2016年7月25日(月) 夜勤を前に

2016-07-25 12:44:51 | 日記
医学書院の「ケアをひらく」シリーズから、
こんな新刊が出たみたい。

経営用語に「ベンチマーキング」というのがあるけれど、
(優れたものをマネして取り入れる、ぐらいのニュアンス)
介護現場でも、意識するとしないとに関わらず、ベンチマーキングは行われているはず。

自分が個人的にベンチマークしたいと思っているのは、
60歳代のベテラン女性ヘルパー。
彼女たちはスピードもパワーもないけれど、知恵と技術がある。
自分がもし(まだ“もし”の段階)この仕事を長く続けようとするならば、
ベンチマークすべきは明らかに彼女たちだろうと思っている。

この本は介護現場における「ベンチマーキング」の本だと思う。




『介護するからだ』
(著)細馬宏通
医学書院


◆ケアの現場が、ありえないほど複雑な相互作用の場であることが分かる
「驚き」と「発見」の書。

当代随一の目利きとして知られる人間行動学者であり、
「かえる目(もく)」というバンドのボーカルである著者は、
ある時から認知症高齢者のグループホームに通い詰めることになります。
会話分析、ジェスチャー研究、コミュニケーション身体論……
これまで研究してきたことが一挙に、目前で、毎日のように繰り返されているからです。

この夢のような状況に感激した著者は、ベテランケアワーカーの「神対応」から、
研究者のピント外れゆるふわ介護まで、
あらゆる動作をビデオに収めて一コマ一コマ分析してみると……
そこで見つけたのは、頭で考える前に反応している“かしこい身体”だった!

真似をするとなぜ硬直した関係が動き出すのか、
「延長ジェスチャー」によって人は何を伝えたいのか、
「ズレと転用」のテクニックは介護現場でどう使われているのか、
平田オリザ氏のアンドロイド演劇はなぜ生々しいのか、
大友良英氏らと同行した「音遊びの会」のロンドン公演では
どんな新しい音楽が生まれたのか。

向き合い、触れ合うだけで、すでに反応し合ってしまっている身体――
これを無視することによって成り立つのがマニュアルなら、
本書は逆に、
そのような身体にこそ人間の英知と高貴さが息づいていると考えているかのようです。
どうぞ、感動的な「心を見ずに動きを見る」観察をお楽しみください。

◆著者:細馬宏通(ほそま・ひろみち)
1960年、兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士/動物学)。
現在、滋賀県立大学人間文化学部教授(コミュニケーション論)。
2006年から介護現場での観察研究を始め、
利用者やスタッフの会話にあらわれる身体動作を観察してきた。
著書に『浅草十二階――塔の眺めと“近代”のまなざし』青土社、
『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか――アニメーションの表現史』新潮社、
『今日の「あまちゃん」から』河出書房新社、
『うたのしくみ』ぴあ、とその関心は幅広く、
ジャンルを横断した“目利き”として知られる。