テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

河童のクゥと夏休み

2008-09-06 | アニメーション
(2007/監督・脚本:原恵一/声の出演:冨沢風斗=クゥ、横川貴大=上原康一、田中直樹=康一の父・保雄、西田尚美=康一の母・友佳里、松元環季=康一の妹・瞳、なぎら健壱=クゥの父親、ゴリ=キジムナー、植松夏希=同級生・菊池紗代子/138分)


 昨年、女房と息子で封切りを観に行って、母親の方が感激して帰ってきた映画です。レンタルが始まり、女房からのリクエストに娘が応えたものですが、当の本人は『ラストの方だけで良い』とか言って少ししか観ず(結局ソコだけかい!)、深夜に一人で観ていた娘が、翌朝、終盤の数十分間泣きっぱなしだったと赤い眼をして興奮して話していました。

*

 江戸時代、住処の沼が埋め立てられそうになった河童の親子が、お代官様に直訴するも、オヤジ河童は無礼打ちにあい、息子河童は折しも発生した地震により土の中に埋もれ化石になってしまう。

 それから数百年後の現代。
 学校帰りの小学生、上原康一が河原で珍しい形をした石を拾い、家に持ち帰って洗面所で洗っていると、石に半分埋まっていた河童らしき化石が動き出す。勿論、プロローグで地震に遭遇した河童の男の子だ。驚く康一だが、人間の言葉を話す河童に親しみを覚え、家で飼うことにする。数百年も経ってしまったので河童の子は自分の名前を忘れてしまい、康一はクゥと名付けることにした。初対面で水をかけられてしまった康一の妹には嫌われたが、父親や母親には家族のように扱われることになった。
 世間に知れると大騒ぎになるからと、外出する時には康一の背中のリュックに隠れるクゥ。心当たりの近辺を探してみるが、河童の仲間が居る気配はなく、河童伝説で有名な岩手県の遠野まで康一と行ってみるが、やはり誰もいなかった。しかし、遠野の自然は遠い昔を思い起こすほど素朴なところだった。

 康一の妹、瞳が幼稚園で友達に漏らした言葉から、上原家に河童が居るらしいとの噂がたち始め、マスコミもやって来る。遠野の帰り、うっかり写真週刊誌にクゥを撮られ、ついには康一の家の周りにパパラッチが常態化し出す。生活にも支障をきたし始め、康一の父保雄はテレビ番組にクゥを連れて家族で出ることにする。
 番組には河童評論家という一人の老人が出てきた。彼の家には代々伝わるモノがあり、それ故に彼は河童を信じているのである。ソレは江戸時代に祖先が見つけたという河童の腕だった。
 その腕を見たクゥは驚く。それこそ、数百年前に侍に殺された時に、同時に切り落とされた父親の腕だったからだ・・・。

*

 古い言い伝えの通り、河童は相撲が大好きで、小さな形(なり)の割には強い。外で遊べないクゥと康一は時々家の中で相撲をして遊び、その度に康一は投げ飛ばされる。康一はクゥに負けないやり方を教えてもらうが、後日、いじめられっ子の女の子を康一が助けるシーンで、クゥに習った相撲が効いてくる。

 康一の家の飼い犬とテレパシーで話したり、追いつめられたクゥが超能力を発揮したり、意外な展開に興味を持続させられるが、いかんせん2時間20分は長すぎる。遠野への旅のシークエンスが代表的だが、端折っても良さそうなシーンがあったような気がする。

 監督・脚本の原恵一は「クレヨンしんちゃん」シリーズでお馴染みの人。両親と兄と妹という家族構成は「しんちゃん」と同じだが、こちらは木暮正夫と言う児童文学作家の原作があるらしい。

 終盤のクゥと康一一家の別れが最大のハイライトで、現代人の生き方に対する警鐘が込められたラストシーンが余韻を残します。

 人物の表現はジブリほど可愛くないけど、遠野の自然描写などは一見の価値有り。

・お薦め度【★★★=ラストで★一つおまけ、親子で一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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2 コメント

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弊記事へのTB&コメント有難うございました。 (オカピー)
2009-05-02 02:39:29
おめえさまは、長さに飽きただか。
ずっとこの調子で書こうと思いましたが、結構難しいので、止めます。^^

要素が多すぎて長くなりましたが、日本人の琴線に触れる作品ではないかと思いました。
それも実は児童ものとしては案外定石を外しながら(最後に手を差し伸べるのが妖怪、等)、心に沁みるんですなあ。

「となりのトトロ」も実は大人こそ観るべき作品なわけですが、今の子供が大人になっても「トトロ」の作品の心が解らないのではないか、という不安があります。

同じように、都会の子供が本作のソフトな部分即ち遠野の渓流などに心が癒されたりするだろうか、とも心配。人間のDNAにはそういうものも含まれていると思いたいですけどね。

あっ、そうそう。
江戸時代生まれの河童に「江戸時代から来たの?」と言っても絶対意味が通りません。
その昔、江戸時代に死んだ娘を霊媒が呼び出したとして「私は江戸時代の初めに・・・」と言い出したので「嘘をつけ」と思いました。
江戸時代に「江戸時代」という言葉などありはしませんものね。
オカピーさん (十瑠)
2009-05-02 07:31:43
>本作の場合は、内容をもっと絞り込んで短く出来る可能性はあったと思います。コンビニの場面は長さそのものより、ちょっと呼吸が観客(即ち僕ですが)と合っていないかな、という印象あり。

コンビニのカ所については当方にも思い当たるものが。

『8点つけて頂いて、ありがとうごぜぇやす』

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