テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

日曜はダメよ

2015-04-25 | コメディ
(1960/ジュールス・ダッシン監督・脚本/メリナ・メルクーリ、ジュールス・ダッシン、ジョージ・ファウンダース、ティトス・ヴァンディス、デスポ・ディアマンティドゥ/92分)


 ギリシャの港町ピレウス。
 自分が気に入った客しか相手にしない娼婦イリアは美人で陽気でしかも男前の気風なのでいつもスケジュールが詰まっているが、日曜日はお休みと決めている。日曜日には常連客をアパートに招いて皆でパーティーをするのだ。【原題:NEVER ON SUNDAY】
 他の商売仲間たちが決まった不動産屋のアパートに住んでいるのに対して、イリアだけは自分が選んだ港が一望できるアパートで暮らしている。娼婦たちを手の内に囲ってうまい汁を吸おうとしている不動産屋のオーナー通称「顔なし」は、イリアも言う事を聞かせようとしているが鼻であしらわれている格好だ。
 そんな港に観光船で到着したアメリカ人ホーマーは自称「哲学者のなりそこない」。父の代からのギリシャ好きで、かつて栄華を誇ったギリシャ文化が何故このように廃れたかを調べたいとやって来た。港でイリアに出逢ったホーマーは、美しい彼女が娼婦をしていると聞き、このような美女がこのような仕事をしている訳を知ればギリシャ文化衰退の理由も判るかもしれないと思った。
 イリアがギリシャ悲劇を独自の誤った解釈をしているのに気付いたホーマーは、彼女に知性と教養を与えて今の稼業から足を洗わせたいと思うようになる。折からホーマーの思いを知った「顔なし」は彼に、娼婦を辞めさせる事を条件にイリアの教育資金を彼女には内緒で出すと持ちかける。イリアが商売を辞めれば「顔なし」の住人である娼婦たちも潤い、家賃の値上げも出来るからだ。
 初めは乗り気でなかったイリアだが、ピアノや立派な本を揃えてくれるホーマー先生の熱意が徐々に効いてついに廃業の看板を出すことになるのだが・・・という話。





 赤狩りを避けてヨーロッパに渡ったジュールス・ダッシンのギリシャ讃歌であり、メリナ・メルクーリ讃歌でありますな。
 但し、ダッシン自身が演じたホーマーのキャラクターがいまいち面白味が無くて、例えばワイルダー映画であれば最後にはイリアとの愛が成就する展開になるはずなのに、そうはならないのがカタルシスが弱い感じ。ギリシャ気質も、その後の映画を見ていると脳天気なだけという側面もあり、素直に讃歌の合唱をするのもどうかと思っちゃいますな。
 モノクロですがギリシャ港町の風景も当時40歳の色香漂うメリナさんも美しく、最後にイリアが顔なしをぎゃふんと言わせる展開もそれなりの面白さであります。もっと若い頃に観ていたら★がもう一つは増えてるでしょうがネ。

 1960年のアカデミー賞で、主演女優賞、監督賞、脚本賞などにノミネート。主題歌を作ったマノス・ハジダキスが歌曲賞を受賞したそうです。
 メリナさんはカンヌ映画祭の女優賞を受賞。英国アカデミー賞の女優賞(国外)にもノミネートされたそうです。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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