テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

NHK「プロフェッショナル」で高倉健を観る

2012-09-13 | ☆映画人
 様々な分野の一流といわれる達人の仕事の流儀を紹介するNHKの「プロフェッショナル」。先日の10日の夜の放送は取材対象が俳優、高倉健だった。偶然にTVをつけたら、珍しい彼のインタビュー映像が流れていたので最後まで観た。プライベートを殆ど世間にさらさない高倉健が、6年ぶりに出演した映画「あなたへ」の撮影風景を交えながら、インタビューに応じていた。

 1931年2月16日、福岡県中間市生まれの御年81歳。
 10日の夜の放送では、今回の映画で共演した大滝秀治とのシーン撮影後に、この6歳先輩の演技に感動して涙を流しているところから観た。
 物語は、高倉扮する富山の刑務所の指導技官が亡くなった妻の遺言を実行しようと彼女の故郷の長崎県平戸市までの旅に出る話で、大滝は主人公が妻の遺言である故郷の海への散骨を行うのに協力してくれる漁師の役だった。

 「久しぶりに、きれいな海ば見た」

 その大滝の演技に老漁師の人生が透けて見えたのか、高倉はカメラが止まった後、思わず感動の涙を流してしまったようだ。そして、大滝の演技の域にまだまだ届いていない自分をも感じたらしい。

<ああいう芝居を目の当たりで見ただけで、この作品に出てよかったと思ってます。それぐらい強烈だった。うへえって思いましたよ。そういうことができる、俳優って言うのが商売なんですよね。(大滝さんに)負けたくないねえ、負けたくない。勝負しようとは思わないけど、なんとか追っかけたいと思いますよ。まだ何年かは働けるもんね。追っかけたいと思う。縁があって俳優を選んだんだからね。やっぱり出会う人でしょうね。どういう人に人生で出会うか、そこで決まるんじゃないですかね。やっぱりいい人に出会うと、いろいろなものをもらいますよね>(NHK番組webページより「以下同じ」)

 元々は芸能プロダクションのマネージャーの仕事にありつこうと面接に行ったところ、偶然に同席していた撮影所のプロデューサーに俳優としてスカウトされたのが役者人生の始まりで、若い頃は<まともな演技のトレーニングも受けたこともないまま、数多くの作品に出演し続けることがコンプレックスになっていた>とのこと。

 理想の俳優はという問いに、ジャン・ギャバンと答えた。実人生は不幸だったけど、演技者のギャバンは好きだと言った。大声を張り上げたり、大仰な芝居もしないギャバンの演技。

<気持ちは映らないっていうけど、でもやっぱり映るんですよ。どこかでそういうのがあるんだよ>
<俳優にとって大切なのは、造形と人生経験と本人の生き方。生き方が出るんでしょうね。テクニックではないですよね>

 私生活も含めての理想の俳優は、イヴ・モンタンだと言った。奥さんと添い遂げて見送った後、若い秘書と再婚した、そんなモンタンの人生が羨ましいらしい。
 高校時代にESS部を自ら創設するほど英語が好きだった高倉は外国映画もよく観ているし、先日のモントリオール映画祭でも流暢な英語で挨拶をしていた。

<朝食はナッツのたっぷり入ったシリアルにヨーグルトをかけたものときめている。毎日同じ物を食べることで体のリズムを整える。そして、体型を維持するため、大好きな甘い物も我慢し、夕食まで食べ物はほとんど口にしない。ウオーキングも欠かさず行い、ウエストも体重も何十年も変わらないという。さらに、朝起きるとマウスピースをかみ、脳に刺激を与える>

 台本にはお気に入りの写真や言葉を書いた紙を貼っているという。勿論、役の人物の心を造形するためのものだろう。
<会津八一から山本周五郎、山下達郎、そして無名の一般人の生き方まで、高倉の守備範囲は広い。「心を震えさせてくれる」と感じる物はなんでも、持ち歩くという>

 今回の「プロフェッショナル」の高倉健特集は9月8日放送分と合わせて2回に分けて放送されたようで、僕が観たのは後編の半分辺りからだから全体の4分の1しか観ていない事になる。
 9月13日の深夜に再放送があるらしいから録画しようと思う。





*

録画していた「プロフェッショナル」を観たら、結構初めの方から観ていたことに気付く。もう寝ようかと思ってたところでTVを付けたものだから、半分眠っていたのかもしれない。その割には内容はかなり覚えていたが。前編の放送が観たかったなぁ。
 [09月14日 (Twitter on 十瑠にて)]

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