をビル・プロンジーニと共作したり、




※「裁くのは誰か?」-マルツバーグの宇宙飛行士モノを
現代ミステリで料理すると、こうなるのだろうか。


「究極のSF」「1ダースの未来」の編者として(それぞれE・L・ファーマン、ビル・プロンジーニと共編)、
日本に紹介されてます。
単著ではこの「アポロの彼方」と「スクリーン」というポルノ作品しか邦訳されていません。

「アポロの彼方」は基本的に宇宙飛行士が一人称で語っていく(そうでない章もありますが)ヘンな話ですが、
意外に面白い、とういうか読ませる。
先を読ませる技術が上手いんでしょうね。
SF版「パルプフィクション」という感じかな。
180ページぐらいなので、実験小説などと身構えなくてもあっという間に読めますし、
最後のヒネリがじつはSFしてるところに才人らしさが読めます。

で、じつはこの「アポロの彼方」には、
訳者の黒丸尚と鏡明の対談「来るべきマルツバーグ論のために」が解説かわりに収録されています。
この2人がマルツバーグについて話しているんですが、
横道にそれてSF論やディック論になったりしてけっこう楽しいです。
この対談を楽しむために「アポロの彼方」を読むなんて本末転倒でもOKです。
結局マルツバーグの作品はこれ以降邦訳されなかったのは、
対談の中で黒丸尚が
「結局マルツバーグはこれ(「アポロの彼方」)が気に入っている」
と発言しているからなんでしょうかねえ。


※五人の積み荷(バリー・N・マルツバーグ)シャーロック・ホームズのSF大冒険収録
冷凍睡眠で恒星間航行をしている宇宙船の中で連続殺人事件発生。
その解決のためヴァーチャル人格として復活したホームズが推理する。
アーチャー、マーロウ、ポアロ、ウルフといった人格は事情があって使えないという設定が笑えました(理由は忘却)。



ところで、もう1冊のヘンな作品が、M・K・ジョーゼフの「虚無の孔」。




この人も邦訳はこれ1冊で、翻訳も黒丸尚。
故黒丸尚の選択センスに脱帽です。
ちなみに「虚無の孔」の解説を鏡明が書いていて、
師弟2人でヘンなSFを紹介しあっているみたいです。
「虚無の孔」はディックの「宇宙の眼」に似ている気もするんですが、
ディック以上にちゃんと終わらせる気のないところがヘンです。
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