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共鳴管型スピーカーの作り方 その2

2017年05月26日 22時51分42秒 | オーディオ
今日は、「共鳴管型スピーカーの作り方」の『その2』をお届けします。

共鳴管型スピーカーの設計で、一番に大切なのは、
やはり「スピーカーユニット(以下、ユニット)の選定」です。


ポイントとしては、
「バスレフ型で使えるくらい、低音が出るユニット。そのなかでも、フルレンジタイプが好ましい。」
というところです。

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長岡派の共鳴管との違い

先のユニット選択は、長岡鉄男先生の意見と明らかに異なります。

長岡派の共鳴管型スピーカーの作例では、
「バックロードホーン向け」のユニットを使うことが多々あります。

理由としては、「管共鳴と低音が被らないようにするため、ハイ上がりなユニットを使う」という所があるかと思います。

私自身も、その思想に則って、
共鳴管型スピーカーを、バックロードホーン向けユニットで何度か作ったことがありますが、
ほぼ確実に、十分な低音量感は得られません。


稀に、部屋の定在波をうまく利用できた結果、
十分な低音量感が得られた事例もあるようですが、それは特殊な事例でしょう。
(部屋にマッチするスピーカーをこしらえる、という考え方はアリだと思いますが)

長岡先生も、この量感不足は十分承知だったようで、
「方舟」では、サブウーハーを併用する形となっていました。

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共鳴管の基本原理
長岡派とは違うユニット選定に至る理由は、共鳴管の動作原理から説明すると分かりやすいと思います。



これは、よくある共振や共鳴を説明する図ですね。

共鳴管では、このバネ係数にあたる部分kが「空気の弾性」、
錘にあたる部分Mが「空気の質量」に相当します。

その結果、とある共鳴周波数で気柱共鳴が起こる・・・
というのが共鳴の基本です。


これは確かに間違っていません。
しかし、もしこの通り単純なものであれば「バックロードホーン向け」ユニットの時に妙に低音が出ないということは考えにくいのです。

「バックロード向けユニットは、低音がダラ下がりのf特だから」という見解もありますが、
Q0が小さいため、むしろ重低音域は一般的なユニット(Qが大きい)より大きな音圧のはずです。

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基本原理は本当か?

問題を解く鍵は、このバネの固定にあると考えています。


共鳴を分かりやすくするため、ここは『固定』された点として描かれますが、
実際はそうでしょうか?



管の端にある「ユニット」は、完全な密閉でなく、
背圧に影響されて動作しているのが、現実なのではないか?と考えています。

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現実に即した動作イメージ
そこで、次のような図で考えます。

振動板は、質量m1の物体として考えます。

これは、ダンパーの弾性(k1)の影響を受けるほか、
駆動している対象でもある、空気の弾性(k2)、質量(m2)の影響も受けます。

そして、何より振動板の駆動力(F)は有限の値であり、
さらには、電磁制動(μ1)が常にかかっているという所がポイントだと考えます。

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振動板重量の影響

ここで、振動板重量(m1)が小さくなると、
「電磁制動(μ1)の影響は(相対的に)大きくなる」
のではないかと考えています。
※μは一般的に摩擦定数ですが、ここでは電磁制動の強さとして、m1に影響しないものとします。じゃあ、Fでかけy(ry

つまり、振動板が軽いユニットは、(その周波数特性によらず)
共鳴系の低音増幅を低減させる効果がある
、と考えられるのではないでしょうか。

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実際のところ・・・

正直よく分かっていません(笑)

ただ、経験則では「バスレフ型で使えるくらい、m0が大きい(=低音が出る)ユニット」が、共鳴管型スピーカーで十分な低音量感を得るのに好ましいのは確かなようです。

そしてもう一つ、ユニット選びで大切なポイントとして、
「周波数特性」があります。
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中低域の特性

小型スピーカー(小型バッフル)に、フラットな特性のユニットを組み合わせると、
中高域と、低域の放射特性の違いから、低域の音圧が小さくなるという現象があります。

最近は「バッフルステップ」などと呼ばれ、自作スピーカー界でも注目されていますので、
検索してみると、より詳しい説明が見つかると思います。


問題は、これを補正しようと、
意図的に低域の音圧を上げているユニットがある
ということです。

いや、別に「普通にバスレフ型で使う」なら問題ではない(むしろ歓迎すべき)なのですが、
これが共鳴管型となると、シビアな相性問題となってきます。



こちらは、一般的なフラットな周波数特性をもつユニットと、
共鳴管型スピーカーの組み合わせにおける、周波数特性のイメージです。

共鳴管型スピーカーは、無対策だと『緑点線』のような放射特性となります。
そこで、様々な対策を施して『緑実線』のような特性に持っていきます。

100~200Hz付近の低音域で被る部分が出てきますが、
「バッフルステップ」効果で、低域が薄くなることを考慮すれば丁度良い塩梅に調整することが可能です。


一方で、以下のように、中低域の音圧を上げているユニットだと話は別になってきます。



この場合、ユニットの放射音圧で、既にバッフルステップ対策が済んでいるため、
これ以上の低域(100~200Hz)音圧は不要です。

つまり、余分な低域がほとんど漏れず、100Hz以下の重低音域だけを増強できる、
『緑実線』のような放射特性をもつ音響管を作らないといけません。


正直、これはかなり大変です。
本来『緑点線』のような放射特性の音響管ですので、その中~低域をバッサリ切り落とすのは、一苦労です。(「無理」ではありませんが!)

<この低域をコントロールする方法は、また後日「管設計の詳細」として記載しようと思います。>


以上のように、中低域の音圧補強がされたユニットというのは、共鳴管型では若干使いにくいものです。

そして、「小口径ウーハー」の場合は、こうした中低域の音圧補強がなされていることが多くあるようです。
そんなことから、共鳴管型には「フルレンジ」が向いている、と考えています。


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まとめ

だいぶ長々と書いてしまいましたが、
「まあフツーのフルレンジを使うのがイイと思うよ。」という話です(笑)

とはいっても、ユニット選定というのは『一目惚れ』という要素もあるので、
頑張ってウーハー特性のユニットを共鳴管で使いこなすのも一興かもしれません。


さて、次回は共鳴管型スピーカー設計の定番「共鳴管の長さ」についてです。




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