テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

巴里の屋根の下

2005-11-14 | コメディ
(1930/監督・脚本:ルネ・クレール/アルベール・プレジャン、ポーラ・イルリ、ガストン・モド、エドモン・T・グレヴィル/75分)


 昔はルネ・クレマンと名前をよく間違えたルネ・クレール監督。クレールの方が15歳年上で、19世紀末期に生まれたパリジャンとのことです。1923年から映画を撮っている彼の初のトーキー作品で、随所にサイレントの雰囲気が残っている。

 巴里の下町を舞台にした恋の鞘当てに、ゴロツキやチンピラが絡む人情喜劇で、昔、土曜日の午後にあってた大阪の吉本新喜劇を思い出した。船場太郎岡八郎が活躍していたコメディというのは、こういう映画を土台にしていたんでしょうなあ。

 古い映画ファンにとっては、トーキーとしての新趣向が色々見られたとして記憶に残る作品らしい。例えば、遠景から近景になるに連れて近景の音が大きくなってくる音の<遠近法>、ドアの開閉によって会話のとぎれてしまう<省略法>など。もともとクレールはトーキーへの移行が遅かった人らしく、ただ音が出ればいいという作り方はいやだったのでしょう。

 主人公の男性は街角で歌を歌ってその楽譜を売っているという、今から思えば信じられない職業の人です。その友人の男性も、又ヒロインも何をしている人かよく分からない。
 下町のアパルトマンの人々も点描されているが、建物などは全てセットとのこと。石畳や、煙突が立ち並んだ屋根の風景はセットには見えませんでしたな。

 ヒロインを追い回すゴロツキと楽譜売りが、ナイフを使ってケンカをする場面の迫力は意外なモノでした。

 クレールは、「自由を我等に(1931)」や「巴里祭(1932)」の後、イギリスに渡って「幽霊西へ行く(1935)」を作り、第二次世界大戦の時は戦火を避けてハリウッドに渡り、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった(1945)」を作ったりした。
 その他「リラの門(1957) 」「夜の騎士道(1955)」なども未見ですが作品名は知っています。
 チャップリンのファンだったらしく、59年には「ルネ・クレールの 喜劇の黄金時代」という作品を監修している。42年の「奥様は魔女」は、あの“サマンサ”の原型らしいです。

・お薦め度【★=今となっては、お薦めしません】 テアトル十瑠

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
巴里の屋根の下 (koukinobaaba)
2005-12-05 21:34:42
十瑠さん、こんにちは! 今すごいものを観たのですよ。 「巴里の屋根の下」をギャオで観ました。 上に広告バナー付き、トイレタイム付き、字幕・・・落ちて見えない!でしたが、未見だったので参考になりました。 音の使い方ならぬ、使わない方とパリの石畳が印象的でした。 最初と最後の煙突の煙は何なんでしょうね。
お久しぶりですなぁ、koukinobaabaさん (十瑠)
2005-12-05 22:39:16
話題のギャオですか。私のPCは博物館ものなので(←ちょっと大げさ)、とても追いつけません。

無料とのことで、すんごくポピュラーなものしか扱わないと思っていたのですが、こんな古い映画を流すなんて愕きです。



さて、映画は全てセットとの解説だったですが、煙がオカしな具合でしたか?
Unknown (Unknown)
2005-12-07 02:33:53
その煙が何を意味しているのかが私には分からないので、もう一度観てみます! 映画の最初と最後に暗示的に・・・かなり長いショットで映されます。 ではまた。
屋根の上の煙突 (十瑠)
2005-12-07 18:31:20
中古のVHSビデオを買っているんで、暇が出来たら見直してみます。物語としての暗示は思いつきませんねぇ。時代や世相の象徴だとしたら、パリの歴史を勉強しないと分からないかも・・・。

どなたか詳しい方いらっしゃいませんか?
Unknown (koukinobaaba)
2005-12-08 02:05:02
再度観てみましたが、煙突と煙の意味するところは私には掴めません。 煙突のあるビル(アパート)は張子というか表だけです。 その裏が見えるスケッチを見たことがありますから。 撮影はクレーンかなにかでビルの上から順に下がり又順に上がって行きます。 その前後に煙突の煙が何かを象徴するかのように映されます。 クレール監督は煙突から入り煙突から出る・・・なんていうのを読んだ記憶がありますが意味不明です。 では、又
TB&コメントありがとうございました (FROST)
2006-09-27 11:01:04
吉本新喜劇の原型ですか。そういわれれば同じような内容のものを見た覚えがありますね。懐かしいなぁ(大阪生まれです)。悲観的な内容のフランス古典が多い中で、軽快に観れる楽しい映画だったと思います。
花木京が・・ (十瑠)
2006-09-27 22:42:19
好きでした。ン? 年がバレルかな?



クレールさんの他の作品は未見ばかりなのです。

記事にあげてる分くらいは観ないとですね・・。

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